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49話:戦士の狂宴-閑話⑤

 【戦士の狂宴】Cブロック――スカルとテレサ、未知数同士の闘い。


 それは強者の余裕を見せつけた、【放浪武者(サムライ)】スカル=ゾゾンの勝利に終わっていた。テレサが決して弱かったわけではない。彼女が持つ固有スキルや『刀剣術式』の絡繰りなど、ただ見守っただけの観客には知りえないことではあったが、彼女は確かにこの大舞台で、強さを示したのだ。


「うぅ~~~……お父様ぁ~~~……」

「おい、何かデジャブを感じるんだが」


 そんな彼女にも、年相応の脆さはあるものだ。


 テレサの待合室を覗いた先に見えた光景。それは教皇ハインデルに抱き着き、すすり泣くテレサ=スーの姿であった。スカルとテレサ、ほぼ接点のない二人の待合室に押し掛けるなど、きっとエミットがいれば止めたであろう。だが彼女は激戦の疲れを癒すため、しばしの休息に入っている。外からの視線に気づいた教皇は彼らを笑顔で招き入れ、この奇妙な空間が出来上がっていた。


 嘆息するストリックをおいて、教皇は朗らかに話しかけてくる。


「どうか彼女を泣き虫や臆病者などと、そしらないでくれよ? この子はただ、私を心配してくれただけなのだから」

「いや、まあ……状況は全く理解できんが、あの闘いを見た後でそんな言葉は吐けねぇよ」

「すごい闘いだったね、グッジョブ」


 剣を抜いたスカルとテレサの斬り合い。


 特に終盤に見られたそれは、一流の冒険者をも唸らせるものだった。ストリックやクシャーナの素直な感想に頷き、そっと目線を落とす。ただ一人の親のように、慈しみを以てテレサをあやすハインデルは、外で知る威厳を纏った教皇の姿ではなかった。


 そんな彼は、テレサの後頭部を撫でながら言葉を紡ぐ。


「この子の知る世界は、まだまだ狭い。少し困った甘えん坊なのは変わらないが……どうか、気にかけてやってほしい」

「じゃあ、今度一緒にダンジョンでもいく? あ、入れ替え戦とか抜きにしても、あれももう1回受けてみたいなー」

「おい、ヤム……なんかその辺のアトラクションと勘違いしてないか?」


 教皇のお墨付きを得たとばかりに、ヤムが捲し立てる。


 自分を負かした相手にあっけらかんと話しかけるヤムにも呆れるが、それが彼女のいいところでもある。ストリックとて、テレサの操る武技に興味がない訳ではない。別に仲良しこよしでいる気はないが、盗めるものは盗むのが盗賊というものだ。



「おい、茶番はもう終わったか?」

「「「……っ!?」」」


 テレサの様子も落ち着き、少しずつ交流が芽生え出した頃、その声は聞こえた。


 待合室には元からいたテレサ、ハインデルを始め、クシャーナ、ストリック、ヤムの3人が詰めかけている。だが聞こえてきた声は6()()()。その中の誰でもないという事実に、冒険者としての嗅覚が遅れながらに覚醒する。


「やあ、スカル。そろそろ来る頃だと思ったよ」

「…………ふん、白々しい」


 待合室の一面、壁に背を預けた一人の剣士の姿。


 微睡みから覚めたような衝撃に見舞われるのは、クシャーナ達である。そんな彼らをおいて、あくまでフレンドリーに話すのは教皇ハインデル。どうやら二人は旧知の仲のようだが、教皇の腕に抱かれるテレサは懐かない飼い猫のようにフシャーと息を撒き、警戒心をあらわにしていた。


「敵っ……!! お父様の仇……っ!!」

「いや、別に死んでないからね? 彼のことなら心配いらない。仕合のはほら――すまない、私にも原因があるね」

「あー……私らはそろそろ抜けたほうがよさそうだな」


 混沌としてきた場に、ただ居合わせただけの部外者。


 面倒くさい雰囲気を察したストリックは、野次馬根性丸出しのクシャーナとヤムをひっ捕らえ、足早に立ち去ろうとする。珍しく慌てるそぶりを見せる教皇、威嚇を続けるテレサ、黙して動かないスカル。謎の緊張が漂う中、起死回生の一手にしようと教皇は爆弾を投下する。


「いや、スカルはただ不貞腐れてるだけさ。テレサが彼と同じルーツを持つ――()()()()だということを私が隠してたから……ね?」


 一瞬の静寂の後、待合室は再び大騒ぎ。


 無言の殺気を放ち、剣を抜きかけるスカルを全員が止めにかかる。その中で、教皇の腕から抜け落ちたテレサが、その意味をぽけっとした表情のまま反芻している。物心ついた時から、家族という存在を知らない。だからこそ拾い上げてくれた教皇を神格化し、お父様と呼び慕っているのだ。


 他ならぬ教皇の言葉だ、疑う余地もない。


 そうなると、仕合の中あれだけ憎悪を向けた相手の見方が、途端に変わってしまう。――自分にも残されていた、血の繋がり。もう少しテレサも大人になっていれば、意固地になっていたかもしれない。だが彼女はいい意味で純粋で、年相応の少女であった。


「お爺ちゃん……お爺様……ふふっ」


 周りの騒ぎを余所に、一人呟き、笑みを浮かべるのだった。

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