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物語の途中で殺される悪役貴族に転生したけど、善行に走ったら裏切り者として処刑されそう  作者: maricaみかん
6章 ブラック家の未来

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191話 任せるべき仕事

 ジェルドを信用することに決めたので、どう使うかを考えていく必要がある。とはいえ、こっちで勝手に決めるのも問題だろう。


 どう行動するにしても、本人の意志は重要だ。ということで、俺達が考えていることを説明しないとな。


 ブラック家は、今後どういう形で活動していくのか。その方向性だけでも、伝えておきたい。とはいえ、俺は大枠を決めて指示をしただけで、形にするのはジャンとミルラなのだが。


 まあ、集団における頭の役割というのは、何をするかを決めることだ。そして、適切な相手に任せることだ。最後に、ちゃんと評価して報酬を渡すことだ。


 ジャンにしろミルラにしろ、あまり多くを求めない人であるからな。報酬をどうするのかは、難しいところだ。極端な話、褒め言葉だけで満足しかねない雰囲気を感じる。そして、あまり物欲を感じないんだよな。だから、本当に難しい。


 ジェルドは、そのあたり分かりやすい。金を積みさえすれば、納得しそうな雰囲気がある。まあ、ミルラとジャンの見立てから判断しただけなのだが。ただ、正しいのなら楽だよな。


 適切な報酬は、ミルラとジャンなら簡単に分かるだろうし。俺は、その言葉に従っているだけでいい。


 まあ、まずはジェルドにどんな仕事を任せるかを、先に決めてしまわないとな。すべてはそこからだ。


「ジェルド、お前に、今後のブラック家における基本的な方針を伝えたい」

「かしこまりました。当方がお力になれるように、粉骨砕身いたします」


 そう言って、頭を下げる。なんというか、新鮮だよな。いや、雇い主に頭を下げるだけのことなのだが。それでも、これまでは見てこなかった気がする。なぜだろうな。


 いや、どう考えても簡単な理由じゃないか。俺が当主じゃなかったからだ。これまでの知り合いは、大体が友達みたいな関係だからな。メイド達の上役ではあるものの、家族みたいに接してきたつもりだし。


 雇われといえば、フィリスとエリナは俺というかブラック家に雇われていたのだが。それでも、師匠としての立場があったからな。結局、俺が上である関係というのは、あまりなかった。


 これは、少し怖いな。自分の意志で相手の運命を左右できるという感覚は。おぼれないように、気をつけないと。


「ああ。ミルラ、ジャン、頼む」

「まずは、レックス様が動かしている計画である、学校もどきでございますね」


 これを取りやめることは、考えていない。止めるのがもったいないからというより、今後のブラック家の方針を示す上で、絶対に必要なことだからな。


 これからのブラック家は、できるだけ人材を大事にする。それを、学校もどきを通して伝える。それが、大きな目的だ。


「ああ、聞いております。なんでも、今年にアストラ学園への入学者を、3名も出せたのだとか」

「そうだな。ジュリア、シュテル、サラの3人だ。お前も、近いうちに顔を合わせることになるだろう」

「当然のことですが、いま計画を止めてしまえば、すべては水泡に帰します。僕としても、続けたいですね」

「集めた生徒を解放するにも、金がかかりますからね。当方としても、納得できます」

「そうだな。捨て子同然の生徒も居る。故郷に帰すのだって難しいだろう」


 ジェルドは何度もうなづいている。これがゴマすりの類でないのならば、あまり心配しなくてもよいのだが。実際のところ、どうなのだろうな。今はまだ、何も分からない。まあ、今後知っていくべきことだ。急ぎすぎても、失敗するだけだよな。


「納得いただけたようなので、次の話へ移らせていただきます。周囲との関係でございますね」

「基本的には、お互いの利になる取引を、という方針ですね。これまでのように、上から押さえつける方向性ではありません」

「それは、鉱石を輸入し、加工して売り出すような……?」

「似たようなものです。こちらも相手も欲しいものを手に入れる。それを旨としたいですね」

「相手の欲しいものと自分の欲しいものを、しっかりとすり合わせる。そこが基準となるはずでございます」


 いわゆるwin-winを目指すということだ。目指したからといって、すぐに形になるものではないだろう。だが、ブラック家は変わったと伝える上で、良い方向性だと思う。


 とにかく、これまでのブラック家は、力で問題を解決するばかりだった。これからは、できるだけ融和を基本にしたいところだ。


 だからといって、相手が俺の大切な人を傷つけようとするのなら、その時は力を示すだけではあるが。話し合いで解決するのは、確かに理想だ。だが、現実はそうはいかない。だから、力だって大切な要素なんだよな。


「それでしたら、お互いの領地が発展することが見込めると。なるほど」

「ああ、そういうことだ。これまでのブラック家は、敵を増やしてきた。だから、すぐに結果は出ないだろうがな」

「続いての方針ですが、領内の治安維持ですね。これには、相応の武力が必要になります」

「レックス様やジャン様、メアリ様やカミラ様がいらっしゃいますので、求めるのは個人ではありません。主に、手数となります」


 まあ、俺クラスの人間が複数いるのなら、複数個所で大きな問題が同時に起こっても解決できる。その利点は、確かにある。


 だが、あまり力を持った人間は、裏切られた時のダメージが大きい。俺の贈ったアクセサリーの防御魔法を突破できる人間は、少なくとも今は雇わないだろうな。


 もちろん、カミラやメアリなら、簡単に破れはするのだろうが。とはいえ、その2人は上澄みも上澄みだ。そのレベルの人間は、そもそも探したところで見つからないんだよな。それに、2人は信頼できる相手だ。だから、なんの問題もない。


「ただの兵卒から、一般的な魔法使いあたりが、求めるラインになるだろう」

「個人の力が必要な場面でしたら、いま挙げた方々が動けば事足りますので」

「なるほど。そうなると、指揮官も必要になるでしょうね。当方が力を発揮できる部分かもしれません」


 本人は乗り気のようだし、任せてみても良いかもな。まあ、しばらくは監視が必要だろうが。できれば、気づかれない形で。


 まあ、闇魔法を込めた道具を、どこかに仕込んでおけば良いか。それで解決する問題だ。


「そうかもな。人をうまく動かす技術が、求められるだろう」

「僕が兵を直接指揮するのは、問題が多いですからね。ミルラさんは、軽く見られるでしょう」

「同感でございます。力に生きる人間は、力を持たぬものを軽視する傾向にありますから」


 ジャンには、もっと大きな仕事を任せたい。いや、治安維持は大きな仕事なのだが。ただ、家を傾かせるかどうかを左右するレベルの問題に、優先的に当たらせたい。


 そう考えると、優先順位は低くなってしまう。盗賊が何度も現れるのなら問題だが、今はそういう状況ではないからな。最低限のラインは保たれている。それなら、ジャンは別のところに当たらせたい。


「少し強い程度の魔法使いでも、十分な運用ができると。でしたら、当方には合っているでしょうね」

「なら、一度試してみるか。失敗するにしろ、緊急時でない時に問題を表面化させておきたい」


 ということで、まずはジェルドに任せることに決めた。今後どうなるか次第で、また方針を変えることもあるだろう。とはいえ、まずは始めてみないとな。すべては、そこからだ。

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