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物語の途中で殺される悪役貴族に転生したけど、善行に走ったら裏切り者として処刑されそう  作者: maricaみかん
6章 ブラック家の未来

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215話 レックスの幸せ

 あれから、王から連絡があった。ブラック家を安定させるために、全力を尽くせと。その先の未来でなければ、ミーアやリーナの力になることはできないと。


 まあ、当然のことだな。自分のことも満足にこなせないで、人を助けられるはずがない。なら、まずは足元を固めるのが自然な流れだ。


 とはいえ、人材集めで生き残ったのは、ジェルドだけだ。彼は確かに優秀だが、それだけでは足りないかもしれない。


 ただ、学校もどきを任せているジュリア達も、こちらを手伝うための準備が整った様子だ。今ブラック家に足りない人材は、ミルラやジャンのような上役と、アリアやウェスのような手足との中間の存在だ。つまり、ジュリア達はちょうど良い存在だと言える。


 というのも、大枠の指示を元に自己判断しつつ、現場に指示を出すという仕事は、学校もどきでジュリア達がやっていたことだからだ。狙っていた訳ではないのが悔しくはあるが、結果オーライだな。


 これからは、俺が最低限の方針を提示し、ジャンとミルラが計画を練り、ジュリア達が現場を見ながら調整するという体制になるだろう。ジェルドは、遊撃かな。


 まずは、みんなの意見を聞いて方針を固めるところからだな。そこから、新しいブラック家は始まっていくだろう。


 ということで、一番はメイド達に聞いていくことにする。単純に、傍に居たからな。


「アリア、ウェス、ミルラ。お前達にとって理想のブラック家とは、どんなものだ?」

「そうですね。レックス様の望む未来が、叶うような場所でしょうか」

「ご主人さまが居てくれれば、どんなものでも良いですよっ」

「レックス様が、最大限の力を発揮できる場所かと存じます」


 ぜんぶ俺の話じゃないか。これは、俺を尊重してくれていると思えば良いのか、あるいは気を使わせていると解釈すれば良いのか。


 とにかく、みんなの意思を押し込めさせるのは、俺の望みではない。もちろん、妥協はお互いに必要だと思うが。それもこれも、お互いの理解が大事になってくる話だ。


「なるほどな。お前達自身の望みは、ないのか?」

「それこそ、皆さん同じですよ。レックス様と、皆さんとの居場所ができることです」

「わたしも、そう思いますっ。レックス様と一緒だから、幸せなんですからっ」

「あなたの望みを叶えることこそ、私の願いでございます」


 今の言葉を信用するのなら、俺がメイドたちの幸せということか。いや、笑顔を見る感じでは、ちゃんと本音だ。なら、できるだけ共に過ごす時間を作りたいな。そうすることで、お互いにとって良い環境になるはずだ。


 というか、俺達の望みは同じなんだな。結局、みんなで穏やかな日々を過ごすことが、何よりも大事なのだろう。まあ、当然か。みんな、自分さえ楽しければそれでいいって人じゃないからな。


「そうか。ありがとう。俺達の願いが叶うように、努力するよ」


 メイド達は、明るい顔でうなづいてくれた。この調子で、みんなの希望を確認したいところだな。


 続いて、家族で食事のために集まったタイミングで、みんなに確認してみる。


「姉さん、メアリ、母さん、ジャン。この家は、どんな家になってほしい?」

「どうでもいいわ。あたしは、あんたに勝つだけ。それだけよ」

「お兄様が傍に居ること。それだけなの」

「レックスちゃんが幸せなら、それで良いのですわ。わたくしの、可愛い息子なんですもの」

「さらなる栄達と言いたいですが、僕の実力を発揮できることですかね」


 良くも悪くも、家自体には興味がない感じか。まあ、仕方ないことだ。母はよく分からないが、他の人達は愛情を受けて育っていない様子だからな。愛着も何もあったものじゃないだろう。


 まあ、母にとっても生まれ育った家ではないからな。ただ政略結婚で嫁いできただけだろう。そうなると、みんな同じなのか。悲しくはあるが、バラバラになっていないだけマシか。


「そうか。なら、極端な変化は、必要ないかもな」

「分かりきったことを。あたしは、家のことなんかで変わったりしないわ」

「お兄様が隣に居るのなら、変わっても変わらなくてもいいの」

「そうですわね。レックスちゃんあってこその、ブラック家ですもの」

「確かに。兄さんが居なければ、もっと悪かったでしょう」


 本当に、俺が居なければまとまらないような気がしてきた。というか、俺以外のことを気にしていないようにすら思える。


 それが真実だとすると、今の家族は相当いびつな関係だ。この問題は、慎重に扱うべきだろうな。


「なら、急ぎすぎないようにしないとな。その結果が、今回の事件なのだろうから」

「そうですね。僕も反省すべきところです。今度こそ、失敗はしません」


 そうだな。俺だって反省するべきところだ。結局、みんなのことを信じきれていなかった。それが、最大の問題なのだろう。大切な人は信じ続けると誓ったはずなのにな。


 まあ、厳密には信じる部分が違うのだが。俺はみんなが絶対に裏切らないと信じている。そこと能力の話は、また別だものな。


 それに、盲信だって問題なのだから。負担をかけすぎて潰れさせるのは、愚かという言葉ですら軽い。


 だから、結局はバランスの問題だよな。最終的には、みんなをもっと理解するべきだという結論になる。


 ということで、ジュリア達とも話をする。みんながどの方向を向いているか、ちゃんと知るために。


「ジュリア、シュテル、サラ。お前達から見て、ブラック家はどうだ?」

「悪くはないかな。でも、きっともっと良くなると思う。なにせ、レックス様がいるからね!」

「もう、ジュリア。レックス様がいる時点で、最高に決まっているでしょう」

「レックス様がいるところが、良いところ。悪いところは、レックス様から遠いところ」


 過大評価とも思ってしまうが、まあ恩人だものな。あまり悪くは言えないか。それだけでなく、確かに慕われているのだろうが。


 それにしても、サラの言葉はどういう意味だろうな。俺とサラの距離が近ければ良いという意味か、あるいは、俺の目が届いていない場所に問題があるということなのか。


 どちらにせよ、やるべきことは同じか。サラを含めたみんなのことをよく見て、言葉をしっかり聞く。それが大事になるはずだ。


「ずいぶんと期待されたものだな。だが、できる限り応えたいところだ」

「そう言ってくれる人だから、大好きなんだよね! これからも、頑張って手伝うから!」

「ジュリア、大好きってその……。いえ、私も大好きですけど」

「もちろん、私も大好き。だから、撫で撫でも抱っこも譲らない」


 ありがたいことだ。胸が暖かくなる感覚があるな。その想いを力に変えて、みんなに後悔させない未来をつかんでみせる。みんなと手を取り合って、その先で。


 まずは、俺の気持ちも伝えないとな。相手に気持ちが伝わることは、当たり前じゃないんだから。


「ありがとう。俺も、お前達が大好きだ。お前達が幸せに過ごせるように、努力するよ」


 そう言うと、とびっきりの笑顔で返してくれた。この笑顔が未来でも見られるように、頑張っていこう。もちろん、みんなと協力して。


 大切な誰かと一緒にいることこそ、俺の幸せなんだ。それは、どんな未来でも変わらないのだから。

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