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67話:十拳会議⑥

 教会による神器の調査報告。


 それは、王国図書館にある膨大な文献を読み解くことで得られた情報だ。


 ここまでは物好きであれば個人でも取り付ける話題ではあるが、現実的な脅威として対策を練っているのは、この十拳会議ぐらいなものだろう。特に実際にやりあった面々からは、関連した疑問や感想などが次々に上がっている。


「神器と使い手の関係性については私も思うところはあるけれど……鏡の報告を先に聞いてもいいかしら」

「はい、失礼いたしました。少々脱線してしまいましたね」


 そう諭して軌道修正を図るのは、死霊術師のネルチェ。


 彼女とは協力関係を結ぶ手前、今までの経緯や事情などは余すところなく共有している。ギルドや"十拳"にとって、協力的な死霊術師の確保は大きい。そんな彼女は今クレオの隣の席に付いており、会議の運行の補佐をも担っていた。助け舟に軽く会釈で返し、再びクレオが調査報告を行う。


「では次の報告ですが……神器:【呪縛の魔鏡サクリファイス】についてです。あまり東洋の神器については、文献そのものが少なかったのですが、ある地域に現存していたことが確認できました」

「呪いの文化……呪術との結び付きから、地域を絞ったんですね」


 興味深げに呟くリュウレイの声に、頷きで反応を示すクレオ。


 神器:【呪縛の魔鏡サクリファイス】、それは呪術師ミーコが操る神器である。魔術師の天敵足りえる魔法の反射が脅威の一つだが、目下手を焼いているのが、転移による雲隠れだった。直近では脱出不可とされるボス部屋からの離脱も成功させており、既存の枠組みに捉われないその性能は、神器足りえる力を示していた。


「極東の島国にある禍津(まがつ)という地域で、代々とある一族によって管理されていたようです。現在は死霊術師の手元にある訳ですが、ルーツはおよそ1,000年前……その大昔には幼子を生贄として、その血を捧げていたようです」

「うわー……血生臭いけど、そうやって年月をかけて昇華されたものなのかもね」


 身体を両手でさすりながら、ヤムがポツリと零す。


 数多の祈りや捧げられた命。人の手により神格化されたものにも、神は宿るという。もちろん詳細は分からないが、神器とは人の歴史にも密接に関わっているものなのだろう。しかし国家滅亡後に発掘された神器:【恵みの宝杖アダムツリー】とは異なり、今回はやけに所在がはっきりしている。


「それは海を渡ってわざわざ窃盗でもしたということか? 神器を奪われたとなれば、それは国家間の騒動に発展する恐れすらあるが……」


 もっともな疑問がオルゲートの口から投げかけられるが、クレオは控えめに首を横に振るだけ。神器は神から人に与えられし秘宝。最近まで所在がはっきりしていたのであれば、その可能性は高いはずなのだが、どうやら違うらしい。


「いえ、それがどうやら彼らが入手したのは、あくまで偶然のようです。秘宝として祀られていたのは昔のことで、現代の末裔はそもそも神器とすら認識していなかったとか。骨董品扱いで商人に売られ、巡り巡って……ということなのでしょう」


 ため息交じりに応えるクレオ。


 神器の扱いとしてはなんとも酷いものだが、移り変わる時代の中で、継承する文化が廃れてしまったのかもしれない。だが時代を超えて、今"十拳"に牙を剥いているのは事実。死霊術師一味を捕らえるためには、まず何よりそれを操るミーコの無効化が必要だ。


「もう歴史のお勉強はいいだろ。兎にも角にも、まずはこいつをどうにかしないと始まらねぇ。追い詰めても逃げられるだけだしな」

「相手も狙われるのを警戒してか、恐らく意図的に魔術師イルルをくっ付けてますわよね」

「あの防御を抜くのもなぁ~、影人形もあるし簡単じゃないよ」


 ストリック始め、続々と声があがる。


 "十拳"内では、彼らと全く戦闘経験がないのはリュウレイとオルゲートのみ。今は前回から協力体制にあるギルハートもいるが、むしろ大分情報は集まってきていると言える。情報収集は今後も必須だが、彼らに求められるのは対抗戦力としての働き。相手の特性を理解し、どう当てるか、誰が当たるか。議論はより具体性が求められる時に来ていた。


「実際の戦闘で考えると、相性の良さというか……裏をかけそうな人はいるよね」

「えっ、本当に!? 流石クシャーナ……って、なんでこっち見てるのかな?」


 ニンマリした顔を向けるクシャーナの視線の先、それを見て他の面子も気づいたようだ。


「ははーん、確かに悪くねぇなぁ」

「ええ、適任ですわ」

「ここまで来たら一蓮托生! しっかり働いてもらわないとね~」


 ストリックが悪い顔をすれば、エミットが優雅に相槌を打ち、セミテスタがあっさりと太鼓判を押す。クシャーナ始め、彼らには共通のビジョンがあるのだろうが、その視線を向けられた先の人物は焦るばかりだ。


「あ、あれ? これ逃げられない流れ!? というか、私だけ話分かって無くない!?」


 いつの間にかミーコ、イルル対策の矢面に立たされていたのは、"十拳"番外の【黒槍騎士】ギルハート。端っこの席に遠慮がちに座っていた彼女は、事情を知った手前今回も参加していたが、流石にこの展開は予想していなかったようだ。


「よし、細かいところはそっちで詰めとけよ。俺は寝る」

「新たな神器については、またまとまり次第ご報告します。それでは」


 ギルハートがアワアワしている間に、話は高速で流れていく。


 ギルド長ジークが重たい足取りで引っ込み、近衛シスターのクレオも一礼をして席を立つ。各自にはギルドと教会が調べ上げた膨大な資料が配布されている。気になること、必要なことがあれば自分でチェックしろということだろう。


「ねぇ、ちょっと待って! 本当に!? 誰か説明してーー!!」


 普段は騎士としての厳格な振る舞いを心掛けているが、性格としては若干内気で控えめ。それをよく知るエミットは苦笑しつつも、しばらくその姿を眺めてしまうのだった。

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