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第8話 桜の下の目論み

 今日の支配者貧乏大魔神は、若く二十歳そこそこの超絶美人に化けていた。

 大魔神の魅惑的なフェロモンにくらくらしたような顔を、奴はしている。

 いいきみだ。この顔を見るのは久々だ。私を襲おうとした時も、奴はこの表情をしていた。


「うふっ」

 支配者貧乏大魔神はシナを作って、艶かしい微笑みを奴に向けた。


「お、お、お美しいですね。」

 あいつは早速デレっとした表情で支配者貧乏大魔神に言った。


 ちょっとした見ものだ。



 紫色の麗しいドレスと、仕草が、みょうに若々しく、スタイル抜群の超絶美人にあいつがデレっとしないわけがない。


 支配者貧乏大魔神は、奴をどう思っているのかはさっぱりわからなかったが、奴の気持ちは手にとるように分かった。


 「この麗しい若い女性の正体は、支配者貧乏大魔神という、相当な年齢の大魔神よ。」なんて、私がそんな親切なことを奴に教えてあげるわけがなかった。



 満開の桜の木下で、私たちは屋外に設置されたカフェに座っていた。


「元気そうだね。」

 最初の頃は、奴は私の方に言って、私のことを思ったのと違うと言った様子でしげしげと眺めた。


 でしょう?


 私は、全然二番目なんかじゃないわ。


 仕事でのし上がってる最中だから、多少お金もあるし、頑張って美貌だって保っているのよ。最後、あなたが死ぬ瞬間にも、「あー、俺は、完全に間違ったかも」と、何回も、節目節目で思ったであろう言葉を吐かせてやるわ。


 私は、久々の再開に最初こそ緊張したが、いつもの素の感じに戻って、調子を取り戻してきた。



 私の父はラーメン屋をしている。どうなっているの?と言いたくなるぐらいの美味しいラーメンや、あんかけ焼きそばを作っている。しかし、支配者貧乏大魔神に好かれてしまってこのかた何十年、生活はギリギリと言ったお金しか店には入ってこなかった。


 母が別に働いて、生活を支えていた。


 父は、子供の頃から一緒にいる支配者貧乏大魔神のことを特に疎ましいとも思わず、大事な仲間だと考えているようだった。


 とにかく家にお金が入ってこないのは問題だ。私のことを二番目だと言った奴と、支配者貧乏大魔神がくっついてくれたら、こんなに嬉しいことはない。一石二鳥だ。


「あ!連絡だわ。」

 うまい具合に、会社からの緊急連絡が私の会社携帯にあった。


「ちょっと電話に出てくる。」

 私はそう言って、桜の木の下のカフェに二人を残して、さっさと離れた。


 会社からの連絡は、全てのインフラが障害で止まりそうだという連絡だった。水も電気も、ガスも、一般市民が使っている大手キャリアも、止まりそうな障害が起きているらしい。


 私は、電話を切ると、素早く桜の木の根本に魔法陣を張った。経路を素早くチェックする。この前の作業が問題ではなさそうだが、私の攻撃力は、奴に会う前にupdateしておいたので、今は金の力で700まで上がっている。


 経路に自ら飛び込んでも良さそうだが、どうするかな・・・


 ま、あのお二人さんを二人きりにして、私の損になることは一つも思い足らない。経路に飛び込んで、速やかにこの事態を回収し、より強烈に成り上がる方に舵を切ろう。


 私は、遠目で笑いながら楽しそうに話している彼の顔を、しめしめと眺めながら、桜並木を歩いて会社に向かった。


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