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3個の球根

作者: 辻 ミモザ

「これを植えてごらん、春になったらきれいな花が咲くよ。」

こう言っておじいちゃんはとも君に球根を3個くれました。

「どんな花が咲くの。」

「黄色いラッパの形の花だよ、ラッパ水仙という花なんだよ。」

とも君はさっそくお母さんと庭のすみに球根を植えました。

「この球根は少し小さいから、花が咲かないかもしれないね。」

ほかのより少し小さい球根を見てお母さんは言いました。

「お花咲かないの。」とも君は心配そうにお母さんを見ました。

「もしかしたらね。でもきっと大丈夫よ、たっぷりお水をあげて世話をしてあげたら3個とも咲くわよ。」

とも君はじょうろで、水をたっぷりかけながら、土の中の球根に、

「ちゃんと3個とも咲くんだよ。」と何度も言いました。

それから毎日とも君はまだ芽がでないかと球根を植えたところにやってきて

「3個とも咲くんだよ。」とかならず言いました。


土の中の球根たちは気が気でなりません。大きな2個の球根は自信満々なのですが、小さな球根は不安でたまりません。

お母さんが言ったように花をつけることができないのかしら、葉っぱだけしか出ないのかしら、大きな球根にたずねるのですが、

「やっぱりダメかもしれないな。」

「いや、ぜったい大丈夫だよ。」

と、まちまちなのです。近くを通ったミミズにも聞きました。

「よし、大きさを計ってあげよう。」ミミズはぐるりと球根に巻き付きました。

「このフシまでなら咲くんじゃないかな。」と言ってくれましたが、モグラのおじさんにたずねると

「お前さんの大きさじゃ無理だと、ワシは何年も土の中にいるんだから間違いない。」とそっけなく言って行ってしまいました。

でも、「いっぱいお水を飲んで、根をぐんぐん広げたら、きっと花が咲くよ。」とセミの幼虫が言ってくれたので、少し元気になりました。

球根たちは、いっぱい水を飲んで根を広げ、頭の先から芽を出してぐんぐん伸びて土の外へ出てきました。

それを見つけてとも君は大喜びです。

「でたでた芽がでた、3個ともでたよ。」

そうしてふんずけたりしないように、3個の芽の周りを小石でぐるりと囲みました。

寒い北風の吹く日もありました。冷たい雪をかぶる日もありました。そんな日でもとも君は毎日見にきました。


ようやくお日様がぐんと近寄ってきてくれるようになりました。

小さな球根は思い切って、お日様にたずねました。

「ボクも花をつけることができますか。」お日様は暖かい大きな手を差し伸べて言いました。

「ようし、この手につかまってぐんと背伸びをしてごらん。」

小さな球根は緑の芽をお日様の手に向けてぐんと伸ばしました。そしてお日様の手につかまったときに、からだの中に何か暖かい物ができたような気がしました。


次の日の朝、とも君は3っつの芽の間にそれぞれ小さな花の頭を見つけました。

「でたでたお花の芽がでたよ。」お母さんをひっぱてきて見せました。

「とも君のお世話が良かったね、さあしっかりお水をあげてきれいな花をさかせようね。」

3個の球根はとてもほこらしげです。


しばらくして、春のひだまりの中で3個のラッパ水仙は大きな花をつけました。それは春風に合わせて歌っている3個のトランペットのようでした。

                                           終わり




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