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物語の途中で殺される悪役貴族に転生したけど、善行に走ったら裏切り者として処刑されそう  作者: maricaみかん
8章 導かれる未来

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277話 希望の先は

 王家に告発した麻薬問題だが、沙汰が出たらしい。思っていた以上に早い対処で、かなり驚いた。最低でも一月くらいはかかると考えていたが、そうでもなかったようだ。


 まあ、麻薬はかなり大きな問題だからな。早く対処しないと、大ごとになるのは確かだ。そういう意味では、王家は適切な判断をしてくれた。


 ただ、気になる部分もあるんだよな。急ぎすぎて、周囲との関係に問題が出たりしていないだろうか。ミーアやリーナが心配だな。負担になっていなければ良いものだが。


 それもこれも、全部詳しい話を聞いてからだ。ということで、ラナと話をしていく。


「結局、例の当主は打ち首になったそうですよ。それで、あたしがそこを運営しろと」


 ラナはいつもの調子で言っているが、とんでもないことだぞ。完全に相手の家を切り捨ててしまった。麻薬は許さないという宣言なのか、あるいは他の意図があるのか。なんにせよ、びっくりする。


 まあ、ありがたいのは確かだ。麻薬が広がってしまえば、俺もラナも困っただろうからな。それが避けられただけでも、とても大きい。


 とはいえ、これから大変だぞ。他の領地と違って、まだラナを受け入れる体制になってないだろう。そこを納得させるところから始まるわけだ。俺も協力した方が良いのだろうな。無論、望むところだ。


「ずいぶんこっちに都合の良い形で帰ってきたな」

「あたしは領地を広げているんだから、問題ないだろうとのことです」

「なるほどな。王家には現状を理解されていると。良いことなのか、悪いことなのか」


 まあ、把握していなかったとしたら、王家を頼りなく感じていただろうが。実質的には、俺達の行動を黙認したようなものだよな。さて、どう出るだろうか。


 反乱の意思はないので、あまり疑われるようなら困ってしまうが。ミーアやリーナなら、信じてくれるとは思うが。だからといって、個人の信頼だけで動けないのも王家だろうからな。関係性にどう影響が出るのか、注意深く見極めたいところだ。


「レックス様の連名が効きましたね。やはり、敵に回したくないみたいです」

「まあ、万が一俺が反抗してしまえば、王家くらいは潰せるだろうが」

「もともと、闇魔法使いには触れないというのが一般的な貴族ですから」


 いたずらっぽく、そんな事を言う。そんな言い方からして、俺を信じてくれているという意図を込めているのだろう。嬉しい限りだ。


 まあ、闇魔法使いは、原作では全員悪役だったからな。ミュスカもレックスも。そうなると、悪人だと考えるのは普通のことだ。


 にもかかわらず、闇魔法使いは圧倒的に強い。少なくとも、並大抵の魔法使いでは勝てない程度には。それは、扱いに困るよな。疫病神のような扱いも、むべなるかなといったところだ。


「ああ、聞いたことがある気がする。暴れられるよりも、多少のわがままを許した方がマシだとか」

「呪物みたいな扱いですよね。もちろん、レックス様は違うと信じていますよ」


 自分の胸に手を当てながら、穏やかな声で伝えられる。間違いなく、信頼関係は築けているはずだ。そうでなくては、今回のように頼られたりしないだろう。それに、俺に対して真摯に接してくれているからな。おもねるような物言いではないはずだ。


 俺の気持ちは、ラナに伝わっているはずだ。信じているし、大事な仲間だと感じている。失いたくない相手だとも。だからこそ、その関係を壊さないようにしないとな。


「ああ。ただ、実際に闇魔法使いには悪人が多いらしいからな」

「知り合いだと、後はアイク先生とミュスカさんですか。アイク先生は、確かに悪人でしたね」


 クスクスと笑みを浮かべながら言っている。まあ、過ぎ去ったことだからな。それに、笑い話として扱えるくらいの方が良いか。あまり深刻に捉えるのも、疲れるだけだからな。


 アイクと手を取り合えなかったのは残念だが、ミュスカとは仲良くできている。それで十分なはずだ。裏切られないことを、信じ続けるだけ。それでいいよな。


「ミュスカは違うと信じたいものだな。というか、良いやつだとは思っているが」

「ふふっ、レックス様なら、きっと仲良くできますよ。なんて、あまり面白くはないですけど」


 どこか湿度の感じる目で、こちらを見ている。まあ、不満は本心なのだろうな。とはいえ、だからといってミュスカとの関係を切ろうとは思わない。せっかく、希望が見えてきたんだ。ここで断ち切りたくはない。


 原作では悪役だった相手とでも、仲良くできる。そんな事実があるのなら、より良い未来をつかめる可能性は高いよな。だから、こればかりは譲れない。


「勘弁してくれよ。友達と仲良くするくらい、許してほしいものだな」

「もちろんですよ。あたしは、レックス様を縛るつもりはありませんから。自由なあなたこそが、輝いているんですから」


 明るい顔に変わって助かるが、完全に納得はしていないのだろうな。今後のためにも、気にしておかないとな。不満を抱えさせても、あまり良いことはない。


 とはいえ、無理やり踏み込むのは明らかに違う。今は、素直に話に合わせるのが正解だろう。


「そこまで褒められても、何も出ないぞ」

「もう十分ですよ。あたしの病気を癒やしてもらって、今回も助けてもらっているんですから」


 優しい顔で、こちらに微笑みかけてくる。まあ、恩といえば恩なのか。というか、今回の事件もそろそろ解決しそうだ。つまり、またしばらくはお別れだ。


「そうか。もう終わりだと思うと、寂しくなるな。ただ、事件が終わったのは喜ばしいが」

「とはいえ、もう少し手伝ってくれると嬉しいです。新しい領地を、安定させたいですからね」

「そうだな。ラナが苦しまなくて済むように、最大限に協力するよ」

「ありがとうございます。レックス様のお優しさが伝わらないのは、もどかしくもありますね」


 悔しそうに見えるが、あまり気にしなくても良いのにな。ブラック家の評判が悪いのは事実だし。それに、俺には多くの味方がいる。信じられる仲間は、とても多い。だから、何も問題はない。


 まあ、アストラ学園で嫌われていた時は、確かに傷ついていたが。だが、みんなのおかげで元気が出たのも事実だ。今となっては、そこまで迷わないだろう。


「お前達さえ理解してくれているのなら、それで良いんだよ」

「ブラック家の当主としては、甘い発言ですね。そういうところも、大好きではありますが」


 ラナに好かれているのは嬉しいが、やはり改善したいところだよな。俺は家族や仲間の生活を背負っている。だからこそ、愚かなままではいられない。もっと成長するべきなんだろう。


 とはいえ、俺ひとりで完璧を目指す必要はない。足りない部分は、みんなに補ってもらう。それも大切なことだよな。


「お前は、敵に回したら手強そうだな。今は、頼りになる味方だが」

「ふふっ、あなたのために、頑張りますよ。あたしは、レックス様に救われたんですから」

「だからといって、無理はするなよ。何度も言っているが、お前達の幸せが一番大事なんだ」

「もちろんですよ。あたしは、あたしの幸せのためにレックス様のそばに居るだけです」


 俺とラナの幸せは、とても近いところにあるのだろう。素晴らしいことだ。だからこそ、手を取り合えるはずだ。これから先も、きっとずっと。


「なら、これからもよろしくな。ブラック家とインディゴ家も、仲良くできるように」


 その言葉に、弾けるような笑顔で返してくれた。俺達の未来は、きっと希望であふれているはずだ。今日ばかりは、そう信じることができた。

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