表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
物語の途中で殺される悪役貴族に転生したけど、善行に走ったら裏切り者として処刑されそう  作者: maricaみかん
4章 信じ続ける誓い

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

121/571

120話 試行錯誤の中で

 誰かと連携をする上で、俺が働かなくても問題で、全力を出しても問題になる。今の俺は、壁に居るのだと感じるな。というか、敵を倒すだけなら、どうとでもできるのだが。


 どうせなら、お互いが全力を出して、1+1を4にも5にもしたい。そんな思いはある。今のままなら、1.5がせいぜいだろうからな。それじゃあ、もったいないよな。


 とはいえ、解決策は思い浮かばない。難しいとしか言えないな。まあ、経験を積み重ねていけば、いずれは、どうにかなるのかもしれないが。


 ただ、自分でも何かがしたいという気持ちもある。余計なことにならないのなら、力を尽くしたい。


 相変わらず、授業は親しい人とダンジョンに潜る流れだ。だから、いろいろと試せるだろう。友達はみんな、俺が多少失敗したくらいなら、受け入れてくれる人。そう信じている。


 それにしても、連携には苦労しているよな。この世界に転生して、初めて苦戦らしい苦戦をしている気がする。それが他の人との協力なんて、少し恥ずかしいな。なんというか、対人能力に難があるような感じで。


 まあ、仕方のない部分もある。どうしても、俺と周囲には力の差があるからな。良くも悪くも、対等ではない。同じ役割をみんなでこなす、なんてやり方は無理なんだ。


 それでも、みんなで協力することで強くなれるのなら、最高だ。それを目指したいのが、本音ではある。


 今回のパーティは、俺とミュスカ、ルースとハンナだ。すでに3人で和やかに話している様子で、ミュスカのコミュニケーション能力が伝わってくる。


 俺は、友達が限られているからな。まあ、あの言動で仲良くできるみんなが素晴らしいだけで、遠ざけられるのが当たり前だとは思うが。


 よく考えたら、ブラック家で、口が悪くて、それで大勢に慕われるのは無理筋だったよな。今更だが、気にしても仕方がないことを、気にしすぎていた。


 ミュスカ達もこちらに気づいた様子だし、話に入るとするか。


「今回は、私達とだね。よろしくね、レックス君」

「わたくしめは、負けませんよ。レックス殿、貴殿よりも強くなるのですから」

「そうでしてよ。あたくしの強さを、あなたに刻みつけてあげるわ」


 こうして張り合ってくれる存在は、とてもありがたい。恐怖で遠ざけられていたから、余計に思うことだ。だからこそ、今の関係は大事にしたいところだ。これから先、うまく連携できるようになれば、それが理想だよな。


「血気盛んなことだ。まあ、お前達がしおらしければ、気持ち悪そうだ」

「もう、女の子にそんなこと言っちゃダメだよ。レックス君、気をつけてね」

「あたくしは、気にしていませんわよ。むしろ、女らしくしろと言われた方が腹立たしいもの」

「同感ですね。わたくしめも、力を軽んじられることだけが、許せません」

「私も気持ちは分かるけどね。レックス君には、負けたくないんだ」


 みんながどこまで強くなるのか、楽しみだよな。誰もが強い目をしているから、本気なのだと理解できるし。


 そんな相手だからこそ、俺も本気で向き合いたい。全力で、ぶつかっていきたい。みんなと競い合う時間は、きっと楽しいだろうから。


「なら、努力を続けることだ。無論、俺だって遊んでいるつもりはない」

「まったく、少しくらい才能におぼれた方が、可愛げもあるものを……」

「そうですかね? わたくしめは、好感が持てる姿勢だと思います」

「レックス君が頑張っているのは、私も分かるな。だから、負けたくないんだから。ただ才能だけの人なら、違ったよ」

「うるさいやつらだ。そろそろ行くぞ」


 ということで、ダンジョンへと入っていく。とりあえずは、仲間も魔力で防御して。すると、丘のてっぺんみたいなところに出て、周囲を魔物に囲まれていた。


 今みたいな状況で手っ取り早いのは、東西南北をそれぞれが担当することだろう。それなら、全員が全力を出せるはずだ。


「さて、適当に片付けるとするか。俺はこっちだ。無音の闇刃(サイレントブレイド)!」

「何も相談せずに動くんじゃなくってよ! 仕方のない人だこと! 爆殺陣エクスプロードスフィア!」

「わたくしめ達も、続きましょうか。閃剣(テンペストブレイド)!」

「レックス君らしいなあ、もう。行くよ。魔力奪取(ブラックシーフ)!」


 ということで、みんながそれぞれの方向に突っ込んでいく。そして、自分の魔法を発動していく。俺は魔力を剣にまとわせて斬る。ルースは敵を魔力の膜で包みこんで、その中で爆発させる。ハンナは魔力の剣を大量に生み出して降らせる。ミュスカは、相手の魔力を奪って自分の魔力ごとぶつける。


 今回も敵はザコばかりだから、順調に片付いていった。ボスは、俺が進んだ方向に紛れ込んでいたので、斬り殺した。まあ、苦戦するほどの相手じゃなかったな。


「さて、終わりか。簡単なものだったな。やはり、大した敵はいない」

「だからといって、連携を軽んじるものじゃなくってよ。これなら、個人で動いているのと大差ないんじゃなくって?」

「同感でありますな。連携というより、分断というか」


 まあ、相乗効果があったかと言えば、なかった。お互いが邪魔をせず、全力を発揮できるだけでも、以前よりは進歩しているのだが。


 ただ、状況次第では使えない戦術だからな。そうなると、もっと高度な連携が必要だという意見も、納得だ。というか、俺自身も同じ意見ではあるんだよな。良い案が思いつかないだけで。


「まあ、これから時間もあるからね。ゆっくり、合わせる訓練を進めていこうよ。私達なら、きっとできるよ」

「ふむ。難しいものだな、連携というものは。俺の経験した中で、一番苦戦しているかもな」

「それが嫌味ではなく本音なのが、腹立たしいことね。レックスさんらしいけれど」

「レックス君、なんでもできちゃうからね。人と仲良くすること以外は、なんでも」


 まあ、過分な褒め言葉だとは思うが。俺にできることと言ったら、闇魔法と剣技くらい。そして、剣技は最高峰ではないんだよな。エリナに認められてはいるが、それだけ。カミラには、剣技だけでは勝てなかったからな。


 というか、人と仲良くできないのは致命的じゃないか? 否定できない事実なのが、悲しくはあるが。友達以外の人間とは、日常会話すらできないからな。あまり、好ましい状況とは言えない。


 だが、最悪から考えたら、かなり良い状態でもある。俺の言動で友達になってくれる人が居るのは、奇跡と言ってもいいだろう。


「それでも、わたくしめ達とは、仲良くしていると言っていいですからね……才能にも、困ったものです」

「仲良しこよしに興味はないわ。レックスさんに勝って初めて、あたくしめの全ては始まるのよ」

「そうだね。とても難しいだろうけれど、同じ気持ちだよ。レックス君を、ひとりぼっちにはできないから」

「せめて、追いすがりたいものでありますな。突き放されるのは、ごめんです」


 こうして、追いかけてくれる。それだけで、心が満たされるようだ。実際、みんなは口だけではないというのは、今までの行動で分かっているからな。


 俺の側も、みんなに恥じないような実力を身に着けて、高度な連携も扱えるようになって、先に進んでいきたいものだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ