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物語の途中で殺される悪役貴族に転生したけど、善行に走ったら裏切り者として処刑されそう  作者: maricaみかん
5章 選ぶべき道

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166話 覚悟を決めるために

 今日は、父を殺す計画の当日だ。国王に計画を説明されてから、しばらく経った。その期間は、心の整理をつけるために使っていた。


 どうせ、真正面からぶつかれば絶対に勝てる相手だからな。実力面では、あまり心配していない。ちゃんと戦えば、まず負けないだろう。


 つまり、俺のやるべきことは、実力を向上させることではなく、実力を発揮できるようにすること。その方針で、計画までの時間を過ごしていた。


 俺とジュリアは、王女姉妹に呼び出されて、計画前の最後の話をしていた。今回は、王宮には呼ばれていない。アストラ学園の中だ。理由は、簡単に分かる。俺が襲撃する日だと、気づかれないためのものだろう。


 とはいえ、お互い、状況の確認は必要だ。送り出されることも、迎えられることも、どちらも大事になるだろうな。


 計画がいつ始まって、いつ終わったのか。それを王女姉妹が知って、国王に伝わるという流れ。そのための中継点になるのだろう。


 つまり、王女姉妹と話をするのも、計画の一部だということだ。


「レックス君、いよいよ今日ね。最後に聞くけど、大丈夫かしら?」

「私達のせいなんですよ。もう少し、言い方ってものが……」


 ミーアは普通に心配してくれているだけだと思うが。まあ、王家からの依頼なのだから、王女姉妹のせいというのも、間違いではないのだろうが。


 ただ、ふたりが責任を感じるべきことではないだろう。ろくでもないことを企んだ父が悪い。それだけだ。


「ミーアらしい物言いだと思うがな。俺は、何も問題ない」

「帰っちゃったフェリシアちゃんとラナちゃんも、レックス君を気にしていたわよ」


 そうなんだよな。俺が心を整理している間に、フェリシアとラナは実家へと向かっていた。ふたりにも、何か用事があるのだろう。まあ、今後のための話だと思うが。


 ブラック家に大きく動きがあるのだから、フェリシアのヴァイオレット家にも、ラナのインディゴ家にも影響がある。つまり、ふたりのこれからにも関わってくるんだ。


 願わくば、これからも仲良くできるようにと。それだけではある。もし、それぞれの家の当主の方針

がブラック家に敵対するものなら、俺達の関係は大きく変化するだろうからな。何もなければ、それが一番ではあるが。


「レックスさん、無理はしないでくださいね。あなたが無事に帰ってくるのが、一番なんです」

「まあ、レックス様なら勝つとは思うけどね。ただ、心配だよ」


 実際、普通に戦えば俺が勝つだろう。それは、まず確実だ。人質を取られてすら勝てそうだと思える。ただ、油断は禁物だよな。ジュリアも同行するのだし。それに、メアリやジャンを巻き込みたくもない。


「いまさらだな。お前は、俺の強さを確かめておけば良い」

「私が言うのもなんですけど、悩みならいつでも聞きますからね」

「そうね。私も同じ気持ちよ。レックス君が苦しい時は、そばに居るわ」


 王女姉妹は、俺に気づかってくれている。その気持ちが嬉しいから、十分だ。今回の計画が終わったら、ふたりに本音を言うのも良いかもな。いつもありがとうと。


 まあ、まずは計画を確実に実行するところからだ。ためらってしまえば、すべてが終わるのだから。俺は王家に悪感情を抱かれるし、下手をすればジュリアにも危険が及ぶ。間違いなく、良い未来にはならない。


 だからこそ、苦しくても突き進むしかないんだ。今の俺に必要なのは、覚悟だけだ。


「余計なことを気にするな。お前達は、お前達の仕事をしろ」

「もちろんよ。後始末は、私達に任せてね!」

「こちらでできるサポートは、全力でこなしますよ。責任の一端は、私達にあるんですから」

「それで、何をするというんだ?」

「事が起こった後の混乱は、こっちでどうにかするわ。レックス君は、勝敗だけ気にすればいいの」


 まあ、王女姉妹にできることには、限界があるだろうが。それでも、支えようとしてくれるだけで感謝したい。


 やはり、俺を大切な友達として扱ってくれている。だから、その想いに応えなきゃな。


「ハンナさんやルースさんにも、手伝ってもらいますよ。使える手は、何でも使います」

「そうか。変なことはするなよ」

「もちろんよ。レックス君が困ったら、私も困るもの」

「どの口が言うんですか……。でも、レックスさんが一番大事なのは、事実なんです」

「現場では、頑張ってレックス様を支えるよ」


 ジュリアの様子を見る限り、かなり気合いが入っているな。空回りしないように、気を配っておかないと。危険な目に合わせてしまえば、後悔では済まないのだから。


「大きな声では言えないけど、よろしくね、ジュリアちゃん」

「見届けろと言われたでしょうけど、ジュリアさんが手伝っても、目こぼしはされます。そういうことになっていますから」


 王家の方でも、色々と配慮をしてくれているのだな。難しいことを言ったとは思われているのだろう。


「余計なことを……。これは、俺がやるべきことだ」

「なら、頑張ってね。どんな未来になっても、私はレックス君の味方よ」

「そうですね。姉さんはともかく、私は、王位継承からは遠いですから。好き勝手できるんですよ」

「僕なんて、ただの平民だからね。どこでも生きていけると思うよ」


 俺が失敗したとしても、味方で居てくれる。そう言ってくれる相手だからこそ、大切にしたいんだ。そのための苦痛にだって、耐えようと思うほどに。


 本音を言えば、今でも少しは迷いがある。それでも、覚悟を決めようと思える。それは、俺を尊重してくれる相手のため。


 やはり、俺はひとりでは生きられない人間なのだろうな。いや、考えるまでもないことだ。そんな人間だから、悪人である父を殺すことに悩んでいるのだから。


「まったく、気ままなやつらだ。だが、らしいのかもな」

「そうね。私達が協力すれば、何だってできるはずよ。だから、安心してね」

「姉さんって人は……。でも、私達が手を組めば、きっと無敵ですよ」


 そうだな。だから、必ず理想の未来をつかみ取ってみせる。俺の本当の理想は、すでに終わっているのだとしても。少しでも、みんなが幸せに近づくように。


「気楽なものだ。まあ、そのくらいの方が生きやすいのかもな」

「レックス君、準備はいい? 言いたいことがあれば、聞くわ」


 いま言いたいことを言ってしまえば、決意が弱まる気がする。だから、後の楽しみにしておこう。今から始まる嫌なことを、少しでもごまかすために。


 それに、王女姉妹に悪感情をぶつけたくない。何かを言葉にすれば、つい恨み言が口から出てしまうかもしれない。それは、絶対に嫌だからな。俺は、親しい人を傷つけたくないのだから。


「問題ない。ジュリア、お前の準備はできているのか?」

「レックス様が大丈夫なら、僕も大丈夫だよ」

「なら、行くぞ」


 さあ、いよいよ始まりだ。覚悟を決めろ。みんなとの、素晴らしい未来のために。

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