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物語の途中で殺される悪役貴族に転生したけど、善行に走ったら裏切り者として処刑されそう  作者: maricaみかん
8章 導かれる未来

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264話 近づく答え

 盗賊への追跡の結果分かったことを、ラナやカイトに共有する必要がある。結局のところ、俺には深い事情を考えることはできないからな。おそらくは、スマルト家が黒幕なんだとは思う。それでも、確信できてはいないからな。


 他の人がどう考えるのか知らないことには、怖くて動けない。冤罪だったりしたら、最悪だからな。


 ということで、ふたりに得られた情報を話していく。すると、ラナは納得したような顔を浮かべた。


「ふむ。やはり、スマルト家の仕業でしたか。あたしの予想通りでしたね」

「それなら、どうして言わなかったんだ?」

「レックス様の判断を歪めたくありませんでしたから。それは、あたしのやるべきことではありません」


 まあ、前もって聞いていれば、確かに判断に影響は出たかもしれない。フラットな視線で見られるという意味では、分かる話ではある。


 ただ、ラナの言っているのは別の意味な気がしてならない。なんというか、俺にすべてを捧げたいという言葉の一環というか。人質ごときが主に口を出すのはもってのほか、みたいな。あまり健全ではない感情が見えているように思えてしまう。


 とはいえ、俺の感覚が当たっていると決まった訳ではない。それに、有効な対策も思いつかないからな。今のところは、様子見するしかないだろう。


「とりあえず、今後の方針を決めませんか? それによって、あなた方との関係も変わるでしょう」


 カイトが話を続けた。まあ、妥当なところだ。ただ、今の段階で無理矢理スマルト家を攻撃するのは難しいだろう。できるだけ多くを味方にできる選択を取りたいところだ。


 今でも、ブラック家の評判は良いとは言えないからな。そこを考えると、力技でどうにかするのは厳しい。方向性としては、情報戦になるだろうか。スマルト家に関する悪い噂を流して、ラナというかインディゴ家を正義と扱わせるみたいな。


「まずはどちらを調査するか、だな。盗賊のアジトか、スマルト家の城か」

「あたしとしては、アジトが先で良いのではないかと。手駒を始末するだけでも、相手の動きに影響するでしょうからね」

「まあ、次の盗賊を探すなり何なりする必要があるからな」

「そうと決まれば、早速動いていただけますか? こちらとしても、いつ私を直接襲撃されるか、気が気でないのです」


 気持ちは分かるが、急ぎ過ぎじゃないか? まあ、インディゴ家というかラナに問題が出ないのなら、それで良いのだが。ブラック家に関しては、今はまだ表に出ていない。そして、盗賊を討伐するだけならば問題ないだろう。


 最悪気付かれても、スマルト家の評判を下げてしまえば勝ちだ。そういう意味では、負け筋が少ないと言える。やるかどうかはともかく、証拠の捏造は可能だからな。闇魔法なら、どうとでもなる。


「俺は構わないが。ラナはどうする?」

「あたしも着いていきます。そちらの方が、話が早いでしょうから」


 なら、決まりだな。ラナが納得しているのなら、それでいい。あくまで、ラナのための行動だからな。カイトに死なれたら、寝覚めは悪い。それでも、ラナより優先するべきことじゃない。


 流石に目の前で死なれそうなら助けるが、知らないところで死ぬのなら、それまでだったと思うべきだろう。今の段階でも、抱え過ぎだと感じるくらいなんだ。単純に、手が回らない。


「そういうことだ。ジュリア達、良いか?」

「もちろんだよ。レックス様のお役に立てるように、頑張るね!」

「レックス様のお手を煩わせる不届き者に、裁きを与えましょう」

「ご褒美のために、しっかり手柄を立てる」


 うん、悪くない。戦ったばかりでも、いつもと同じ調子だ。そこまで苦しんではいないのだろう。なら、少しは安心できる。まあ、もっと激しい戦いになれば、話は別かもしれないが。あるいは、大勢を殺すとかも。


 だが、今回は情報を集めるだけだからな。生かしておいた方が都合が良いのだから、あまり気にしなくてもいいか。前回の様子を考えるに、ジュリア達の防御を抜けそうな人は居ないだろう。俺の贈ったアクセサリーの魔法だけで、十分なはずだ。


「よし、行くぞ。面倒なことに、時間をかけていられない」


 周りの顔を見ると、頷かれた。ということで、転移していく。アジトである古びた砦には、それなりの数の盗賊が居た。そいつらは、こちらを見て武器を構える。


「何者だ、お前達!」

「話す気なんてないよ! 収束剣(ブレイブブレイド)!」

「さっさと倒れなさい! 獄炎(インフェルノフレイム)!」

「ご褒美の餌になって。雷炎槍(ブラッドジャベリン)


 ジュリア達の魔法で、簡単に敵は倒れていく。まあ、死んではいないのだが。すぐに戦いは終わったので、ボロボロになった敵に話すことにする。


「さて、お前達はなぜアードラ商会を襲った?」

「知らねえよ、そんなこと!」


 まあ、そうなるか。下っ端だから知らないのか、あるいは隠しているのか。どちらにせよ、どうやって情報を集めたものか。そう悩んでいると、ラナが前に出てきた。


「レックス様、あたしに任せてください。必ず吐かせてみせます」

「そんな小娘に何ができ……ガボボ……」


 ラナは、盗賊の顔の周りに水を出現させる。それで溺れた相手が限界を迎えそうになったら、開放する。そして、軽く息が整った段階でもう一度。それを繰り返すと、敵の目から力が抜けた。逃げようともせずに、うなだれている。


「ふふっ、苦しいですよね。早く言えば、楽になれるんですよ?」

「分かった、分かったから! スマルト家の当主に依頼された! あそこを調べれば、証拠が残っているはずだ!」


 敵が指差す部屋に向かう。ラナは、相手を拘束したままだ。一応、嘘だという可能性を考慮しているのだろう。逃げ出されたら、面倒だからな。


 そして調べていくと、何らかの書類を見つけた。アードラ商会を襲う手順が記されているものだ。


「ふむ。領主の名前が署名されていますね。この筆跡が正しいのかは、分かりませんが」


 領主本人が直々に署名する理由は、いまいち思いつかないのだが。金さえ払うのなら、別に誰でも良くないか? それだけ、スマルト家の領主は愚かなのだろうか。まあ、確かめれば済む話か。


「なら、それを調べる必要があるな。次は、スマルト家の調査か」

「そうなると、あまりお役に立てそうにないね。こっそりと侵入は、難しそうだから」

「私も同じです。必要な技能を持っていないのが、口惜しいですね……」

「今回は、ご褒美が怪しい。私も無理」


 そうか。その書類がどこにあるか、調べる必要があるんだな。さて、どうしたものか。闇魔法を使いさえすれば、隠れるのは問題ないと思う。ただ、証拠がどこにあるのか、当てがないんだよな。


「なら、俺がやるしかないな。仕方ない。他の動きは、ラナに任せた」

「はい。うまくいくように、状況を整えておきますね」

「ああ、頼む。さて、どう闇魔法を使ったものか……」


 それが決まりさえすれば、どうとでもできるだろう。本当にスマルト家が黒幕なのか、しっかりと確認しないとな。

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