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物語の途中で殺される悪役貴族に転生したけど、善行に走ったら裏切り者として処刑されそう  作者: maricaみかん
9章 価値ある戦い

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298話 リーナ・ノイエ・レプラコーンの策略

 私は妹王女として、姉さんを支える機会が多いです。私を見下す人は、多くが姉さんによって排除されました。その感謝は、本物だと思います。実際、私は姉さんが好きです。レックスさんを奪い合っている今ですら、切り捨てられないくらいには。


 ただ、だからといって、レックスさんを譲る気だってないですよ。できれば、私は一番になりたいんです。とはいえ、その計画は順調ではありません。


 あまつさえ、他の女が何かをしているという噂も耳に入ってきますから。例えば、フェリシアさんとかラナさんとか。私が同じ立場なら、似たようなことをするでしょう。それは分かるんですけどね。ただ、歯噛みしてしまう部分はあります。


 その上、他にも何らかの計画が動いているというのは、分かります。レックスさんの首に、どこかの貴族が懸賞金をかけた。それはおそらく、姉さんの策なんです。


 レックスさんは、きっと乗り越えられる。そう信じているのでしょうね。実際、私だってレックスさんが傷つくとは思っていません。心はともかく、肉体は。


 ですが、それだけで終わらないというのも分かるんですよ。


「姉さん、きっと何かを企んでいますよね……」


 それも、レックスさんに影響を与える何かを。おそらくは、距離を近づけるための方策を。本当に、したたかなことです。姉さんは、レックスさんが心配で仕方がないって顔をするんでしょうね。自分が狙った計画でありながら。


 いま思えば、レックスさんの父を殺させたのも、姉さんの計画かもしれません。あれから、レックスさんを見直す声も増えましたから。おそらくは、本心ではないにも関わらず。


 つまり、姉さんの狙いは分かる気がします。おそらくは、王配にふさわしい人材だと示したいんですよね。そうなると、少し策が見えてきた気がしました。


 なにかしら、レックスさんの立場を高めることを狙っているのでしょう。あるいは、名声か。今の段階だと、レックスさんの力は、広まっていきそうですよね。それだけでは、ないのでしょうが。


「このまま出遅れ続ける訳にはいきません。そうなってしまえば、レックスさんは手に入らない」


 私は、レックスさんだけは諦めたくない。私を軽んじる人たちの中で、ただひとりだけ本当の私を大好きで居てくれた人だから。いえ、きっと姉さんも近い心情だったのでしょうけれどね。


 だからこそ、姉さんを蹴落とせない。悪手だとは、分かっているのですが。姉さんを切り捨てるのが、一番楽ですからね。


 それでも、私はこの道を選んだ。姉さんとの関係を壊さずに、レックスさんを手に入れる道を。きっと、愚かなのでしょうね。かつての私が見たら、鼻で笑うかもしれません。でも今は、そんな自分が好きになれそうなんです。


 何もかも、レックスさんのおかげですよね。姉さんと仲良くできたのも、自分を好きになれたのも。だからこそ、ずっと傍に居てほしい。それだけは、譲れないんです。


 だから私は、策を練る。いつか、レックスさんと結ばれる未来のために。


「私は王女。その強みは、絶対に活かせるはずなんです」


 他には、姉さんしか持っていない立場ですから。その価値は、とても大きいです。権力としても、立場としても。


 私を王冠代わりに求めるような人なら、好きになることはないでしょうけれど。だからこそ、運用が難しくはあります。レックスさんは、私をただの人として見てくれています。だからこそ、王女としての誘惑は効果が薄いのでしょうから。


 とはいえ、他にも利用価値はあるでしょう。単なる伝手を利用するだけでも、レックスさんに圧力をかける形でも、です。


 本当は、レックスさん自身で私を選んでほしいんですけどね。それは、難しいでしょうから。ある程度は、妥協が必要です。


 レックスさんは、親しい人の策なら割と受け入れそうな人ですからね。仮に無理やり結婚したとしても、おそらくは嫌われない。そして、レックスさんだって不幸にはならないのでしょう。きっと、私と過ごす日々を、普通に生きてしまえそうですから。


 そのあたりも考慮すると、戦術の幅は広がるでしょうね。


「姉さんはきっと王位を継ぐでしょう。だからこそ、私の立場は浮いている。それを利用しないといけませんよね」


 逆に言えば、配偶者を選ぶのは簡単なんですよね。王配よりも、よほど。有力者との結婚が、ちょうど良い程度に。


 だから、今のブラック家が相手でも、悪くないんですよね。有力貴族ではありますから。そして、レックスさんは闇魔法を持っていますから。そのつながりを求めるのは、おかしな話ではありません。


 ただ、姉さんの計画を妨害すると怖いんですよね。レックスさんが傷つくようなことにならないかが。


「まったく、ここまで考えさせるなんて、レックスさんってば……」


 罪な男ですよね。でも、嫌いじゃないですよ。いいえ、好きですね。私にとっては、かけがえのない存在なんです。


 レックスさんが居たからこそ、私は花開いた。それは、きっとずっと変わらないですから。


「王女ふたりに好かれておいて、フェリシアさんとの噂まで流されるんですから。良い身分ですよ、ほんと」


 どこまで女を狙えば気が済むのでしょうね。なんて、単に目の前で苦しむ人を見捨てられなかっただけなんでしょうが。だからこそ、ある意味では罪深い。


 素直に欲望だけで私を狙っていたのなら、まだ道はあったでしょうに。どうして、見返りを求めない人なんでしょうね。困ったものですよ。


 その結果として、色々な人に気を持たせてしまうんですから。仕方のない人です。


「でも、手をこまねいてはいられない。そんなレックスさんが、私は好きなんですから」


 レックスさんとの未来がほしい。その気持ちにだけは、嘘はつけません。私は、心から好きになってしまったんですから。どんな痛みにも、耐えられるくらいに。毎日、激痛とともに魔力を吐き出し続けられるくらいに。


 そんなに想っているんですから、少しくらい応えてくれても良いと思うんですよ。なんて、私の都合なんて、レックスさんには関係ないですよね。


 もし仮に私の訓練を知ったら、止めようとするのでしょうけれど。支えようとするのでしょうけれど。でも、それを利用したら、何かを失ってしまう気もするんです。私の想いの純度が、下がってしまう気もするんです。


 だから、もっと別の策が必要なんでしょうね。しっかりと、考えないといけません。


「とはいえ、今は状況がよくありません。姉さんはレックスさんと協力している。それだけでも、厄介なんですから」


 一緒に何かをすれば、ある程度は仲良くなるものですからね。少なくとも、お互いを大事に思っている関係なら。だからこそ、今のままでは仲を深められるだけなんです。


「しかも、何か裏に隠していますからね。おそらくは、レックスさんと結ばれるための策を」


 それが成功したら、更に差ができてしまいます。だから、私は立ち止まってなんていられませんよ。そうしてしまえば、負けてしまうんですから。


「なら、私も策を練る必要があります。レックスさんを、奪われないために」


 なんて、姉さんとレックスさんを引き離すつもりはないんですけど。健全な友人関係なら、なお良いんですけどね。まあ、恋愛感情なんでしょうね。


 だからこそ、苦しくもあります。姉さんを傷つけたくはありません。それでも、レックスさんとは結ばれたいんですから。


「いっそのこと、正妻を狙うのはやめましょうか。その方が、戦術の幅が広がります」


 私が側室になるということは、王女を側室にするということ。だから、相当難しいとは思います。ただ、それでも姉さんに勝つよりは簡単な気がするんです。


 それに、姉さんと一緒にレックスさんと結婚するのは、きっと幸せなはずですから。


「例えば、レックスさんの立場を極端に高めるとか。王女をふたり、娶ってもいいくらいに」


 どこかの国の王に匹敵するくらいじゃないと、いけませんけどね。だから、並大抵の手段ではいけません。


「自国だけでは、達成できませんよね。なら……」


 他の国も巻き込むだけ。そうですよね。私の国じゃないんですから、どうなろうと知りません。いえ、この国だって、親しい人以外はどうでも良いんです。それなら、思いつくことは多いです。


 ねえ、レックスさん。私の想いは、近い内に形になると思います。だから、受け止めてくださいね。

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