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1-15 お岩さま


 翌日の朝。

 山を登っていました。

 ヒメと僕の二人は、ひたすらに山頂を目指します。

「テツト、あたしもう、疲れたニャーン……」

 ヒメが弱音を吐いていますね。

 僕は励ますように言ったっす。

「ヒメ、もう少しで頂上だから、頑張ろう」

「うぅぅ、足が痛いニャンー」

「頑張れ、頑張れヒメ」

 昨日イヨに聞いた話だと、山のてっぺんにはお岩さまと呼ばれるゴーレムがいるっす。

 それもスキルを使えるモンスターということです。

 僕たちはその魔物を倒すために、登っているのでした。

 ゴーレムの落とすスキルがどんなものなのかは知りませんが……。

 スキルを覚えて少しでも戦力を増強したいっす。

 ナザクを倒すために。

 それから、小さな登山道を進むこと10分間。

 頂上の原っぱに出ました。

「ヒメ、着いたよ」

「着いたニャンか?」

 ヒメがよたよたと登り切りました。

 原っぱを見渡します。

 草が生えているだけで、モンスターはいませんね。

 お岩さまがいるはずですが……。

 振り返って、僕は言いました。

「ヒメ、お岩さまが出たら、スローを唱えてくれ」

「スローニャン?」

「ああ、ヒメのスキルだ」

「スローって、どんな効果があるニャン?」

 僕は顎に手を当てます。

「多分、敵の動きを遅くするんだと思うよ」

「敵の動きを遅くするニャン?」

「ああ」

「分かったニャン!」

「よし、それじゃあ原っぱを探してみよう」

「お岩さまを探すニャンか?」

「そうだよ」

 僕は当然と頷きます。

 ヒメは首を振ったっす。

「探すも何も、あそこにいるニャン」

 原っぱの中心を指さしていますね。

 そこに顔を向けると、地面に大きな岩があるっす。

「ヒメ、岩じゃなくて、モンスターだよ」

「テツト、あれは岩みたいだけど、モンスターだニャン」

「本当か?」

「んニャン」

「何で分かるんだ?」

「何でも何も、見れば分かるニャン」

「そ、そうか」

 ヒメには動物の勘が残っているのかもしれません。

 僕は岩に歩いて近づきました。

 どう見ても岩にしか見えません。

 足で蹴ってみます。

「ごぉぉぉぉ!」

 岩が地響きのような音を立てましたね。

 ちょっと怖いっす。

「ほら、言った通りだニャン」

 ヒメが両手を腰に当てました。

 胸を張っています。

 岩がゆっくりと立ち上がりましたね。

 ゴーレムでした。

巨大なモンスターっす。

 両手両足があります。

 僕は両手を構えました。

 拳が銀に染まります。

「ヒメ、離れて」

「わ、分かったニャン」

 ゴーレムの顔が僕を睨みつけたっす。

 かけ声と共に右手で殴りつけてきました。

「ゴウ!」

 僕は右に跳んでかわします。

 地面が大きく削り取られました。

 すごい威力す。

 僕は叫びました。

「ヒメ! スローを!」

「分かったニャン!」

 ヒメがゴーレムに向かって両手を突き出します。

「スローニャン!」

 ゴーレムの体に紫色の輪っかが出現したっす。

「ぐぅぅ」

 ゴーレムが困ったような声でうなりましたね。

 動きが遅くなっています。

 僕は走ったっす。

 ゴーレムの横を通り抜けざまに、足を殴ります。

 ドゴッ!

「ぐぅぅ?」

 全然効いてないっす。

 ゴーレムはゆっくりとこちらを振り返り。

「ゴウ!」

 両手のひらを握り合わせて振り下ろします。

 後ろに跳んでかわしました。

 ボンッ!

 地面には爆発したような亀裂が入り、土埃が舞い上がります。

 強いっすね。

 どう攻めれば良いか分からないっす。

 ふと。

「サクレツダマ」

 ゴーレムが唱えました。

 右手に赤い玉が握られています。

 それを僕に投げつけました。

 スキルでしょうか?

 僕は回避するのですが……。

 着弾した地面の空気が炸裂し、竜巻のような風が巻き起こったっす。

 突風をあび、僕はぶっ飛んで、地面を転がります。

「ぐああぁぁ!」

 受け身も取れませんでした。

「チロリンヒールニャン!」

 チロリン、と音がして、僕の体が少し回復しましたね。

 いつの間にか、ヒメがすぐそばに来ていました。

 僕は立ち上がります。

「ヒメ、ありがとう」

「んニャン!」

 お岩さまはゆっくりとこちらに歩いてきています。

 ヒメが言いました。

「テツト、あいつ顔が弱点だニャン」

「どうして分かるんだ?」

「あいつ、顔の部分の岩が薄いニャン。それに目もあるニャン。テツト、顔を狙うニャン!」

「分かった。やってみる」

 僕はまた走り出しました。

「ゴウ!」

 ゴーレムが右腕を振り下ろします。

 それをジャンプしてかわし、右腕に飛び乗ったっす。

 そのままゴーレムの右腕を駆け上ります!

 僕は唱えました。

「へなちょこパンチ!」

 右拳がオレンジの波動に包まれます。

「くらえ!」

 ゴーレムの顔をぶん殴りました。

「ぐおぉぉぉぉ!」

 ゴーレムが地面に倒れます。

 僕は飛び降りました。

「オコッタ、オコッタゾ!」

 ゴーレムが何がわめいています。

 かなり怖いっす。

 ゴーレムはそれまでよりもずっと俊敏な動きで立ち上がりました。

 左手を振りかぶります。

「ひえぇぇ!」

 僕は逃げるように後退しました。

「オコッタゾ! オコッタゾ!」

 お岩さまは地面の石を掴んでこちらに投げつけます。

 体の紫色の輪が無くなっていました。

 僕は石をよけながら叫びます。

「ヒメ! もう一回スローだ!」

「スローニャン!」

 ゴーレムの体に紫色の輪が出現します。

 動きがゆっくりになりました。

 ……どうする?

 また腕に飛び乗りますかね?

 ヒメが言いました。

「テツト! 足を狙って転ばせば良いニャン!」

「分かった!」

 僕はまた走り出します。

「イカリノゴウケン!」

 ゴーレムが両手の平をあわせて振り下ろします。

 僕はまたぐらに飛び込んで、左足を狙いました。

「へなちょこパンチ!」

 ドンッ!

「ぐぅぁぁ!」

 お岩さまがぐらっとバランスをくずします。

 しかし倒れません。

 僕は連続で足を叩きました。

「このおおおお!」

 どんどんどんどんっ!

「ぐぉぁああ!」

 やがてゴーレムの足が浮き上がり、地面に倒れました。

「テツト、ボコボコにするニャン!」

「任せて!」

 僕はゴーレムの顔に回り、鉄拳で何度も殴りつけました。

「おらおらおらおらっ!」

 ドゴドゴドゴドゴッ!

 ゴーレムの顔がボコボコにひび割れたっす。

「へなちょこパーンチ!」

 ドゴンッ!

「ぐおぉぉあぁぁぁああ!」

 お岩さまが断末魔を上げました。

「はあ、はあ」

 僕は肩で息をします。

「やったニャン! テツトすごいニャン!」

 ヒメが隣に来て、褒めてくれたっす。

 ゴーレムの体が赤い光に包まれます。

 光はやがて一点に集まり、茶色い本になりました。

 僕はゴーレムの背中を歩き、本を拾います。

 タイトルには異国語の文字。

 やはりなぜか読めます。

 炸裂玉。

「強いスキルニャンか?」

 ヒメが後ろから声をかけました。

「うん。さっきこいつが使ったスキルだと思うから、強いよ」

「あたしが覚えても良いニャンか?」

 僕は振り返り、首を振ったっす。

「ヒメ、僕はあのナザクとまた戦って、今度は倒さなきゃいけない。だから……」

「テツト、分かったニャン!」

 ヒメが納得して頷いたっす。

「ありがとう、習得」

 茶色い光に包まれて本が消えたっす。

 僕は炸裂玉を覚えたようでした。

「よし、ヒメ。それじゃあ、帰ろう」

「んニャン! 帰るニャーン!」

 二人でまた、来た道を引き返していきます。


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