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3-9 バンス(バンス視点)


 サイモン山の洞窟だった。

 ここは以前、スティナウルフどもが巣にしていたらしい。

 まだ埋め立てられていないその巨大な穴を、アカツキ団がアジトとして使っている。

 俺の名前はバンス。

 アカツキ団の団長やっているぜい。

 ここはいっちょ教えてやろうか?

 アカツキ団って言うのはな。

 傭兵狩りを倒すと謳っているが、実際はその逆。

 傭兵狩りの集まりなんだ。

 つまりアカツキ団は黒幕であり。

 悪の組織。

 そして俺は、一番偉い。

 誰も俺に逆らうな。

 逆らう者は首をちょんだ

 テーブル前の大きな木箱に腰かけて、俺はタバコを吸っていた。

 テーブルの上にはビールの入った樽ジョッキ。

 朝からのタバコと酒は、最高だぜい。

 ぎゅほほほほほ!

 Cランクの女傭兵二人が、俺の肩や太ももを揉みしだいている。

 本当はこの女たちと盛りたいんだぜぃ?

 だが今はちょっと、やる事があるんでな。

 洞窟の右手の方の壁に整列しているEランクの三人の傭兵たち。

 両手を腰の後ろで、縄で縛られている。

 上手く歩けないように両足も縛られている。

 男が二人、女が一人。

 俺は右手を上げて、ギュネスに命じた。

 ギュネスという名前のこいつは俺の右腕。

「ギュネス、Eランクの傭兵は役に立たねえ。殺してスキル書に変えろ」

「へい」

 長身のギュネスが持っているムチを両手にピンと張る。

「や、やめてください! 俺たちを殺すって言うんですか!?」

「俺たちは、俺たちは傭兵狩りを倒すために集まったんじゃないんですか!?」

「なんなの!? なんなの一体!?」

 困惑しているEランクども。

 俺はカエルのような腹を揺らして言った。

「Eランクなんていう弱い傭兵に、人権はねい!」

「そ、そんな!」

「さ、さては、お前が傭兵狩りだったんだなあ! バンス!」

「そんな、そんなのって、有り!?」

 ぎゅほほほほと俺は笑った

 こいつらは世界一の馬鹿どもだ。

 傭兵狩りを倒そうと思って入った団は、傭兵狩りの団だった。

 そしてその団からも不要と見なされて、抹殺されようとしている。

 俺はタバコを吸って煙を吐いた。

「お前らはよお、母ちゃんの股を出てきた時から、地獄に行く運命だったんだぜい? ぎゅほほほほほ!」

「地獄!?」

「地獄に行くのはお前だ! バンス!」

「い、いやだあ私、いやあっ!」

 一人生意気な男がいるなあ。

 まあ良い。

 これからたっぷり地獄を見せてやるぜい。

 俺は腹をでっぷりと揺らした。

「おい、Eランクの女! これからは、自らの行いを悔い改め、心から反省し、俺の足の指舐め係として働くと言うのならば、助けてやらんでもない。さあ、どうする?」

「あ、足の指舐め係?」

 戸惑ったような女の声。

 俺は右足の靴を脱いだ。

 むわっとした臭気がそこから漂う。

「ぎゅほほほほほ、俺の足は、とびきり臭えけどなあ!」

「ふっ、ふう、ふう、ふうっ」

 女が動揺したように息をもらしている。

 やがて覚悟が決まったのか、媚びるように言った。

「足舐め係、やらせて、いただきます!」

「おい、エリー!」

「エリー!?」

 他のEランクの男二人がびっくりしたように叫んだ。

 エリーが叫ぶように言う。

「死ぬよりましじゃない!」

 俺はギュネスに命じる。

「おい、エリーの縄を解いてやれ」

「へい」

 ギュネスが女に近づいて、ベルトからナイフを取り出した。

 手と足の縄を切る。

 その場に崩れ落ちるエリー。

 顔は青ざめており、ひきつっている。

 良い顔だなあ!

 俺は右足を突き出した。

「エリー、舐めろ」

「は、はい」

 ギュネスがエリーの背中にムチを打つ。

 バチンッ。

「あうっ!」

 エリーがたまらず悲鳴を上げた。

 ギュネスが叱り飛ばす。

「はいじゃねえ! かしこまりましたバンス様、だろうが!」

 エリーの両目が湿気を帯びる。

「か、かし、こま、りました。バンス、様」

 バチン!

「あうっ!」

「もっと媚びろ!」

「媚びろ? 媚びろって?」

 バチン!

「ああうっ!」

 女は痛さに負けたのか、地面に頭をつけた。

「自分で言葉を考えろ! どんなふうにもてなしたら、バンス様が喜ぶのか、Eランクの傭兵の無い頭で考えろ!」

「は、は、はい!」

 エリーが顔を上げた。

 ぎこちない笑みを浮かべて俺を見る。

「バンス、様、足を、舐めさせて、いただきます」

 バチン!

「ひやう!」

「もっとだもっと!」

 ギュネスは鬼だな。

 まあ、こいつは俺が躾けたんだけどよお。

 エリーの背中には血が滲んでいた。

もう服の背中の部分はボロボロだ。

 彼女は言う。

「……バンス様。どうか、どうかこのエリー目に、足の指をなめさせてやってください」

 バチン!

「いやううっ!」

「もっと!」

「……バンス様、どうか、この通りです。エリーに足の指をなめさせてやってください。そして、どうか気持ちよくなってください」

 縄でつながれているEランクの男二人が目を剥いている。

 鼻息を荒くしている。

 信じられない光景を見た時の顔だ。

 絶望がそこにはあった。

 良い~面だなあ~。

「ぎゅほほほほほ!」

 俺は天井を見上げて哄笑した。

 バチン!

 ギュネスのムチがエリーの背中を再度襲う。

「うあううっ」

「もっとだ!」

「……バンス様、どうか、どうかこのエリー目に、足の指をなめさせてやってください。私の舌で、足のアカを綺麗にさせてください。そしてどうかどうか、気持ちよくなってください!」

 バチン!

「うあああううう!」

「もっとだああああ!」

 ギュネスの叫び声。

 エリーはすっかり媚びた豚女のような顔になった。

 よーし、よーし。

 いい顔になってきたなあ。

 エリーはその顔に笑みすら浮かべた。

「バンス様、お願いいたします。どうかどうか、このエリー目の舌で、足の指を一本一本丁寧にしゃぶらせてやってください。そして足の汚れやアカを、エリー目に食べさせてやってください。そして、気持ち良い気分になってください。そして、そしてその後は、その後は、私の、私の、私の!」

「私の、なんだあ?」

 俺は愉快になって聞いたぜい。

「わ、わ、私の、私の! 私の体を! 自由にもてあそんで! 好き放題に! 楽しいことをして! 使ってやってください!」

「いいだろう! 来い! エリー」

「は、はぁい!」

 エリーが地面を這ってこちらに進んでくる。

 すっかり懐いた犬のような顔だ。

 最高だぜい。

 もうギュネスはムチで叩かなかった。

 エリーは俺の足元に両ひざをつけ、「失礼いたします」と言って両手で俺の足を持った。

 足の指に舌をはわせ始める。

 ベロベロと舐められる足の指。

 くすぐったくて気持ち良いったら!

 背徳感がたまらなかった。

 Eランクの男二人がこちらを見ている。

 荒くて臭い息をついていた。

 絶望のどん底に落ちているような暗い暗い表情をしている。

 最高だぜい。

「ぎゅほほほほ! ギュネス、男二人をスキル書に変えろ!」

「へい」

 ギュネスがムチを両手に構える。

 スキルを唱えた。

「波うねり!」

 オレンジ色の波動をまとうムチ。

 それをふるった。

 ビシンッ! バシンッ!

「があっ!」

「あがあぁぁ!」

 二人の男の首が落ちる。

 血潮を吹いて崩れる胴体。

 胴体が赤く光り、やがて一点に光が集まってスキル書になった。

 ギュネスが近寄ってその二冊を拾う。

 こちらに戻ってきた。

 本を俺に渡す。

「バンス様、これを」

「ん~、どれどれぇ?」

 一冊目はチロリンヒール。

 二冊目は突きの刃。

 俺は顔をしかめた。

 二冊を地面に投げる。

「どちらもEランクのスキルじゃねえか! ……おいギュネス、売れ」

「へい」

 合わせて40万ガリュにもならねえぜ。

 まあいいや。

 ギュネスは本を拾う。

 その時だ。

 洞窟の奥から、ばたばたと足音が聞こえた。

「バンス様、バンス様大変です」

「なんだぁ~?」

 俺は灰になっていたタバコを灰皿に押し付ける。

 団員の男の7人が俺の前に整列して膝をついた。

 真ん中の男が顔を上げる。

「報告します! バルレイツ周辺の、傭兵がいると思しき馬車を襲ったのですが、返り討ちに合いました!」

「なにぃぃ~?」

 俺は眉を寄せた。

 向かわせた団員は十二人いたはずだ。

 それがどういうことだ?

 五人も減ってやがる。

 どいつもDランク以上の傭兵だったはずだが。

 ギュネスがムチを両手に持って張った。

 俺は右手を上げる。

「待てギュネス、罰を与える前に、話を聞いてからだぜい」

「へい」

「よお、お前ら。お前らを返り討ちにした奴らの素性は、もちろん分かってんだろ?」

 先ほどしゃべった男がおびえるように言った。

「は、はいぃ。顔は分かります。男が二人、どちらも二十代前半、あるいは十代後半でした! 名前は、分かりません。残りは女三人、こちらも年は、三人とも十代後半に見えました! 名前は、分かりません! そ、それと、スティナウルフが一頭いて……」

「お前なあ! 分からねえ分からねえじゃ、説明されている俺も分からねえんだよくそがあ!」

 腹立たしさをまきちらす。

「は、はぃ、すいませんっ」

 男が頭を下げる。

 俺は舌打ちひとつ。

 ギュネスを見上げた。

「お前ならどうする? ギュネス」

「十代後半で傭兵をやっている男女はほとんどいません。そいつらは、また仕事を探しにギルドに行くのでしょう。だったら、ギルドから出てきたところを捕らえるのが良いかと」

 長身のギュネスが直立不動で答える。

「ぎゅほっ、それが良いな!」

「バンス様」

 ギュネスが提案した。

「自分たちアカツキ団のメンバーはまだ多くありません。次回はバンス様が出向くのが良いかと」

 俺は舌打ちをする。

「仕っ方ねーなあ、やってやるかあ!」

 足の指をなめるエリーの顔を蹴っ飛ばして立ち上がった。

「痛っ!」

 指が目に入ったのか、両手で押さえるエリー。

 俺は高らかに宣言した。

「団長自ら、出陣だあ!」

「はっ!」

 平伏している男たちの返事。

「ちなみにお前らは、後でムチ百叩きの刑だぜい」

「は、は!」

 俺はべろりと自分の指をなめた。

 相手は男女であり、女が三人もいるという話だ。

 ぎゅほほほほほ!

 男たちには、この世の地獄ってものを教えてやろうか。

 年端もいかない女たちを男たちの前で裸にし、好き放題に可愛がってやる。

 男たちの絶望した顔を想像して、俺は興奮が止まらなかった。

 さあ、仕事の始まりだぜい。


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