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物語の途中で殺される悪役貴族に転生したけど、善行に走ったら裏切り者として処刑されそう  作者: maricaみかん
7章 戦いの道

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239話 高い壁を前に

 最後の敵はシアン家になると考えられる。その当主エトランゼは、これまでよりも遥かに強いと想像できる。


 フェリシアが挑むというのだが、厳しい戦いにはなるだろうな。だが、それでも勝つと信じている。最悪の場合は、俺が攻撃するだろうが。


 ルール違反だろうが、周囲から責められようが、フェリシアの命には代えられない。だからこそ、相手も同じ手を使ってくる可能性は、想定しておかないとな。いざという時には、動けるように。


 そんな感じで戦いに向けて気分を高めていると、またフェリシアに呼び出された。つまり、動きがあったということなのだろう。


 同じようなパターンではあるが、今回ばかりは難しいだろう。俺が全部解決できれば、話は早い。ただ、フェリシア自身が軽く見られるだろう。だから、なるべく手出しはしないのが大事だろうな。


 もちろん、手助けした時点でという考えもあるだろう。ただ、同盟というのは協力し合うためのものだ。だから、お互いに助け合うことができるのだと示せるのなら、問題ない。


「さて、皆様。シアン家から、書状が届きましたわ」


 今度は、紙を大事そうに持っている。つまり、相応の文面が届いたのだろう。まあ、宣戦布告な気がするが。フェリシアは、どこか楽しそうな顔をしているから。


 なんというか、フェリシアは戦いが好きだというのを感じている。むしろ、平和よりも気に入っているんじゃなかろうか。


 それでも、俺の意思を尊重してくれている。むやみやたらと、戦火を広げようとはしていない。だからこそ、信じる意味がある。


 さて、相手はどう出るかな。武人ということだから、正々堂々挑んでくるとか? なんて、敵に期待しすぎるのは危険か。まずは話を聞いてみればいい。


「ふーん。それで、どんな内容なのよ?」

「メアリも、活躍できるかなあ?」

「残念なことに、その機会はなさそうですわね。内容は、わたくしとエトランゼが、皆の前で雌雄を決しようとのこと」


 凄絶な笑みを浮かべている。それこそ、虎でも食い破ってしまいそうなくらい。楽しそうというか、気合いが入っているというか。邪魔してしまえば、大変だというのは分かる。


 どう考えても、フェリシアは本気だ。四属性使いであるエトランゼを、自らの力のみで倒そうとしている。できると思えるだけの気迫を感じる。


「一騎打ちね。悪くないんじゃない? フェリシアが勝てば、誰も文句は言わないでしょ」

「そうだな。勝ってしまえば、それでいい。負ければ、ややこしい状況になるだろう」

「むーっ、つまんないよー。メアリも、戦いたいのにー」


 ふくれっ面をしているが、流石に味方はできない。いろんな意味で、まずいだろう。ご機嫌斜めになりそうなら、後でフォローしておかないとな。


 まったく。戦いが関わっていなければ、ただ甘やかしても良かったのだろうが。人の命がかかっている状況で、ただ肯定するのはな。


「今回は、我慢してくださいまし。きっと、また機会はありますわ。レックスさんの道の先には、ね」

「不吉なことを言わないでほしいんだが……。まあ、否定はできないのが悲しいところだな」

「なら、メアリも手伝うよ! お兄様の敵なんて、やっつけちゃうんだから!」


 握りこぶしを両手に作って、顔のあたりに持っていっている。張りのある声といい、頑張るぞという意思が見えるよな。


 メアリのことだから、めいっぱい力を込めてくれるのだろう。だからこそ、俺も努力しないとな。誰かの影に隠れて楽をするのは、性に合わない。


「気持ちは嬉しいけど、危ないことはしないでくれよ。メアリが傷つくのは、絶対に嫌なんだから」

「うん、分かってるの! お兄様と一緒にいるためなんだから!」

「あら、わたくしは、傷ついても構いませんの?」


 ニヤニヤしながら言ってくる。涙を流そうという気配は見えない。完全に、ただ遊んでいるだけだな。まあ、ちゃんと気持ちは言うべきだよな。ただ、ちょっと反発する心もあるが。


「違うと分かっていて言うのはやめろ。いくらなんでも、騙されたりしない」

「そうですか。つまらないですわね。もっと慌ててくれたら、面白いですのに」


 目を伏せて、そんな事を言う。慌てさせるだけの演技も、していなかっただろうに。フェリシアが本気を出せば、いくらでも俺を騙せるはずだ。 まあ、ちょっと不謹慎ではあるか。だから、分かりやすい言い方に留めているのだろう。そのあたり、フェリシアは理解しているに違いない。


「バカ弟は、周囲の好意だけは疑っていないもの。そこでからかうのは、無意味よね」

「メアリも、お兄様のことが大好きだよ!」

「仕方のない方ですわ。レックスさん、応援してくださいますわよね?」

「エトランゼとの戦いなら、当然だ。お前が勝ってくれなきゃ、困る」

「あら、利益だけですの? 心配は、してくれませんの?」


 小首をかしげて下を向く姿は、本気で悲しそうだ。だが、今の流れで分からないはずがないんだよな。


「そんなこと、言うまでも……いや、確かに心配なんだ。お前が傷ついたら、俺は悲しい」

「ずいぶんと素直になったものね。それで? あたしに言うことはないの?」


 軽くにらみつけてくる。まあ、メアリやフェリシアには、なにか言っているものな。不公平な感じを出すのは、どう考えても問題だ。


 さて、どういう言葉を返すべきか。同じ言い回しというのは、バレるからな。カミラとの思い出に絡めるとすると、こんな感じか?


「姉さんだって、大事だよ。そうじゃなきゃ、助けたりしない」

「あらあら、可愛らしいこと。ひねくれていた頃のレックスさんが、懐かしいですわね」

「昔のお兄様も好きだけど、今のお兄様の方が好き!」

「ま、あたしはどっちでもいいけど。どうせ、バカ弟は変わりやしないわ」

「そうですわね。わたくし達が大好きで、どこか情けない方。それは、きっと未来でも同じですもの」


 みんな、今の俺を肯定してくれている。ありがたいことだ。だからこそ、みんなの気持ちに応えられるようにしないとな。俺を大切に思うことを、いずれ後悔しないように。


 俺は、みんなにふさわしい俺で居る。それだけが、道しるべなんだ。俺にとって本当に必要なものは、みんなだけなんだから。どんな形であったとしても、失わずに済むように。たとえ立ち止まるとしても、迷うとしても、最後まで歩み続けるだけだ。


「お兄様は、カッコいいんだもん!」

「まあ、弱いところがあるのは否定できないな。でも、ありがとう、メアリ」

「ふふっ、楽しいですわね。レックスさん、あなたも、楽しいですか?」

「ああ。だからこそ、勝ってくれ。そして、また今みたいな時間を過ごそう」


 そのために、どんなことでもしよう。俺の望みを叶えるために。みんなの願いを紡ぐために。卑怯だろうがなんだろうが構わない。手を汚す覚悟もできている。今度こそ、迷うものか。


 とはいえ、まずは応援だけどな。フェリシアが勝ってくれるのなら、それが一番良いんだから。


 頑張ってくれよ、フェリシア。

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