表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
91/123

91話:戦士の狂宴-決勝②

 ストリックの強行を逆手に取った、クシャーナの怒涛の反撃。


 ストリックを惑わしたのは、呪具『絶望の断罪マスク』。


 それは視力をほぼ失った、クシャーナの補助装備としての役割を担う。だが固有スキル:『呪物操作(カースマジック)』を操る彼女は、時にそれを一種のかく乱装置として使用する。呪具効果の『付与』を用いた、暗闇の強制。聴覚など他の感覚覚醒の効果はあれど、意表を突くには十分な仕掛けになる。さらには『マンドレイクの指輪』による、大音量の妨害。


 やられる方とすれば、これで正常を保てと言うのが無理な話だ。


 呪具『マンドレイクの指輪』の効果は、呪具効果の拡散。『付与』で一度剥がれた『絶望の断罪マスク』による補助をクシャーナが再確保するための手段。これをクシャーナは一瞬の間に、相手への妨害にもなる組み立てとして利用した。そのノイズはストリックの判断を鈍らせ、その間に生まれるのはクシャーナの詰めの一手。


 水魔法『アクア・ショット』。


 空気中に浮かぶ水分を魔力で固め、定めた対象に集中砲火を浴びせる魔法である。設置魔法ではないが、水の礫を生成する場所がキーとなる魔法であり、その点で言えばクシャーナの狙いは正確だった。脚を止めざるを得なかったストリックを囲むように生み出されたそれは、逃げ道も定まらない彼女を的確に打ち抜いた。


 対するストリックも、ただ無防備に受けたわけではない。


 闇属性のスキル『ブラック・コクーン』。発動から展開までが非常に早い、瞬発性に優れた防御スキルである。それはクシャーナの魔法の威力を軽減することには成功したが、地味に響いたのが魔道具『闇夜の羽衣』の消失。クシャーナの強奪により闇属性への恩恵を得られず、いつも以上のダメージを負ってしまう。


 さらには、呪具『穢れし呪縛精霊の腕輪』による追い打ち。


 属性を変異させる効果と指向性を操るスキルにより、それは光の属性を纏った礫となった。基本五属性とはまた異なる、特殊な属性。調整が難しいそれを、クシャーナはこの大舞台で見事に成し遂げて見せた。自身に有意な環境を瞬時に整え、最高火力をぶつけたクシャーナの猛攻。それだけで仕合が決まりかねない威力を発揮したが、ストリックはまだ立っていた。


 そこも想定済みか、クシャーナの動き出しは早い。


 固有スキル:『天元技宝(ゴールドハント)』による受け身。決して『変容』では受けきれないダメージを負ったストリックは、身代わりスキル『ドッペルゲンガー』の『開放』を余儀なくされていた。固有スキルの詳細までは知らないクシャーナだが、幾度となく交わした対戦経験により、ストリックの耐久値をかなり高い精度で把握していた。


 すでに呪具『絶望の断罪マスク』による効果は、解除されている。


 それでも一つの駆け引きの空振りから、思いがけないダメージを負ったストリックの動きは鈍い。対するクシャーナの動きは軽快そのもの。再び距離を詰め、ストリックの残機を削り切らんと迫る。纏わりつかれることを嫌い、なんとか距離を取ろうとするストリック。


 魔道具『闇夜の羽衣』には装備を隠し持つ、収納能力もあった。


 そこから繰り出される、麻痺や毒などの状態異常を仕込んだ投擲武器は、ストリックの重要な手札の一つだった。それを失えばもはや牽制もままならない。腰や太ももに忍ばせた暗器や闇魔法を見境なく放つが、クシャーナの軽やかなステップがそれを難なくいなしていく。そして、彼女の強みは決して近接戦闘だけに留まらない。


 闇属性スキル『シャドウ・シャドー』による強撃。


 これによりストリックが無理やり稼いだ距離を、クシャーナは魔法で埋めにかかる。呪具『チェインルートの指輪』による強制的な移動阻害。それを意図的に自身の急ブレーキとして利用し、瞬時に攻撃に繋げる。そこから繰り出されるのは、彼女の十八番と言っていい水魔法『アクア・ランス』。呪具効果の増幅分を込めた水の槍は、逃げるストリックをどこまでも追い詰めていく。


 黒のかぎ爪が水の槍を撃ち落そうと、闇雲に振るわれる。


 回避も試みるが、まるで散弾銃のように浴びせられる『アクア・ランス』を全て捌くのは至難の業だ。そうこうする内にも、ストリックの残機はどんどん減っていく。エミットとの魔法合戦も記憶に新しいが、クシャーナの魔力量はいったいどれほどか、魔術師に引けを取らない魔法の連射が止まらない。


 このままでは削り切られて終わる。


 その予感を確信に変えたストリックは、緊急離脱を試みる。辛うじて生み出した闇属性スキル『ダーク・プラント』による疑似転移。それがギリギリのところで間に合い、クシャーナの追撃の魔法は虚しく空を切った。この間に体勢を立て直すべくストリックが唱えるのは、魔力を体力に変換する闇魔法『ダーク・エリクサー』。魔法行使と変換される魔力、二重で失うそれは平時ではなかなか使うことはない。


 それだけ、ストリックは追い詰められていた。


 回復を優先するストリックを余所に、クシャーナは明後日の方向へと突き進む。呪具『チェインルートの指輪』による高速起動は健在だったが、その軌道は空振りに終わった『アクア・ランス』を追いかけていた。自身が発射した魔法に追いついたクシャーナが振り抜くのは、呪剣『トリステスアイル』。強引に水魔法を根こそぎ吸収し、一瞬の間の内に振り切られるそれは、魔剣技『アクア・スラッシュ』。


 回復のターンと割り切っていたストリックに迫る、蒼の刃。


 それは寸分違わず彼女の身体を上下真っ二つにし、クシャーナに確かな手ごたえを残した。捉えたと踏んだクシャーナは、再度呪具による高速起動で仕留めにかかる。体力の回復もままならず、魔力も無駄に消耗してしまったストリック。連撃で追い詰める中、クシャーナが最後に切った手札は『チェインルートの指輪』効果の『付与』。魔法強化と移動阻害がストリックにかかり、バランスを崩す。


 咄嗟にストリックが上半身を庇う様に腕を交差するが、もう遅い。


 クシャーナの狙いは、ストリックの空いた胴体。先ほどの『アクア・スラッシュ』と同じ軌跡を描き、確実に生身を真っ二つに吹き飛ばす。今度こそ終わり。確信を込めた一撃はスッとストリックの身体に入り、()()()()()()()()()。確信を裏切る手ごたえのなさ、それは分身を斬った時のそれであり――。



「――――化かし合いは、私の勝ちだ」


 次の瞬間、斜め十字に振り降ろされた二刀の剣尖は、クシャーナの身体に深く赤の十字架を刻むのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ