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物語の途中で殺される悪役貴族に転生したけど、善行に走ったら裏切り者として処刑されそう  作者: maricaみかん
9章 価値ある戦い

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305話 会いたい想い

 とりあえず、今のところは次の襲撃の情報を掴んだりはしていない。だからといって、何もしなくて良いということはないが。とはいえ、俺がジャンやミルラの計画に口出しできることは少ない。もう、方針は提示したからな。


 俺にできることといえば、主に闇魔法を使うことだ。罠を仕掛け終わった以上、あまりやることは多くないんだよな。自然と、訓練や家族との会話の時間が増えている。


 メンタルケアも、大事なことだからな。俺は素人だし、あまり大きな事はできないだろう。それでも、母の時のように、話を聞くだけでも違うだろうからな。


 そんな日常を過ごしながら、ちょっと休憩している時間に、通話が飛んできた。


「レックス君、今は大丈夫かしら?」


 ミーアからということは、なにか情報を掴めたのだろうか。黒幕が分かってしまえば、対処は比較的楽なのだろうが。こちらでの調査にも、限界がある。


 なにせ、傭兵たちは黒幕が誰かなど知らないだろうからな。俺の闇魔法を使っての調査では、答えにたどり着けないだろう。その辺は、ジャンやミルラ、ミーアに任せきりになってしまう。


 闇魔法は相当便利ではあるが、万能ではない。それを思い知らされるな。あるいは、俺がポテンシャルを引き出しきれていない可能性もあるが。


 とにかく、ミーアからの話は気になるところだな。


「ああ、問題ないぞ。それでミーア、何の用だ?」

「この前、レックス君が傭兵に襲われたでしょ? だから、みんな心配しているのよ」


 ああ、そういう話か。まあ、大事なことではあるな。俺の現状を伝えるのは、必要だろう。俺だって、逆の立場なら少しでも話したいと思うだろうし。まあ、今までは無理だったのだが。


 みんな、元気にしているだろうか。嫌な目にあっていないだろうか。どうしても、気になってしまうな。


「なら、俺は元気だと伝えてくれるか?」

「せっかくだから、みんなと会っていかないかしら? 私が、会場を準備するわよ」


 その間にブラック家が襲われでもしたら、すぐに戻らなくてはならない。ただ、ミーアが提案してきたあたり、少なくとも今の段階では大きな動きは確認できていないのだろう。


 なら、受けておいた方が良いだろうな。俺の知り合いは、力でも家柄でも大きな影響を持っている存在が多い。そのつながりを利用するという意味でも。


 できることならば、友人関係に利害を持ち込みたくない。だが、お互いにとって必要なことだろうからな。自分の家だけで物事を進めることなど、できはしないのだから。


「助かる。それなら、会いに行ってもいいな。楽しい時間になりそうだ」

「ハンナちゃんとルースちゃん、ミュスカちゃんを呼んでおくわね」


 その三人は、ミーアとも親しいものな。王女姉妹と違って、父の件から先には会っていないし。良い機会になりそうだ。


 できることならば、セルフィにも会っておきたいものだが。まあ、先輩という都合上、どうしても距離はあるか。なら、クラスメイトである3人を優先するのは妥当なところだな。


「ああ、分かった。顔を見るのも、久しぶりだよな。みんな、元気にしているか?」

「それは、実際に会ってのお楽しみでどうかしら。大丈夫。危険な目には合っていないわ」


 なら、深刻な事態にはなっていないのだろう。とりあえず、安心できるな。みんなが困っているのなら、できるだけ手助けしたい。とはいえ、今は状況が悪いからな。みんなを手伝うだけの余裕は、捻出できないと思う。


「なら、会った時に確認させてもらうよ。何を話そうか……」

「もう話す内容を考えているの? きっと、顔を見たらすぐに出てくるわ!」

「それもそうなんだが、せっかくだから楽しい話にしたいじゃないか」

「レックス君は、本当に良い子よね。友達として、嬉しいわ」


 あんまり自分では良い人間とは思わないな。まあ、親しい人を大事にできているとは信じたいが。俺としては、友達や仲間に評価されていれば、それで十分と感じる部分もある。貴族としては、領民や周囲の貴族にも評価されないといけないのだろうが。


 こうして考えると、義務が多いな。仕方のないことではあるのだが。少し、疲れてしまいそうだ。


「ミーアほどではないと思うが。そういえば、リーナは元気か?」

「ふふっ、リーナちゃんも、レックス君と話したがっていたわよ。今は、空いてるんじゃないかしら」


 相手も会いたいと思ってくれているのなら、とても嬉しいことだ。やはり、一方通行な関係だと寂しいからな。俺は友達に大事にされている方だとは思うが。


 せっかくだから、俺も話したいところだ。空いていると言ったのは、話しかけても大丈夫という意味だろうしな。


「なら、話しかけてみるか。……リーナ、今は会話できそうか?」

「っ!? ……ああ、レックスさんですか。これが、話に聞いた遠距離での会話ですね。驚かせないでくださいよ。まったくもう」


 ツンケンした態度も、いつも通りだ。こんな反応ではあるのだが、友達想いなのがリーナだよな。これまで、何度も助けられてきた。父の件では、心配もしてくれた。


 総じて、良い友達だと言えるだろう。王女に何をと思うかもしれないが。


「嬉しい気持ちは、隠しちゃダメよ! レックス君と会えなくて、不満そうだったんだから」

「姉さんってば、余計なことを言わないでください。それで、レックスさん。どんな要件ですか?」

「いや、声を聞いてみたくてな。最近、会えていなかっただろう」

「そんなことで、王女を呼び出したんですか。まったく、贅沢なことですね。せっかくですから、私が話題を用意してあげましょう。帝国については、知っていますか?」


 帝国は、原作でも出ていたな。皇帝を決める大会があって、それで優勝を目指すというイベントがあったはずだ。力こそ全てみたいな国で、良くも悪くも種族よりも力が優先される国だ。


 ある意味では、獣人やエルフにとってはこの国より生きやすいのかもしれない。ただ、鍛冶屋や料理人、医者みたいな存在は軽んじられているんだよな。そこは、明確に欠点だ。


 それにしても、なぜ帝国の話題を出してきたのだろうな。気になるところだ。まあ、まずは話を合わせるところからだな。


「ああ、ちょうど話があったんだ。俺を襲ってきた傭兵が、帝国の皇帝になりたいと言っていてな」

「レックスさんに負けるようなら、無理でしょうね。実力主義なのが、帝国なんですから」

「そうね……。レックス君なら、皇帝だって倒せるかもしれないわね!」


 倒したら、皇帝になってしまうんだよな。ブラック家でさえ、ちゃんとまとめられているか不安なのに。どうして皇帝になりたいと思うのだろうか。


 まあ、皇帝の方針次第では、俺が皇帝の座を奪った方が良い状況もあり得るだろうが。例えば、この国に攻めてきそうとか。原作だと、それに近いイベントもあったんだよな。嫌な話だ。


「少なくとも、今はそれどころじゃないな。それに、面倒事を王国に持ち込んだら、ふたりが困るだろうに」

「レックスさんに困らせられるのは、いつものことですよ。別に、今さら気にしません」

「リーナちゃんったら、素直じゃないんだから。でも、私も同じ気持ちよ。それだけは、覚えておいてね」


 ふたりとも、俺に強い親愛を抱いてくれていると思う。その気持ちを返せるように、俺も頑張っていかないとな。


「レックスさんは、きっと立ち止まらないんでしょうね。でもいいです。友達として、支えますから」


 リーナの声は、どこか含み笑いをしているように聞こえた。

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