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2-17 連絡と追跡


 バルレイツの夜道をひた走る僕。

 全力に近い速度です。

 フェンリルのいる農場まで、測った訳じゃありませんが20キロメートルはあるっす。

 到着まで、一時間近くはかかりそうですね。

「はあ、はあ、やっぱり飛び出すんじゃなかったかなあ……」

 心が弱気になってきます。

 第一、カローネ農場に馬はいなかったんですかね?

 いた気がしますね。

 馬に乗れればもっと早く移動できるのに!

 だけど、僕は乗馬なんてしたことが無いです。

 他に良い方法は無かったんですかね?

 電話があれば良いのに!

 考えても仕方ないっす。

 今はただ、ひたすらに走るしかないのでした。

「アオーン!」

 ふと、遠くで狼の吠える声がしました。

「え?」

 つぶやいて、立ち止まる僕。

 右手の方の向こうから、ガゼルよりも少し小さいスティナウルフが駆けてきます。

(おい!)

 念が飛んできます。

(お前、テツトだろう? ここで何をしている?)

 やった!

 町の見回りを担当しているスティナウルフに出くわしたみたいです。

 こいつの背中に乗せてもらおう。

 僕はスティナウルフに歩み寄ります。

「スティナウルフか。悪い、フェンリルのいる養豚場まで乗せて行ってくれないか?」

(フェンリル様の所へ? 何があった?)

「行きながら話す。頼む、急いでくれ」

(……分かった。乗れ!)

 スティナウルフが体勢を低くします。

 僕はまたがって、背中の青い毛をしっかりと掴みました。

 立ち上がり、空中に向けて鼻をくんくんとさせるスティナウルフ。

(養豚場の場所は分からん。フェンリル様の匂いをたどる! 走るぞ!)

「頼む!」

 スティナウルフが走り出します。

 僕は上下に大きく揺られたっす。

 振動に耐えるためにスティナウルフの背中に抱き着きました。

(それで、何があった?)

 スティナウルフが聞きましたね。

 僕は声を張ります。

「僕たちのいたカローネ農場が襲われたんだ!」

(魔族が来たのか?)

「いや、魔族に操られた人間の男だった!」

(なるほど、倒したか?)

「ああ倒した! だけど、ガゼルが魔力の匂いをたどって、魔族を一人で探しに行ってしまった!」

(ガゼルが?)

「ああ!」

(ガゼルの鉄砲玉め。一人で行くとは、愚かな……)

 僕はため息をつきます。

 今頃ガゼルは魔族の元にたどり着いているでしょうか?

 魔族はどのくらい強いのだろう?

 ガゼルは無事だろうか?

 心配でした。

「お前、名前は?」

 僕が聞きます。

(ゼクだ)

 どうやらこのスティナウルフはゼクという名前のようです。

 そして。

 ゼクの走る速さはすさまじく、まるで車並みです。

 十五分ほどでその養豚場に到着しましたね。

 豚舎の近くに寄ると僕は下ろしてもらいました。

 入口付近に、フェンリルと他のスティナウルフが集まっていたっす。

 養豚場の従業員も、クワや棒などを武器に持って、その後ろに控えていましたね。

「ゼク! それにテツト、何をしているワン? 敵が来たかと思ったワン!」

 どうやら襲撃者が来たのかと思い、入り口に集まっていたようです。

 僕はフェンリルの前で立ち止まりました。

「どうしたワンか? テツト」

 僕はどこから話せば良いのか、頭の中で考えをまとめます。

「僕たちの担当する場所が、魔族の操る人間の男に襲われたんだ」

「本当かワン? それで、どうなったのん?」

「男は倒したけど、ガゼルが魔力の匂いをたどって、魔族を一人で探しに行ってしまったんだ。フェンリルなら、ガゼルの匂いを追いかけられるだろ? 助けに行ってくれないか?」

 フェンリルが両目を見開き、顔を強張らせました。

「ガゼルのアンポンタンめ! どうして僕に知らせに来ないワンか!」

 フェンリルが数歩歩き、夜空を見上げました。

「アオーン!」

 高々と吠えます。

 その体が白い光に包まれて、小さなスティナウルフに変身しました。

 着ていた新品の紺色の服とスカートが地面に落ちたっす。

 その服は、領主館で事務員として働くためにミルフィからもらったんでしょうね。

 フェンリルがこちらを振り返ります。

 念をくれました。

(僕はガゼルの元に行くワン)

 僕は言いました。

「待ってくれ。僕も行く!」

 フェンリルがゼクに顔を向けます。

(ゼク、テツトを乗せて運んで欲しいワン)

(承知しました)

 ゼクが近くに来て、また体勢を低くします。

 僕はその背中に乗りました。

 フェンリルが他のスティナウルフを振り返ります。

(みんな! 話は聞いてたと思うけど、僕たちはガゼルを追いかけて魔族を倒してくるワン。だから、この養豚場は頼んだワン!)

((かしこまりました))

 他のスティナウルフたちがかしこまったような瞳で念を飛ばします。

(頼んだワン!)

 フェンリルがまた振り返り、夜道を走り出しました。

 僕の乗ったゼクも、彼女を追いかけます。

 さっきよりもスピードが速いです。

 僕は振り落とされないように、ゼクの背中にしがみついたっす。


こんにちは! 評価☆3を一つと☆5を一つもらいました! 嬉しいです。励みになります。これからも頑張るので、よろしくお願いいたします。

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― 新着の感想 ―
[良い点] テツトも緊急時には喋るのだと安心しました\(^o^)/ これからどうなるんでしょう。気になります。
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