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21話:戦士の狂宴-開宴②

 "十拳"上位5名が舞台に並び、闘技場に歓声が飛び交う。


 そして次にアナウンスされるのは、下位の残り5名である。


「さあ、続いて6位! 魔術師の可能性を拡げる新星! 耐えて耐えて掴むのは魔術師の、いや冒険者の頂点! 【緑牢亀(テストゥードー)】セミテスタ=ケアー!!!」

「キャーーー! 可愛いー--!!」

「エミットとの魔術師対決! 早く見せてくれー--!!」


 軽い足取りで、ウィンクして乗り込んでくるのはセミテスタだ。


 彼女も元々人気の冒険者だが、オルゲートとの入れ替え戦を制し、その実力が改めて評価されている。今までの理想の魔術師像は、基本五属性を万遍なく使うことで弱点を埋め、火力で圧倒するスタイル。俗にいうエミットのようなタイプだ。


 だが彼女は、自分の得意分野である土属性を極める道を選んだ。


 属性一極型は型に嵌まれば強いものの、対応力には難がある。それはダンジョンの探索でも、"十拳"の入れ替え戦でも同じだ。そうした考えで敬遠されがちだったが、彼女の存在により再び見直されつつあった。


「7位にはこの男! もはや生ける伝説! 身体に刻んだ傷は戦士の証! 本日再び冒険者の頂点に返り咲くか!? 【駆逐要塞(デストロイヤー)】オルゲート=フュリアス!!!」

「ウォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!」


 今日一ほどの歓声が轟き、闘技場をまるで地響きのように揺らす。


 セミテスタの後にぬっと現れたのは、モンスター並みの巨躯を揺らす大男。際立つのは鎧の上からでも分かる、はち切れんばかりの筋肉。背中には使い込まれた両刃の斧がずっしりと乗っかっている。顔には深い皺が刻まれ、蓄えた髭も白く染まっているが、その奥の眼光の輝きは全く衰えていない。


 その迫力に圧倒され、観客もただ雄たけびを上げ立ち上がる。


 異常なムードを作り出した歴戦の猛者は、ゆっくりと右手を上げその歓声に応える。そんな強面の武人に、前を行くセミテスタがススッと近づき声を掛ける。


「オルゲート、やっぱすごいね~」

「ふん、馴染みの客が多いだけよ。……だが、今日の筋肉の調子は絶好調だわい」

「わお! 今日はできたら当たりたくないな~、お互い頑張ろうね!」

「はっは! お主もな!」


 豪快に笑いながら、舞台に上がるオルゲート。


 一度戦闘になれば、彼は狂戦士さながらの戦闘マシーンとなる。だが、普段は話しの通じるナイスミドルである。そして、人を見かけで判断しない目も持っている。セミテスタ始め、冒険者仲間との交流も深い、厚く信頼される男だった。


「お次は8位! "新星"を堕とす、新たな世代は神の使徒か!? 祈りを捧げ刻むは、己の信念と神への誓い! 謎多きシスター【逆十字(アンダークロス)】テレサ=スー!!!」

「テレサちゃーん! 俺の煩悩も消し去ってくれー-!」

「未知数なとこも含めて好きだ―! 応援してるよー-!!」


 庇護欲を掻きたてられるのか、所々から野太い歓声が響く。


 観客の視線の先には、伏目がちで入場するテレサの姿がある。華奢で儚げな少女は、恐らくまだ10代だろう。胸のロザリオを両手でギュッと掴み、何かブツブツと呟きながらの行進となっている。まだまだ対戦相手が少なく、彼女の手の内の多くは明らかにされていない。


 彼女の背には、十字架を模した一振りの剣。


 ヤムとの死闘も記憶に新しく、その戦闘スタイルには多くの関心が集まっている。だが未だその真実に行き着いたものはいない。観客のみならず、冒険者の一部には彼女をダークホースとして推す声もあるほどだった。


「続けて9位! その踊りは対戦相手をも魅了する! 天性の踊り子は、雪辱を誓いこの舞台で舞う! 【舞踊姫(マイヒメ)】ヤム=ソーア!!!」

「ヤムー--! 今日も最高の踊りを見せてくれーー-!」

「俺はいつだって君だけを応援してるよー--!!」


 熱烈なファンの後押しを受け、ヤムも舞台に立つ。


 現在はリュウレイやテレサなど、新たな世代の台頭もあり下位へと下がったヤム。それでもストリックやクシャーナが評するように、彼女の実力は決して"十拳"上位と比べても見劣りするものではない。


 普段は明るくファンサービスも欠かさない彼女。


 だが今回は熱い想いを秘めての参戦となるためか、その顔はキュッと引き締まっていた。


「そしてトリを飾る10位! 戦闘に飢えた獣がランクイン! 圧巻の身体能力を見せつけ、"十拳"の頂点へ名乗りを上げる! 【雷獣(ビースト)】ハクマ=シダン!!!」

「あれが【雷獣】……迫力半端ないな……!」

「一気に"新星"も喰っちまえー--!!」


 最後に舞台に上がったのは、オルゲートと同じぐらいの巨体を持つ大男。上半身は裸であり、その引き締まった肉体を惜しげもなく晒している。まるで凶暴な獣のように重量感のある鎖を巻き付け、その先端には手斧がぶら下がっていた。


 低い唸り声を上げながら、最後の一人が舞台に降り立つ。


 まるで手入れされていないボサボサの長髪をなびかせ、キョロキョロと獲物を探す。その眼は正気を失っているかのように白目を剥いており、目の前の他の"十拳"にすら焦点が合っていないようだった。


 現"十拳"の集結。


 自由気ままな冒険者の最高峰、その10人。滅多に見れないその光景だけで、観客からは大きな歓声が起こる。例年よりも順位の変動や入れ代わりが多かったため、この先は誰にも読めない。"新星"の躍進か、"古株"の面目躍如か、はたまた新たな"化け物"世代が全てを喰らうのか。


 大歓声の中、その運命を占うトーナメント表が、今発表される。


 参加者は"十拳"に属する10人。


 現在の序列も反映されるため、おそらく1位のクシャーナと2位のストリックは両サイドに振り分けられるだろう。そして1回戦を課されるのは、下位の4名。こうしてある程度予想はできてしまうのだが、それ以外は全くのランダムだ。


「さあ! いよいよ運命のトーナメント表の発表です!」


 実況のサミュが声を張り上げる。


 その声が合図となってか、空間に映像を浮かび上がらせる魔道具が作動する。闘技場の全方位の観客に見えるよう、4つの映像が四角形の面のように並び、その詳細を映し出す。


「おお! これ新旧肉体派対決じゃないか!?」

「まさか初っ端から魔術師対決を拝めるのかよ!!」

「やっぱ1位と2位は振り分けられるんだなー」

「あれ、4位のリュウレイの位置、あれであってるのか?」


 ざわめきと歓声が入り混じった空間が拡がっていく。


 A、B、C、Dと左から順に振り分けられるブロックの中で、1回戦が組み込まれているのはAブロックとDブロックだ。Aブロックの一番手には、クシャーナの名前がある。その対戦相手は1回戦が組まれている下位二人、オルゲート-ハクマ戦の勝者だ。


 Bブロックはエミット-セミテスタ戦。


 同世代で台頭してきた二人だったが、実は"十拳"の入れ替え戦でも二人の直接対決はなかった。常にエミットが上位を行く形であり、初めての魔術師対決がここで組まれたのだった。


 Cブロックはスカル-テレサ戦。


 1回戦を免除された組であり、そこに下位であるテレサの名前があることに多少のざわつきが起こる。そこでサミュからのアナウンスがあり、どうやらリュウレイからの申し出でテレサと入れ替わったらしい。参加者の希望が反映されるのは異例のことだったが、主催者側も今回の件で色々あったのかもしれなかった。


 Dブロックは1回戦にリュウレイ-ヤム戦があり、勝者がストリックと相対する。


 気に入らないという風にリュウレイを睨みつけるストリック。それに気付いても涼し気な笑顔で返すあたり、リュウレイも一筋縄ではいかないタイプらしい。入れ替えの影響で対戦相手が変わったテレサとヤムは、ただ自分の世界で集中しているようだった。


 1回戦が終わると二人が振り落とされ、8人が残る。


 まずは、その8人を決めるための試合が行われる。オルゲート-ハクマ戦、そしてリュウレイ-ヤム戦。歓声に見送られ当事者以外は退場となり、その舞台では二人の巨漢が睨み合って佇むのだった。

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