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物語の途中で殺される悪役貴族に転生したけど、善行に走ったら裏切り者として処刑されそう  作者: maricaみかん
10章 一歩のその先

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344話 策略を重ねて

 ルースが配下のひとりを処刑して、ホワイト家の中には恐れているものも居るようだ。自分には関係ないと判断していそうな人も居るが。なんというか、図太いというか。あるいは、ルースに対する信頼があるのだろうか。後者だと良いのだが。


 とりあえずは、ひとり処刑しただけで終わりなようで、そこは安心している。だんだん過激になっていったり、処刑することが目標になっていったりしたら、ホワイト家は終わるだろうからな。俺だって、ルースについていけなくなる。


 ただ、ルースはまだまだ策を練るらしい。怖いような、強さを感じるような。まあ、先を読んで何手も打つのは、貴族としては基本だろう。俺も学ぶべき部分ではあるな。


 今回は、スミアではなくミュスカとハンナが集められている。ということは、大きくやり方が変わるのだろう。手段の幅が広くて、凄まじいことだ。俺とは全然違うな。さて、次はどんな策が来るやら。今回は過激でないと、ありがたいな。


 まあ、ルースが過激な手段を取る理由は分かる。誰も信用できないし、余裕もないのだろう。だからこそ、今は俺が支える必要があるんだろうな。きっと、俺まで離れていけば、ルースはどこまでも堕ちていくような気がする。細かく様子を見ていかないとな。


「さて、まだ次の手を打ちましてよ。内部の話が進んだら、外部ですわよね?」


 なるほどな。まあ、妥当なところではある。俺だって、似たような判断をするだろう。とはいえ、内部で何もしないなんてありえないが。まあ、ルースは分かりきっているだろうし、言うだけ無駄だろうな。というか、スミアがいないことが答えのようなものだ。


「ということは、アイボリー家に何かをするんだな。ミュスカやハンナを呼んでいるのは、関係あるのか?」

「もちろんでしてよ。あたくしは、無駄な行動が嫌いだもの。ね、レックスさん」

「想像はつくけど、本人から言ってほしいな? こっちが先走ったというのは、嫌でしょ?」

「同感でありますな。わたくしめ達は、対等な関係でありますゆえ。命令ならば、聞けませぬ」


 当然のことだな。俺達が勝手に行動したことにするような戦術を取るのならば、もはやルースを信頼などできない。とはいえ、ミュスカもハンナも笑いながら言っているからな。冗談みたいなものだろう。俺だって、ルースを信じているつもりだ。


 まあ、察して行動しろというのは、あまり健全な関係とは言えないよな。言うべきことは言う。大事なことだ。


「もちろんよ。あなた達には、お願いしたいことがあってよ。アイボリー家が反乱を企てているという噂を、流してほしいのよ」


 なるほどな。実際はどうであれ、そんな噂が流れたら、アイボリー家は困るだろう。とはいえ、噂の出どころが流れたら宣戦布告のようなものだが。まあ、もともと戦うことを想定している相手だ。ネガティブキャンペーンくらいは、常道だよな。


 悪事と言えば悪事なのだが、もっと汚い手段などいくらでもある。そして、俺の敵になるような人たちは平気で汚い手段を実行することが多かったからな。感覚が麻痺していると言われれば否定はできないが、まあ納得できる範囲だ。


「一応、ブラック家やヴァイオレット家、インディゴ家あたりにも手を回しておいた方が良いか?」

「そうできるのなら、ありがたいことでしてよ。レックスさんは、気が利くわね」

「なら、わたくしめはミーア殿下やリーナ殿下にも話を通しましょう」

「私は、仲良くなった人にそれとなく不安を植え付けておくね。それでいいでしょ?」


 すぐに行動が思いつくあたり、ふたりとも慣れているな。やはり、貴族としては普通の手段なのだろうな。まあ、当然のことだ。敵対派閥が弱るように動くだなんて、どこの世界でもやっている。相手の悪評をばらまくのも、政治家ならやるだろう。


 むしろ、俺が純朴すぎるくらいなのかもな。現代日本の価値観では悪事だというのは事実なのだし。この世界では、ただの日常なのかもしれない。


「やはり、皆さんは優秀ですわね。それでこそ、あたくしの友人よ。流石だわ」


 俺以外は、みんな頭の回転が早い。まあ、俺だって闇魔法の力で役に立ててはいるのだが。貢献度だけでいうのなら、相当点数が高いはずだ。だから、卑下する必要はないのだが。


 とはいえ、どうしても差を感じてしまう部分ではあるな。現代日本で普通に生きてきただけの人間が、急にファンタジー世界の貴族になったのだから、慣れの部分で大きな差があるのは必然なのだが。とはいえ、努力を欠かすのは問題だろう。やはり、もっと勉強していかないとな。


「まあ、みんな努力家だし、才能も血筋も持っているからな。使える手は多いだろうさ」

「そうだね。レックス君は、特にね? 私達の中心だもんね」

「そうでありますな。わたくしめ達を繋いでいるのは、レックス殿でありますから」


 ルースも含めて、優しい目で俺を見てくれている。こういうところからも、友情を感じるよな。やはり、出会えて良かったという考えは変わらないだろう。少しは、みんなの変化を悲しいと思う部分もあるのだが。


 まあ、今はルースの手伝いが先だ。変に迷っていたら、何も守れやしない。中途半端な行動をすれば、全部を失うだけだ。なら、俺は仲間を選ぶ。それだけのことで良いはずなんだ。そうだよな。


「といっても、反乱の計画には具体性が必要だろ? どんな話を撒く予定なんだ? 整合性だって、大事だろうし」

「あたくしからミスリルを買ったという事実を、利用させてもらってよ。反乱のために、軍備を整えているのだとね」

「だったら、その過程にホワイト家を崩壊させようとしている、とか付け足すのはどうかな?」

「ふむ。確か、ルース殿の当主就任には反対しておりましたな。意見が通らぬことに憤って、などいかがでしょうか」


 流れるように意見が出てくる。提案されてすぐに的確な案を付け足せるのだから、凄まじいことだ。俺から見ても、ルースの案に具体性を持たせているように見える。


 事実の中に嘘を紛れ込ませるのは、間違いなく有効な手段だからな。当たり前のように実行できるのは、貴族らしさを感じる部分だな。ミュスカもハンナも、当然ルースも計算高いことだ。だが、頼りになるということでもある。何度でも思うが、味方で良かった。


 さて、俺もなにか意見を出したいところだ。そうだな。話を広げるのなら、王家も巻き込むのは良いのかもしれない。ハンナがミーアやルースに連絡をするのだから、多分納得はされるだろうし、話も通るだろう。


「それなら、次代の王が小娘だと軽んじている、とかどうだ? ミーアは人気だし、ちょうど良いんじゃないか?」

「良い意見でしてよ。なら、今の方向性で行きましょうか。ついでに、ブラック家への反発心も付け加えましょう」


 俺が友達であるという事実を、最大限に利用する。そんなしたたかさも、ルースの魅力だよな。ある意味では、手段を選ばないとも言えるのだが。良くも悪くも、まっすぐに目標に突き進むタイプだ。


「それっぽい流れができたな。さぞ、アイボリー家は困りそうだ。謀略らしくなってきたぞ」

「レックス君、ちょっと楽しそうだね。闇魔法使いらしく、悪人になっちゃった?」


 からかうような口調で、そう言われる。ただ、俺が楽しそうというのは、ちょっと気になるな。やはり、俺も染まってきたのだろうか。いくらからかいだとしても、見当違いのことを言う理由はないのだから。


 まあ、スパイものとかでありそうな展開だとは思う。そういう興奮とか、友達と一緒に協力する楽しさとかを感じているのは、否定できないな。


「自分から計画に付け足したミュスカが言うのか? まあ、悪役らしいと言えばらしいが」

「悪だとしても、突き進むまででしてよ。あたくしの道をはばむのなら、捻り潰すだけだわ」


 堂々と語るルースからは、強い覚悟を感じた。その気持ちに寄り添えるように、しっかりと支えていかないとな。もしルースが道を外れそうなら、すぐに引き戻せるように。

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