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物語の途中で殺される悪役貴族に転生したけど、善行に走ったら裏切り者として処刑されそう  作者: maricaみかん
1章 レックスの道

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28話 新たな道

 ブラック家の領地に近づいてくる盗賊団については、弟が対処することになった。フェリシアは少しだけ滞在して、すぐに帰っていった。もう少し交流したくはあったが、本人も忙しいのだろう。盗賊団の居場所は、ヴァイオレット家の領地の近くでもあるのだから。


「盗賊団については心配だが、今は自分のことだ。今できることは、できるだけ強くなっておくことだな」


 とりあえず、俺の力が必要になっても対処できるように。まずはそこだな。闇魔法があれば、大抵の敵には勝てる。だが、俺ひとりが生き延びるだけなら簡単だというだけだ。大勢を守る力を、今の俺は持っていない。


「カミラ、修行のために少し遠出するって言ってたよな。無理していないと良いが」


 なぜかは分からないが、今の状況で武者修行に向かったようだ。向かった先は、領地の西側。ソーラの森と呼ばれているあたりだ。少なくとも、盗賊団を一人で倒そうと考えてはいないようで安心できる。カミラには、万が一の事態があってほしくないからな。


 まあ、今カミラのことを考えてきても、できることは少ない。ということで、フィリスやエリナと訓練を進めていくことにした。


 という訳で、まずはフィリスに魔法を教わっていく。


「フィリス、魔力を侵食したものを呼べるなら、逆に魔力を遠くまで送れるんじゃないか?」


 俺の魔力を侵食した剣を、手元に呼ぶことができることからの発想だ。とりあえず、思いつきは全て口にしろとフィリスには言われている。まあ、理由は分かる。俺にとって価値のない発想でも、彼女にとっては新鮮である可能性だよな。


 ということで、魔力を遠くに送ってどうするのかという考えもないまま、思いつきを口に出した。フィリスは、俺の言葉について考察しているようだ。いつも無表情なフィリスだが、考えは分かりやすいんだよな。


「……同意。ただ、周囲の地形の確認が課題になる」

「なるほどな。なら、俺なら対策できるんじゃないか? 事前に、その土地に魔力を侵食させておけば」

「……感嘆。確かに、理論上は可能に思える。ただ、どこで実験するのかが問題」

「まずは、家で試してみたいところだ」


 ということで、試しに実験してみた。妹姫リーナを暗殺から助けた時と同様の手順で、俺の侵食させた魔力を起点に状況をつかむことができた。つまり、事前準備さえできれば、かなり遠くからでも攻撃できる手段を手に入れたことになる。


 一通り実験が終わって、次はエリナのところで剣の修業をしていた。エリナは狼の獣人だから、人間とは体の構造が違う気がする。なので、そこについて聞いてみることに。


「エリナ、剣を振る時に尻尾を利用したりするのか?」

「そうだな。レックスには尻尾がないから、それに合わせた剣技が必要になる」


 ということは、エリナは剣を振る時に、尻尾も降って反動を使ったりしているのだろうか。そういえば、彼女の剣技を見ている時に、尻尾に注目したことはなかったな。見て胴体や足くらいだった。反省すべきことだ。


 もし、尻尾を使って攻撃する手段があったのなら、俺は不意打ちを受ける可能性があったんだからな。その辺、しっかりしておかないと。


「いや、俺の魔力で尻尾の重心を作れば、エリナの剣技をもっと真似できるんじゃないか?」

「なら、早速試してみるか。まずは、私の動きを見ておけ」


 ということで、エリナの動きをよく観察した。その結果、体を回す時に尻尾を利用していることがわかった。なので、俺も魔力で尻尾のようなものを生み出し、エリナの動きを真似てみた。すると、振り向きは明確に尻尾ありの方が鋭かったな。


「レックス、お前は私の想像を超えてくれるな。これで、私の剣技の全てを託すことも、夢ではなくなった」


 とても嬉しそうに言われて、俺まで嬉しくなった。エリナのことは尊敬しているから、彼女の剣技を全て習得できることは、俺にとってもありがたいことだ。


 しばらくエリナと訓練していて、尻尾の動きについても慣れてきた。それから部屋で、考えに浸っていた。


「さっきの訓練で思ったが、やはり魔法と剣技は組み合わせられるよな。その訓練も、やりたいものだ」


 思い立ったが吉日ということで、次の日にはフィリス達に相談することに決めた。ふたりを呼び出して、思いついたことについて相談していく。


「フィリス、エリナ。魔法と剣技の合わせ技の訓練に、協力してくれないか?」

「……難題。私は魔法使いであって、剣技には詳しくない。でも、興味はある」

「私もだ。剣技しか知らない女だからな。だが、レックスのためだ。少し考えてみるよ」


 フィリスとエリナは、ふたりで相談していた。まあ、うまい回答が出なくても仕方ないか。魔法と剣を両方扱える人間は、相当少ないからな。


「……結論。少なくとも今は、剣技と魔法の同時使用しか思いつかない」

闇の衣(グラトニーウェア)をまといながら、私の音無し(サイレントキル)を使えるか?」

「試してみるぞ。……ふっ!」


 実験してみると、すぐに実現できた。魔法と剣を組み合わせた技とは思えないが、魔法使いにも剣士にもできない技だ。だから、魔法が得意な相手を剣で、剣が得意な相手を魔法で倒すというのも現実的なんだよな。


「……成功。これから先は、レックス独自の道になる。私達も協力するけど、限界はある」

「同感だ。私達は、剣と魔法を組み合わせる訓練をしたことがない」

「分かった。なら、俺の手で最強の戦術を生み出してみせるさ」


 尊敬している師匠達でも難しいのなら、相当な難題だろう。でも、だからこそやる気に満ちあふれていた。フィリスの魔法と、エリナの剣。両方を組み合わせたら、最高なんて軽く超えるものができそうな気がしたからな。


「とりあえず、新しい目標ができたことはありがたいな。剣と魔法の融合。カミラが先達ではあるが」


 雷の魔法で、自分を加速する剣技。いま思えば、とてもすごい技だったのだな。そう考えて、またカミラの顔が見たくなってきた。


「そういえば、今カミラはどのあたりに居るのだろうな」


 そんな事を考えてすぐ、慌てた様子の弟が飛び込んできた。ジャンが盗賊の討伐に当たっていたことを考えると、緊急事態だろう。


「兄さん、大変です! 盗賊が進路を変えて、西から攻めてきそうなんです!」


 西と聞いて、少し嫌な予感がした。だが、努めて冷静さを保つ。俺まで焦ってしまえば、状況は悪くなるだけだろうから。


「ジャン、落ち着け。西って、どのあたりだ?」

「ソーラの森あたりです!」

「それって、姉さんが修行に向かったあたりじゃないか?」

「ごめんなさい、兄さん。姉さんが危ないかもしれません!」


 カミラが、フェリシアですら危ないという盗賊団に襲われる。つまり、本気で命の危機かもしれない。どうやって助けに行くか。俺の頭はそれでいっぱいだった。

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