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物語の途中で殺される悪役貴族に転生したけど、善行に走ったら裏切り者として処刑されそう  作者: maricaみかん
9章 価値ある戦い

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317話 事前の備え

 ミーアと策を練って、偽情報を敵に渡すことになった。それを知っている相手がどんな動きをしているかで、本当の敵を探るという形になる。


 いくつかの情報に分類して何人かに流し、その中のどれを知っているかを判断する。知っているものが渡した情報に一致する人間は、とにかく怪しいよな。そんな流れで、疑わしい相手を絞る。


 俺なら、そこまでうまく実行できないとは思う。ただ、ミーアは自信がある様子だ。それに、ジャンとミルラまで手伝っている。なら、ある程度の成果は期待できるだろう。完全に特定とまではいかなくても、数人に絞ることくらいはできるんじゃないだろうか。


 そんな感じで、次に向けて動いている。そして、ミーアから連絡が来たようだ。


「レックス君、次の敵が分かったわ! それなりに大きな傭兵団みたい!」


 おそらくは、金で傭兵を雇っているのだろう。その中で、俺達の対策も伝えるのが普通だよな。じゃなきゃ、成果は出せないだろうし。


 いくらなんでも、ただ無策で傭兵に攻撃させるはずもない。俺の強さは、というかブラック家の強さは、もう伝わっているはずなのだから。


 これまでは、あくまで噂だと軽んじていたとしてもおかしくはなかった。ただ、実際に傭兵が何度も全滅しているのに対策を練らないのなら、もはや脅威ではないだろう。


「それで、俺達は敵の動きを確認すれば良いんだよな。それで、怪しい相手に当たりをつけると」

「ええ。ジャン君とミルラさんに情報は伝えてあるから、そっちに任せてね!」


 早速、アクセサリーの通話機能を有効活用しているみたいだな。俺を経由しなくても話せるというのは、かなり便利だろう。


 ある程度は、アクセサリーの魔法が使われた形跡があれば俺にも伝わる。戦闘行動なんかをすれば、すぐに分かるだろうな。とはいえ、プライバシーの全部を知ろうとも思わない。相手が何に使っているのかは、正確には知るつもりはない。


 誰かが通話しているのも分かるのだが、会話を聞こうとは思わないからな。必要なら、俺も話に混ぜてくれるだろうし。


「ああ、分かった。それで、生かしておいた方が良い敵はいるのか?」

「その判断も、レックス君達に任せるわ! 実際に戦うのは、あなた達なんだもの!」


 その言葉は、俺も気をつけるべきことだよな。戦場で余計なことを気にしすぎると、その場での危険が増えるだけだ。あまり、意味のない口出しはするべきではないんだ。


 やはり、ミーアはよく配慮してくれている。こっちとしても、とても動きやすい。ありがたいことだ。


「了解だ。なら、ジャン達と相談しておくよ」

「自分の安全を優先してちょうだいね! もちろん、情報が多い方が嬉しいけれど」

「分かっている。俺はともかく、みんなに怪我させる訳にはいかないからな」

「レックス君だって、危ないことはダメよ! 強いことは無敵を意味しないんだからね!」


 そうだよな。俺だって心配されている。つい自分を雑に扱ってしまいがちだが、そういう態度を出していたら良くない。


 みんなが自分を大事にしていなければ、俺は悲しむんだから。同じ気持ちを、みんなに味わわせるべきではない。


「ああ、分かっているさ。お前達を悲しませるようなことはしない」

「ええ、それでいいのよ。どうしても情報が足りないのなら、こっちでも手を打つもの!」


 ありがたいことだ。何度も何度も敵が攻めてくるのは、心穏やかではないからな。同じ手段を繰り返さずにすむのなら、その方が良い。


 とはいえ、俺は戦うくらいしかできないのだが。みんなに頼りきりで、少し情けなくもある。まあ、素人が余計な口出しをするよりはマシだと思うか。張り切った結果として邪魔をするのが、一番悪いからな。


「頼りにさせてもらうよ。まずは、今回の戦いに勝たないとな」

「そうね。もう一つ伝えておくわ。敵は傭兵団の中に自軍の兵を紛れ込ませている可能性があるわ」


 ふむ。まあそうなるよな。大掛かりに兵を動かせば、誰でも気づく。なら、小さな動きにするしかない。傭兵に紛れ込ませて、何らかの任務を課す。そのあたりが限度だろう。ただの魔法使いに俺を暗殺させるなんて手段をとってもな。何もかも足りない。


 だから、戦力の担保として傭兵を使うのだろう。だが、それでも戦力としては足りないのだが。本気で高位の魔法使いの理不尽さは、接していないと分からないのだろうな。


「ああ、ちゃんと軍団規模で動けば、兆候をつかまれるからか」

「そういうことよ! できれば、よく観察してみてちょうだい。何か手がかりになるかもしれないわ」


 まあ、指揮官をやってそうな相手くらいしか観察できないだろうが。そこを意識するだけでも、だいぶ違うだろう。


 とりあえずは、注視してみる程度だな。無理をして不利な戦局になるのは、避けたいところだ。


「無理のない範囲で、捕らえられるように狙ってみるよ」

「ええ、頑張ってね! それじゃあ、またね! 終わったら、また話をしましょうね!」


 ということで、その情報をもとにジャンやミルラに相談に向かった。


「ミルラ、ジャン、ミーアから、情報は伝わっているのか?」

「もちろんでございます。我々は、連携を取って敵の動きを調査しております」

「とはいえ、あまりこっちでやることはないんですよね。兄さんの仕掛けた罠があれば、十分です」


 というか、事前になって大慌てしているようなら危険だよな。普通は負ける戦場だと思う。そういう意味でも、ジャンの態度はありがたいところだ。


 俺としては、戦術の話はあまり分からない。それでも、確実なことはある。それは、勝てる場を整えてから戦うのが理想だということだ。どうにかこうにか奇策で勝つより、よほど好ましい。


「まあ、事前準備の段階で勝ちを決めているのなら、そっちの方が良いだろう」

「ええ、そうですね。手間がないですし、妙に被害が増えることも避けられます」


 そうなんだよな。予想していないような被害が出たら、いろいろと困る。想定している範囲の被害なら、事前に準備しておけるのだから。


 やはり、ジャンの姿勢は頼りにできる。素直に効率を考えて行動する人の存在は、本当に助かるな。


「俺の力があれば、ある程度は復興に利用できるだろうが。人的損害は、どうしようもないからな」

「そうでございますね。単に数を用意するだけならば、たやすいのですが」


 それはつまり、質を問わなければ人を集められるということなのだろう。やりすぎれば治安の悪化の心配もあるが、まあブラック家だからな。極端に悪くなるのは、あまり想像できない。もとが酷かったからな。


「数を用意できるだけでも、なかなかに凄まじいな。流石はミルラだ」

「レックス様にお仕えする者として、当然のことでございます」

「兄さんは、良い人を捕まえましたよ。僕も、かなり頼りにしていますからね」


 本当にな。ミルラが居てくれなければ、俺は今より苦境に陥っていたのは間違いない。そう考えると、出会えたのは幸運だった。


 ミルラほどの人材を軽んじる他の貴族には、いっそ感謝したいくらいだよな。それまでミルラが苦しんだと思えば、あまり言葉にはできないが。


「もとはと言えば、ラナがアカデミーを紹介してくれなければ、考えもしなかったよ」

「では、その幸運に感謝いたします。これから先も、レックス様のために尽くす所存です」


 そう言って、ミルラは深く頭を下げた。その想いに報いるためにも、まずはしっかりと勝たないとな。

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