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物語の途中で殺される悪役貴族に転生したけど、善行に走ったら裏切り者として処刑されそう  作者: maricaみかん
7章 戦いの道

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232話 同じ願いを

 フェリシアの次の敵、ペール家。そこでは、集団で魔法を発動するという。魔法を重ね合わせて、威力を高めるのだとか。フェリシアが言うには、正面から打ち破るのは難しいと。それなら、対策が必要だ。


 ということで、思いついたことがある。それが実現可能か、本人に確かめるところだ。さて、どうだろうな。


「アリア、少し話があるんだが。今、大丈夫か?」


 話しかけると、アリアはこちらを見て、薄く微笑む。穏やかな印象があって、落ち着くな。だが、俺がやろうとしていることは、穏やかさを奪う行為なのかもしれない。


 だが、命に関わる場面で手を抜くのは、良くない。アリアの感情を無視するのも、当然良くない。やはり、本人の意見を聞くところからだな。


「はい、もちろんです。どんなご用ですか?」

「以前、お前の狙撃を見せてもらっただろ? あの感じで、敵の指揮官だけを狙い撃つことはできるか?」

「もちろん、たやすいことです。殺してほしい相手でも、いるのですか?」


 アリアは、指先をあごに当てている。おそらくは、俺が殺してほしい相手について、考えているのだろう。まずは、理由を説明しないとな。俺が強制するのではなく、納得した上で行動してほしい。


 なにせ、人を殺すのだからな。押し付けて良いことではない。戦う意志を持たない人間を戦場に送り込むのは、罪深いことのはずだ。


 もちろん、状況が強制する時もあるだろう。それでも、俺達は冷たい現実を減らすべきなんだ。力を持っている者の義務だろう。権力は、ただ振り回すだけのものでは無いはずなのだから。


「ああ。集団で魔法を発動する部隊があるらしくてな。その指揮官を狙ってほしい」

「かしこまりました。なら、相手から見えない位置に行きたいですね」


 軽い調子で肯定された。少なくとも、深刻な顔には見えない。なら、大丈夫なのだろうか。とはいえ、様子は注視するべきだよな。俺の言葉は、良くも悪くも大きな力を持つようだから。


 それにしても、相手から見えない場所か。確かに、狙撃と考えれば当たり前だな。


「隠れる場所とか、用意した方が良いのか?」

「いえ、必要ありません。私なら、相手から見えない距離から、ちゃんと殺せますから」


 穏やかな笑顔で殺すと言われると、戸惑ってしまう。俺を怖がらせないように配慮しているのだろうか。それとも、殺すことに実像がないのだろうか。人を殺したことがないから。


「お前は、良いのか? 人を殺させるような頼みをして」

「レックス様のお役に立てるのですから。それに、私はブラック家で生き抜いてきたんですよ?」


 手を胸のところに当てて言う。昔のことを思い出しているのだろうか。俺がこの世界に来てからでも、ブラック家の犠牲者は多かった。それなら、人死にに慣れるのも、おかしな話じゃない。


 俺のやっていることは、つらい過去を思い出させたりしないだろうか。アリアを苦しませたりしないだろうか。つい、悩んでしまうな。


「ははっ、確かにな。厳しい環境だと言われても、否定はできない」

「そんなブラック家を、レックス様は変えようとしています。変わった部分も、多いです。ですから、良いんです」


 柔らかく微笑んでいる。俺のことを、受け入れるかのように。そうだよな。アリアは俺を信じてくれている。だったら、俺もアリアを信じるだけだ。単純な話だよな。


「ありがとう、アリア。お前の期待に応えられるように、頑張るよ」

「いえ。私の期待は、あくまで勝手な感情です。あなたは、あなたのやりたいことをすれば良いんです」


 まっすぐに見つめられる。そもそも、期待というのは勝手な感情なのだろう。それでも、アリアに期待されるのなら、嬉しいだけだ。大切な人が、俺を信頼してくれている。その証なのだから。


 胸が暖かくなる感覚がある。この感情を守るためにも、絶対に勝たないとな。そこから、次へと進むんだ。


「嬉しいよ。だが、俺の望みは、大切な人を喜ばせられる俺で居ることだ。それだけでいいんだ」

「その言葉だけで、とても嬉しいです。おそろいですね。ですから、私も努力します。あなたとの、未来のために」


 唇の端が薄く持ち上がる姿からは、アリアの穏やかな感情が伝わってくる。うん。俺も、アリア達との未来を守りたい。そのために、アリアにも手伝ってもらう。そうすれば、お互い幸せになれるはずだ。望んだ未来を手に入れられるはずだ。


「ありがとう。俺とアリアとウェスと、他のみんなも。そろって幸せになりたいな」

「そうですね。皆さんを大切にするレックス様だからこそ、私も協力したいのです」


 優しく、俺の手を握ってくる。体温が伝わって、落ち着いた気持ちになれる。この気持ちを、みんなも抱ける。そんな未来が理想だよな。


 俺もアリアも、きっとウェスも、他のみんなも。同じ望みを抱えているはずだ。だから、迷わない。


「なら、これからもずっと続けないとな。俺自身の望みでもあるのだから」

「そして、私の望みでもあります。そして、きっとウェスさんも。みんな、一緒なんですよ」


 アリアも、同じ気持ちで居てくれる。なら、絶対に叶えないとな。もう、俺だけの願いじゃないんだから。自分だけの願いと思うより、よほど力が湧き上がってくる。


「だったら、まずは今回の戦いに勝たないとな。アリア、お前は必ず守ってみせる」

「ありがとうございます。でしたら、私は必ず成功させてみせますね」

「そうしたら、ヴァイオレット家とブラック家の結びつきも、強くなるだろう」

「はい。フェリシアさんと、大手を振って仲良くできそうですね」


 やはり、他の家の人間だからな。どこか、違う配慮が必要になってしまう。それが薄まるだけでも、今回の事件には意味があるはずだ。


「やはり、大切な幼馴染だからな。敵対する未来は避けたい。腹のうちを探り合うのも」

「レックス様は、お優しいですからね。ですから、私が支えます」

「ああ。俺が間違っていたのなら、止めてくれ。頼む」

「もちろんです。約束しますね」


 俺の手に、アリアの力が伝わる。きっと、固い誓いを抱えてくれているのだろう。なら、俺だって同じようにするだけだ。未来のために、立ち止まったりしない。


「なら、安心だな。さて、本番に備えないと」

「それなら、私の射撃を見ていきますか? 今ならどれくらいできるか、確認してください」


 確かに、確認は大事かもな。それによって、戦術は変わってくるだろうから。うなづくと、アリアは先導を始めた。さて、見せてもらうとするか。

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