プロローグ 始まりは突然に
初投稿です。
プロローグ 始まりは突然に
バンッと大きな音がして、目の前にいる仲間の頭から鮮血が飛んだ。ゆらりと彼の体が横に倒れた。銃だ。伏せろ。そう言葉を発そうとした瞬間、どこからか銃が連射された。降る雪のせいで相手の姿も見えないまま、次々と仲間が倒れていく。身を伏せて、木のような植物の後ろに隠れた。じっと銃声がやむのを待った。仲間の骸が見つめているような気がした。
そして、銃声がやむのを合図に、少年は全力で走り出した。
20☓☓年、化学産業が著しく発展した地球では、人々が豊かに、そして穏やかに過ごしていた。それにも関わらず、謎の物体の出現を境に人々は混乱と混沌に陥られてしまった。
以下の文は、日本政府・ハコ庁が、日本国民全員に向けて送ったメッセージである。
「題名:調査隊員募集中
このメッセージは20☓☓年、〇月△日ハコ庁からである。これから綴ることを日本国民が知っているのを承知の上でもう一度ハコについて語ろう。
では以下の有名な小説家が執筆した本、「ハコ」の引用文を読んでほしい。
九月十五日、満月の夜、日本列島に謎の物体が突如発生し、日本に大きな影を落とした。その出来事は世界中で話題となり、怪奇現象、不吉な出来事の前兆と噂されたが、結果何も起きることはなかった。
しかし、それからというもの満月の日に必ず一つ、あの夜と同じような大小さまざまの黒い立方体が世界中の陸、海問わず出現するようになった。現在も変わらずそれは起こっていて、そこにあったはずの人や山、海はその物体に吸い込まれるように姿を消している。その物体の素材、発生した原因は不明、入ることも壊すことも動かすこともできなかった。
人々は自分自身が、自分の家が、自分の愛した家族や友人がその物体の中へ消えてしまうことを恐れた。世界は混乱の渦中だった。しかし、各国の政府は具体的な解決策を出すことができなかった。ただ、時が過ぎていた。
やがて、人々はそれを〝ハコ〟と呼ぶようになった。
ハコは今現在も少しずつ、しかし確実に地球の面積を奪っている。そんな中、日本のとある研究員がハコに出入りすることが可能となる薬、デテニィを発明した。ハコが発生してから一四年経ったときのことだった。その薬はすぐに使われたが、ハコの中と外では電波が通じず、ハコの中ではロボットなどを動かすことはできないとわかった。そのため、その薬は実際に人が入るハコの調査に使われることになった。アメリカや中国などの先進国をはじめとして世界中の国が次々とハコの調査に着手していった。
アメリカの調査によれば、ハコの中は旧石器時代の世界のような、緑があり、水や空がある空間で、外側の見た目によらず広さはわからないほどだという。また、所々で強暴な生き物が徘徊していたそうだ。彼らに言葉はなく、動物、といったほうが近く、言葉で言い表すことのできないほどの強暴な化け物だという。
初めて世界にハコが出現してから一四年が経った。これまで世界では計一六八個ものハコが出現している。行方不明者は推定で約九七五人。日本では一六八個の内、三十個と世界で一番多く出現している。
そして、日本でも国内初となる調査部隊を設置することとなった。調査部隊の隊員は一般人を中心に集め、五つの試験を抜けた者のみが参加できることとなっている。対象は十五~五十歳。男女は問わず、目標は五年のハコ滞在と、ハコの中にある物の収集だ。
このメッセージを読んだ君も、ぜひ、立候補してはどうだろうか。」
ハコ庁からのメッセージはここまでだ。
ハコの出現と調査部隊の活躍は多くの若者の心を震わせた。自らが、ハコの正体を突き止めるのだと、立候補者は数十万人にも及んだ。その中に、一人の大きな志を持った少年がいた。世界はまだ、彼を知らなかった。そして、最後まで知ることはなかった。
誰にも知られなかった無名の調査隊員の物語を今、ここに記そう。
「ハコのメモリー~無名の調査隊員とその記録~」プロローグを最後まで読んでくださってありがとうございます!
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