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3-1 バーサクの習得

明けましておめでとうございます。皆さま、今年もよろしくお願いいたします。


 その日の夜、自室で勉強をしていたっす。

 勉強とは言っても、スキル辞典を読んでいるだけなんですけどね。

 この本はミルフィにもらいました。

 僕たちのアパートにドルフが来てくれて、わざわざ届けてくれたっす。

 いやー、ありがたいっすね。

 読みながら、僕は「なるほど」と感慨深げにつぶやきました。

 辞典にはスキルのランクアップの流れについても説明が載っていますね。

 スキルをランクアップさせるためには、同じタイトルのスキル書が三冊必要なようです。

 またあるいは、ランクが一つ上のスキル書が一冊必要、ということでした。

 加えて、使用者自身の力が高まって来ると、自然にランクアップすることもあるようです。

 へなちょこパンチの一つ上のスキルは、へっぽこパンチ。

 へっぽこパンチのスキルランクはD。

 これがAランクになると、金剛崩拳になるようですね。

「……覚えたいな」

 辞典のページをはぐっていくと、ノーボイススキルについての説明も載っていました。

 ノーボイススキルは、使用者の意思で発動の有無をコントロールできるそうです。

 僕は両手を掲げました。

 鉄拳が発動します。

 鉄のように銀色に染まったっす。

 これを、意思の力で発動しないようにできる、ということですかね?

 僕は試しに、消えろ、と念じてみました。

 すると両手が元の肌色に戻っていきます。

「なるほど……」

 ノーボイススキルをコントロールしたようです。

 ということなら……。

 僕は立ち上がり、自分のリュックを開けて一冊の本を取り出しました。

 バーサクです。

 まだ売っていないのです。

 辞典には、バーサクはノーボイススキルとありました。

 このバーサクも、自分の意思で発動の有無をコントロールできるということですかね?

 覚えても、良いんじゃないですかね?

 ダメでしょうか?

 ベッドに戻り、辞典をめくってバーサクの項目に書いてある説明をよく読みます。


 ノーボイススキル。

 危険なスキルである。

 戦闘興奮が高まるにつれて発動し、四肢が太くなり、力が何倍にも膨れ上がる。

 代償として、理性が格段に落ちる。

 またバーサク状態が解除されるまで、戦闘をし続けることになる。

 覚える際には、注意が必要である。


 ……。

 覚えたいですね。

 これを覚えれば、やばい敵と遭遇しても、勝てるかもしれません。

 ……。

 覚えたいっす。

 僕はスキル書と辞典を持って、部屋を出ました。

 イヨとヒメの部屋の扉をノックします。

 もう寝ていますかね?

 コンコン。

「何? テツト」

 声があって、少しすると青いパジャマ姿のイヨが出てきました。

「どうしたニャンか?」

 ヒメも顔を出します。

 ピンク色のパジャマを着ていますね。

 首には懐中時計が揺れています。

「テツトー、お化けが怖いニャンか? トイレぐらい一人で行くニャンよー」

 僕は首を振ったっす。

「ちょっとダイニングに来て欲しいんだ」

「何があったの?」

「テツトー、もしかして、お腹空いたニャン?」

「とにかく、とにかく来て」

 そして、三人でテーブルの椅子に腰かけます。

 僕は辞典のバーサクの項目を二人に読んでもらいましたね。

 そして、ノーボイススキルは意思の力でコントロールできることを説明したっす。

 イヨが顔をひきつらせて言います。

「テツト、バーサクは覚えちゃダメ」

 ヒメが首をかしげていますね。

「覚えても良いんじゃないかニャン?」

 イヨがヒメに顔を向けました。

「ヒメちゃん、ダメなの。ほらここに、バーサクは危険なスキルって、書いてあるでしょ」

「んにゃんー、じゃあ覚えちゃダメだニャンよ、テツト」

 ……どうやって説得したら良いものでしょうか。

 口下手なんすよねー。

 僕は言いました。

「覚えたいんだ」

「ダメ」

「ダメニャンよー、テツト」

「でも覚えたいんだ」

「どうして?」

「テツト、理由を言うニャン」

 ……。

 僕はうつむき、小声で言ったっす。

「二人を守りたいんだ」

 イヨの頬が紅潮していきます。

 ヒメが嬉しそうに笑顔を浮かべましたね。

「それなら、バーサクを売って、もっと強い、違うスキルを買うとか」

「んにゃん、それが良いニャーン」

 僕はサイモン山での、オークジェネラルの力を思い出したっす。

 ガゼルの口を引き裂こうとしていたモンスター。

 あの力が、僕にも欲しい!

「バーサクを覚えたいんだ」

 イヨとヒメが黙り込みましたね。

 僕は顔を上げたっす。

 両手のひらを拝むように合わせました。

「お願いっ、覚えさせてっ」

 イヨが両手を胸に組みます。

「どうしても、覚えたいの? テツト」

 僕は頷きます。

「覚えたい」

「どうしても?」

「うん」

「そっか、なら、仕方ない」

 イヨが苦笑を浮かべて、許可をくれました。

 ヒメが両手をわくわくと掲げます。

「テツト、バーサクを覚えるニャーン」

 僕はスキル書を両手に持ちました。

「覚えるよ?」

「うん」

「覚えろ覚えろニャンニャニャン」

 ヒメが体をくねらせます。

「習得!」

 スキル書が光を帯びます。

 茶色い本が消えました。

 僕はバーサクを覚えたようです。

 イヨが早口で言いましたね。

「もし危険なことになったら、スキル除去士に頼んで、すぐにスキルを忘れてもらう」

 スキル除去士が存在するらしいです。

 僕は首肯したっす。

「分かった」

 ヒメが右手で目をこすっていますね。

 眠そうです。

「明日は確か、あたしとイヨが傭兵試験を受けに行くニャンよね」

「うん」

 イヨが頷きました。

 そうなんです。

 イヨはまた、傭兵になるために試験を受けようとしていました。

 ヒメにとっては初めてになるんですかね。

「二人とも、頑張って」

 僕は笑顔を浮かべます。

「うん、だから、今日はもう寝る」

「眠いニャーン」

 僕は頭を垂れました。

「ごめん、夜中に呼んだりして」

「謝らなくて良い」

「そうニャーン。テツト、あたしたちは家族だニャンよ。気を遣うこと無いニャーン」

 二人が優しい言葉をかけてくれましたね。

 そして僕らは解散し、それぞれの部屋に戻りました。

 僕はベッドに横になり、またスキル書辞典を開きます。

 全部読むのにどれぐらい時間がかかるでしょうか?

 かなり分厚い本ですね。

 読んでやる!

 そして僕は夜更かしをしながら、夜が深まって行きました。


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― 新着の感想 ―
[良い点] バーサク使いこなせるといいですね\(^o^)/
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