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物語の途中で殺される悪役貴族に転生したけど、善行に走ったら裏切り者として処刑されそう  作者: maricaみかん
10章 一歩のその先

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331話 お互いの家族関係

 ルースの家に来て、何日か経っている。ジャンやミルラに通話をすると、こちらに居るようにとのことだ。先んじて話を通されていたりと、色々と裏で手を回されているのを感じる。


 まあ、ルースのやることだから、あまり警戒はしていないのだが。それに、ジャンやミルラも認めているんだ。怪しい部分は見当たらないのだろう。だから、俺は素直にルースの抱える問題を解決すればいい。話は単純だ。


 ということで、最近はルースと一緒にいることが多い。というか、他の時間はひとりで居るくらいだ。たまにスミアと会うが、本当に少ない時間だからな。


 今も、ルースと並んでホワイト家の中を歩いていた。すると、ポケットに両手を突っ込んだ少年のような人が近寄ってきた。いやみったらしい顔をして、こちらに近寄ってくる。そして、ルースに話しかけていた。


「よう、姉貴? 相変わらず、くだらないことをやってるみたいだね」


 察するに、弟なのだろうか。バカにしたような物言いをしているが、こいつはどの程度のことができているのだろうな。ルースより優れた結果を出せていない人間が言うのなら、お笑い草だが。


 まあ、あまり邪推をするのもな。相手の印象は良くないとはいえ、落ち着いて判断するべきだ。とりあえずは、情報を集めないと。


「カール。くだらないと思うのなら、あなたがその程度なんでしょう。あたくしの意図を理解できたことなんて、無かったでしょうに」

「姉貴って呼ぶあたり、弟か? なんか、態度の悪いやつだな」

「ブラック家の人間ごときに、好き勝手言われたくないね。所詮は、煙たがられるだけの人間なのに」


 俺が機嫌を損ねたら殺されるだけの実力差があることは、理解しているのだろうか。ブラック家の評判を知っているのなら、甘い考えだとしか思えない。


 ブラック家は、これまで多くの悪事をおこなってきた。そんな相手を挑発して、無事でいられると信じているのか? 俺がつい最近、ケンカを売ってきた相手を家族ごと殺したことは知らないのか?


 なんというか、大丈夫かと心配になる。いや、この程度の言葉くらいで殺すつもりはないとはいえ。カールとやらには、まるで危機感が見当たらない。正直、かなり評価は低い。ルースや俺に態度が悪いことを抜きにしても。


 率直に言うと、思慮が浅いとしか思えないんだよな。正直、尊敬できる要素が今は見当たらない。


「まあ、この程度の人間でしてよ。レックスさんが覚える価値はなくってよ」


 ルースは特に表情を変えずに言っている。少なくとも、表面的には苛立っている様子はない。対して、カールはバカにした態度を隠せていない。俺から見たら、もう格付けは済んでいるくらいの気持ちだ。


「ルースが言うのなら、そうするが。あまり、仲良くできなさそうだし」

「女の言いなりになるなんて、所詮その程度か。マヌケどうし、お似合いだ」


 まあ、真面目に相手をしても損をしそうな相手だ。挑発は、適当に無視しておけば良い。正直、まともに取り合う価値を感じない。ルースが嫌っているのだから、余計にだ。


「それで? わざわざルースに声をかけたんだから、用くらいあるだろう」

「ああ、そうだ。忘れてたよ。スミアとかいう劣等を重用してるんだって? あんな血の人間しか使えないなんて、流石だよ」

「その程度の視座だから、あなたは誰からも軽んじられているのよ」


 まあ、血で全てを判断するのなら、王家があらゆる意味で至高になる。現実的には、王族だってやらかす。見る目がないと自白しているようなものじゃないか?


 なんというか、称号だけ見る人の方が、まだ成果に基づいているだけマシに思える。


「王家に媚を売って当主になっただけのやつが、偉そうに!」

「そう思うのなら、自分も媚を売ればいいでしょうに。その程度もできないから、何も手に入れられないのよ」

「僕を甘く見たこと、後悔するなよ!」


 そんな事をのたまいながら、強く足音を立てて去っていく。対するルースはいつも通りの顔のままだ。まさに役者が違うという様だな。


 さて、ルースはどう思っているのだろうか。傷ついていないと良いのだが。


「……行ったか。そっちの家族関係は、だいぶ悪いみたいだな」

「そういえば、レックスさんは家族仲が良いんですって? 聞きましてよ」


 カミラやメアリ、ジャンや母との関係は良い。兄は俺を殺そうとして、父に処刑されたのだが。その父も、王家への反乱を企んだから俺が殺した。


 とはいえ、いま生きている相手とは仲良くできている。それは間違いない。ルースよりは、家族に恵まれているだろうな。


「ルースの前で言うのは気が重いが、まあ仲は良いな」

「気にすることはないわ。どうせ、ただの小物。好かれたところで、邪魔なだけよ」


 冷たい目で言っている。まあ、カールを好きになれと言われても、難しいだろうな。一応、ルースの身内だから、あまり悪しざまに言いたくはないが。


「まあ、俺もあまり好きになれそうにはなかったが」

「それで良くってよ。できもしないことを夢見るだけの、くだらない存在だもの」

「分かった。なら、あまり関わらないようにするよ」

「ええ。そんなことにレックスさんの時間を割くのは、無駄だもの」


 声が低いし、完全に拒絶しているように思える。まあ、当然だよな。さっきまでの態度を続けられて、誰が好きになるというのか。俺だって、間違いなく嫌いになる。


「本当に嫌いなんだな。まあ、あの態度なら当然だろうが」

「才能もなければ努力もしない。それなのに、男だと言うだけで当主になれると信じている。見るに耐えないわ」


 なるほどな。ルースなんて、壊れる一歩手前くらいまで努力していた。それはそれで問題だったのだが。ただ、最近のルースは適度な努力を学んだように思える。今だって、特に身体的な負担はなさそうだし。


 まあ、ルースから当主の座を奪おうとするのなら、俺の敵だ。なら、いずれは戦うこともあるのかもな。ルースに家族を殺させるのも嫌だし、俺がやることも検討した方が良いな。


「努力家のルースから見れば、評価に値しないのは当然か」

「そうね。なにか企んでいるようだけど、どうせ何もできないのよ」

「一応、妙なことをしないか警戒しておかなくて良いのか?」

「計画通りだもの。あの手の存在が何を考えるかなんて、そう難しいことではないわ」


 ルースにも、何かしらの意図があるのだろう。いま説明されないあたり、俺には隠しているのだろうな。まあ、当然だ。多くの人が計画を知るほど、漏れるリスクは高くなる。そう考えると、必要以上に触れるべきではない。


 まあ、俺の力が必要になったのなら、自然と知ることになるだろう。その時を待っていればいいな。


「なら良いが。手伝えることがあるのなら、言ってくれよ」

「もちろん。レックスさんがいれば、便利なことこの上ないわ」


 まあ、闇魔法があれば戦術の幅は広がる。だから、それでルースの力になるのなら助かるが。とはいえ、ものすごい言い方をされているな。


「俺はお前の道具ではないんだがな……。いや、冗談だとは分かっているが」

「ふふっ、そうね。あなたはあたくしの友人で強敵。それはきっと、ずっと変わらないわ」


 こちらをまっすぐに見ながら、そう告げられる。俺も同じ気持ちだ。これからも、仲良くしつつも競い合っていく。そんな関係を続けたいものだ。


 だからこそ、カールが邪魔になるのなら、容赦はしない。そんな覚悟を決めた。

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