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物語の途中で殺される悪役貴族に転生したけど、善行に走ったら裏切り者として処刑されそう  作者: maricaみかん
10章 一歩のその先

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353話 戦うべき価値

 ルースの戦術として王宮にやってくることになったのだが、まだ滞在している。まあ、予定通りに会ったという既成事実は必要なのだろうが。


 今のところは、王女姉妹と俺達で話をしている。ミーアは何を考えているのだろうな。ルースの戦術にも同意しているみたいだし。どうにも、以前までとの印象とは違う気がする。


 まあ、意図が分からないかと言われたら、分かるんだが。ただ、もう少し希望に満ちたことを言う子かと思っていた。いや、俺の影響で変わったのだろうか。あるいは、王家としての仕事で荒んでしまったのだろうか。


 いずれにせよ、今後はミーアの心にも寄り添いたいところだ。ミーアが悪い王だと言われる未来は、絶対に避けたいからな。


 そんなミーアは、ルースに質問を重ねている様子だ。


「ルースちゃん、あなたの敵はどうするのか、一応聞いておいてもいいかしら?」

「カールであれアイボリー家であれ、叩き潰すまででしてよ。遠慮なんてしないわ」

「分かったわ! そのつもりで、準備しておくわね!」


 元気いっぱいに返している。こういうところが、ミーアの変化を感じる部分だ。以前なら、もう少しアイボリー家との対話を優先したんじゃないだろうか。あるいは俺が勘違いしていただけで、最初からだったのだろうか。


 まあ、今から前の状態に戻すことは不可能だから、どこかで折り合いをつけるしかないのだが。人格の変化というのは、不可逆なのだから。


 結局のところ、王侯貴族というのは残酷さを持ち合わせてしまうものなのかもしれない。ラナもフェリシアも、目の前のルースやミーアも同じなのだから。


 実際、この世界は理不尽なことが多い。だから、力で押し通す場面が必要なのは理解できるところではある。ただ、俺の感覚としては過激なんだよな。とはいえ、相手だって同じような考えだとするのなら、甘さは邪魔になるのだろうが。難しい問題だよな。


「まったくもう。相手の動きによっても変わるところでしょう。姉さんは気が早いんですよ」

「確かに、何もしてこない可能性もあるからな。その時は、どうするんだ?」

「どうせ動くに決まっていてよ。ただ、違うのなら罪を着せるだけよ」


 えげつないことを言うな。あまり賛同したくはない案ではある。ただ、まったく理解のできない判断でもない。明らかに怪しい動きをしている相手に、どこまで手出しをするか。誰だって頭を悩ませる問題だ。


 理想を言うのなら、完璧に証拠を叩きつけて法の下に罰することなのだが。現実的ではないからな。ルースに対処するなと言って、アイボリー家やカールに負けた場合、責任を取ることすらできないのだから。本当に、難しい。


 俺だって、ある程度残酷なことはしているからな。だから、説得力がない部分もある。結局は、受け入れるしかないのかもな。


「聞かなかったことにしておくわね! あまり応援はできないけれど、頑張ってね!」

「遅かれ早かれ敵対するだろうというのは、同感ですけどね。推奨はしませんから」


 実際、リーナの言うあたりが俺の感覚に近い。ルースの取る手段が良いことだとは思わないが、必要だという気持ちも分からなくはない。


 まあ、俺のスタンスを提示するだけでも、意味はあるか。何も言わないよりはマシだと信じたいな。


「俺としても、あまり褒めたくはない戦術だな。いや、少なくともカールが邪魔だというのは理解できるが」

「相手が動かないのなら、レックスさんの協力は不要よ。それでいい?」


 ルースに被害が及ばないのなら、それで良い。多少苦戦するくらいのことなら、他者を殺すような理由にはならないからな。ルースの命が関わるのなら、手を下すことになるだろうが。


 だから、ルースの言うくらいのことが、俺とルースの必要な距離感なのだろうと思う。何でも俺が解決するのなら、ルースが自立できないのだし。


「まあ、そのあたりが妥協点か。敵だと分かっていて何もするなとは言えないからな」

「そう言って、レックスさんなら手伝ってしまいそうな気もしますけどね。身内には甘いですから」

「レックス君の良いところだわ! そんな甘さが、私たちを助けてくれたんだもの!」


 俺としては、あまり過激なことをしてほしくない。とはいえ、みんなの命がかかっているのなら、俺は誰かを殺すのだろうな。自分が嫌いになりそうだ。


 だが、みんなの命の方が大事に決まっている。俺の感情なんて、小さなことだ。仲間を助けられないのなら、力を持っている意味なんてないのだから。誰かのために使ってこそ、力には価値があるはずなんだから。


「お前たちが助かったのなら、それで良いのか……? あまり余計な被害は出したくないが」

「どの道、敵対すればどこかに被害は出てよ。誰に被害を出すかを選ぶのが、あたくしたちよ」

「ですから、私たちはレプラコーン王国を守らないといけないんですよ。他の国を犠牲にしてもね」


 本当に、理屈としては理解できてしまうんだよな。俺だって、友達と他人の命を天秤にかけるのなら、友達を選ぶ。それどころか、天秤にかけようと思うことすらないかもしれない。


 だが、犠牲が減ってほしいと思うのも事実ではある。早く平和になってくれれば、悩まずに済むのだがな。少なくとも、原作の事件が終わるまでは無理だろう。悲しいことだが、仕方のないことだ。


「帝国や聖国の様子を見ているのは、だからなのね! リーナちゃんも成長したわね!」

「親みたいなことを言うのは、やめてくださいよ……。ただ、レックスさんには今後も手を貸してもらうでしょうね」


 まあ、俺という戦力を知っていて、使わないなんて選択肢はないよな。いや、友人として頼ってくれているのだとは思うが。結局のところ、俺は戦いから逃れられないのだろうな。


 だが、逃げたら仲間が犠牲になっていた可能性が高い。そんな未来を知っていて、逃げられるものか。たとえ苦しくとも、突き進むまでだ。そうだよな。


「帝国や聖国が敵対したら、お前たちが危険だものな。流石に、見過ごせないか」

「ありがとう、レックス君! やっぱり、最高の友達だわ!」


 俺の手を握りながら、そう言ってくれる。ミーアの笑顔を見られるだけでも、頑張る価値はあるのだろう。大切な友達を笑顔にできるのなら、最高じゃないか。


 俺だって、何度も手を借りているんだ。そしてきっと、これからも。だから、返すのが当然のことだよな。


「まあ、同意しますよ。レックスさんには、何度も助けられていますからね」

「あたくしだって、手を借りているもの。いずれは、あたくしたちが借りを返さないとね」

「そうね! でも、まずは足場を固めてからよ! そうじゃなきゃ、また助けられるだけだわ!」

「業腹ですが、同感です。今の私たちでは、レックスさんの力になれませんから」


 戦力としてなら、俺の方が強い。それは事実だ。だが、俺の心を助けてくれたのはみんなだ。だから、お互い様だと思う。みんなが居なければ、どこかで折れていただろう。きっと、父を殺した頃には。


 だから、良いんだ。助けを求められるのなら、全力で答えるだけ。それで良いんだ。


「いや、十分に助けられていると思うけどな」

「今回だって、あたくしが助けられているもの。今もね。カールが動き出したみたいだもの。手を借りるわよ、レックスさん」


 そう言われてホワイト家の様子を探ると、確かになにかおかしい動きがあった。つまり、ルースの計画通りになったというわけだ。さて、俺の出番か。気合いを入れないとな。

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