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「今日はいよいよ、職業診断の日だね!」
「ああ。楽しみだな……僕のスキルはどうなるかな。剣士かな? それとも魔法使いかな」
「あ、わたしの順番だ! じゃあ、行ってくるね!」
僕たちは、15歳になったら神様から【天職】を与えられる。
例えば【剣士】の天職を与えられた人は、剣が強くなる。
力とか、目の良さとかが強くなって、普通の人じゃどんなに鍛えても勝てないぐらい、強くなる。
例えば【魔法使い】の天職を与えられた人は、急に頭が良くなる。
普通の人には理解できない魔法の公式がスラスラ解けるようになる。
魔族との戦いで魔道士として前線に立つ人もいれば、魔道具の製作に携わるようになる人もいる。
祭壇の上では、幼なじみの女の子が神官様から神託魔法を受けている……
ちなみに神官様になるには【神仕】の天職が必要らしい。
「では、少女よ。これより天職を授ける……おお、おお! 素晴らしい! お主の天職は【聖騎士】である!」
神官様の言葉を聞いた大人達が、驚きの声を上げて、教会が騒がしくなった。
よく「天職に貴賎はない」と大人達は言うけれど、本心ではやはり「良い職業」と「悪い職業」があるのだろう。
それにしても、聖騎士かぁ……あいつ、遠いところに行っちゃったなぁ。
彼女は祭壇の上でこちらに向かって笑顔で手を振っている。
僕は複雑な気持ちで手を振り返した。
「では、次の少年。君の番だ」
「はい!」
聖騎士の衝撃が収まらないまま。彼女に注目が集まったまま、誰にも見向きもされない状態で僕は祭壇に上がる。
僕も同じぐらいすごい職業に……そうでなくても、せめて、あの子の隣に立てるぐらいの職業に……!
神官様の前で目を閉じて、手を合わせて祈る。
「では、少年よ。これより天職を授ける……おお、おお? ん、あー……えっと、き、君の天職は【こそ泥】だ、そうだ。まあ、強く生きたまえ」
彼女とはまったく正反対の反応を、大人達は示した。
軽蔑するような。汚いものを見るような。天職の内容を聞くまでもない。その視線が全てを語っていた。
「ま、まあ安心したまえ少年よ、こういう天職こそが案外、前線で活躍……」
神官様が何か言っているけど、耳に入ってこない。なにもかもが恥ずかしくなった。
ある研究者は言っていた。「心の清いものほど高潔な天職に就くのだ」と。つまり僕の魂は汚れている。
僕なんかが、彼女の隣に立つことはできないんだ。
僕の足は勝手に動き出して、その場から逃げ出した。
「あ、待ちたまえ、少年!」
「待って、どうしたの!」
神官様と幼なじみの子の声を振り切って、とにかくこの場から逃げることを考える。
皮肉なことに身体が軽い。人の隙間を縫うように身体が動く。気がついたら僕は教会の外にいた。
青空で輝く太陽が「お前の居場所などない」とでも言うように、僕をさんさんと照らす。
こんな明るい場所は、こそ泥の僕には相応しくない。
こんな綺麗な街は、こそ泥の僕には相応しくない。
「そうだ、戦場に行こう」
僕みたいな汚れた心を持つ人がこの街にいたら、みんなが迷惑をしてしまう。
だから僕は旅に出ることにした。
魔族との戦争が続く最前線へ。後先なんて考えずに僕は生まれ育った街を……捨てた。