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物語の途中で殺される悪役貴族に転生したけど、善行に走ったら裏切り者として処刑されそう  作者: maricaみかん
10章 一歩のその先

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328話 敵と味方

 ルースの家にやってきて、まずは友人として紹介されることになった。ただ、あまり歓迎されていなかったのは感じる。まあ、ブラック家とホワイト家は敵と言っても良かった。そういう意味では、当たり前のことであるのだが。


 むしろ、ルースが急ぎすぎているくらいだろう。まあ、理由は分かる。ルースは敵と味方を切り分けるためと言っていた。だが、それ以外にもあるのだろうな。思いつくのは、意思表示か。ルースはどういう道を進むのか、ハッキリさせること。


 他には、俺の助力というのも期待しているのだろうな。まあ、妥当だ。ひとりで抱え込まれるより、よほど良い。誰かの手を借りるというのは、とても大事なことだからな。俺だって、ひとりでは何もできなかったのだから。


 ということで、紹介が終わって、俺はルースの私室で過ごしている。ルースと話しながら。これなら、アリアやウェスを連れてきた方が良かったかもな。いや、今回はフェリシアの時のように味方ではなかったし、ラナの時のように家の意思を統一できても居ない。余計な火種は持ち込むべきではないかもしれない。


 そんなこんなで色々と考えつつも、ルースの話も聞いていく。


「レックスさん、ちょうどいい機会だから、聞きたいことがありましてよ。いいかしら?」


 軽い口調で聞かれているし、そこまで重要な話ではないのかもしれない。いや、違うか。わざわざ対面で聞くということは、何かあるよな。ちょっと気になる程度のことなら、通話で聞けば良かったのだから。


 なら、どんな話が出てくるだろうな。姿勢を正して、ルースの質問を受ける態勢に入る。


「ああ、何でも聞いてくれ。機密になると、答えられないが」

「そのような話ではなくってよ。いえ、引っかかる可能性もあるかしら?」


 ルースが相手なら、意図的にグレーラインを突くようなことはされないだろう。そこは信頼している。だから、こちらの反応そのものが情報みたいな引っかかり方はないだろう。


 つまり、普通に答えられないと言って問題ないだろうな。答えられないという回答から情報を引っこ抜くみたいな悪辣なやり方は、されないのだから。なら、何を聞かれても良いか。


「まあ、とりあえず聞くだけは聞くよ、答えられないのなら、その時に言う。いくらなんでも、極端に秘密を狙ってきたりしないだろう?」

「では、好きにさせてもらうわ。レックスさんは、どのような形で家の中にいる敵に対処しているの?」


 ああ、それは気になるよな。俺の存在が歓迎されていなかったこともあるし、不和の種はどこにでもあるだろう。どうやって対応するかで、今後の流れは大きく変わるはずだ。


 とはいえ、俺はミルラやジャンに任せているくらいで、良い回答はできそうにない。まあ、それを答えるだけでも意味はあるか。


「基本的には、明確に敵対してきたら潰すくらいだな。あまり何もしていないよ」

「なら、どうやって家を運営しているのかしら? レックスさんにだって、敵は多かったでしょう?」

「ハッキリ言って、俺はお飾りだからな。それで回る体制が築けたことが、何よりの勝利だ」

「ふむ、レックスさんらしくはあるのね。甘い気もするけれど。さて、あたくしはどうしようかしら」


 まあ、信頼できる相手がいるからこそではある。後は、俺が強いという事実も重要なのだろうな。そもそも、裏切るメリットが少なすぎる。だから、誘惑される機会そのものが珍しいのだろうし。


「その辺に関しては、ミーアの方が優秀だと思う。俺は強いだけで、他は並だよ」

「なるほどね……。あたくしは、あたくしなりに支配を深めたいところね」

「どうするにしろ、信頼できる相手は必要だろう。ルースには、そんな存在は居るのか?」

「……」


 黙り込んでしまった。つまり、居ないということ。そうなると、大変だよな。いくらなんでも、ひとりで家の運営なんてできない。仕事を任せられる相手は、どこにだって必要なはずだ。


「なら、まずは見つけないとな。俺だって、ジャンやミルラ、姉さんやメアリ、ジュリア達にも助けられているからな」

「そうね。確かに、検討する価値はあると思いますわ。どうしたものかしらね……」


 ルースは目を伏せて考え込んでいる様子だ。家の中に居る人間を、色々と思い描いているのだろう。俺はミルラやジャンが居たから、あまり細かいことを考えなくて済んだ。その辺は、かなり楽をしているところだ。ルースは違うのだろうな。


 そうなると、あまり有効な助言はできそうにない。ただ、意見を口にするだけでも意味はある。何か発想の取っ掛かりになれば、それで良いのだから。


「まあ、本気で誰も信頼できないのなら、外部から引っ張ってくるしか無いだろうな。それはそれで、別の問題があるんだろうが」

「そうね。まずは内側から。あたくしだって、それくらいは分かりましてよ」


 妥当なところだな。まずは足場を固めなければ、何も進まない。それに、ルースに信頼できる相手ができたなら、いいことでもある。まあ、裏切りには警戒する必要があるが。


 俺なら、とりあえず最低限の怪しい人間は選択肢から外すだろうな。例えば、ルースに不満を向けていた相手とか。


「なら、俺を紹介した段階で、ある程度は切り分けが進んでいるんだろ? そこから始めてみたらどうだ?」

「良くってよ。レックスさん、自分から提案したんだから、付き合っていただけますわよね?」


 そんな事を言いながら、ルースは微笑む。楽しそうに言っているあたり、俺が言い出すことを、というか俺が手伝う機会を狙っていたのだろう。まあ、元々手伝うつもりではあったのだが。


 まあいい。とりあえず、何を要求されるかを楽しみにしておくか。無茶なことは言われないだろうという信頼はあるのだから。


「だから、これまで何も案を出さなかったのか? 悪いやつだ、まったく」

「ふふっ、あたくしは父殺しなんですわよ? 悪いに決まっていてよ。なんて、レックスさんの前で言うことではなかったわね。訂正するわ」


 俺だって、父を殺しているからな。つまり、俺も悪人だという意味になる。だから、訂正したのだろう。実際、俺には悪いところが多くあった。それは否定できないが。


 とはいえ、ルースの気遣いは受け取っておきたいところだな。跳ねっ返りのように見えても、やはり優しい人だ。


「まあ、客観的には正しいんだが……。割り切れているのなら、安心できるよ」

「さて、レックスさん。あたくしは、面談の準備に移りますわ。レックスさんは、様子を見ていて」


 俺から見てもルースから見ても信用できそうな相手から入る。まあ悪くなさそうだ。俺だけでもルースだけでも、一人の目線だと精度に不安がある。まあ、本気で演技に長けた相手なら見逃してしまうかもしれないが。


 とはいえ、ルースのためにもしっかりと見ていかないとな。万が一にも、ルースが裏切られないように。


「分かった。俺の目が当てになるのなら、存分に頼ってくれ」

「ええ。嫌と言うほど使い倒してあげてよ。その分、あたくしもいずれ返すわ。それが友人というものでしょう?」


 そう言って、ルースは笑う。俺としても、同感だ。お互いに助け合ってこそ、友人だよな。だからこそ、ルースの問題をどうにか解決したいところだ。その先で、堂々とした友人関係になるために。


 まずは、面談をしっかり終わらせないとな。気合いを入れて、拳を握った。

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