第7話 初デートと攻撃力700での再会
異国の地でも、私たちは笑い合っていた。遊んでテンションが上がった私と彼はそっくりな二人になった。そうだ。私と彼が過ごした時間は長かった。彼が過ごした他の誰よりも、私との時間の方が長かったのは間違いない。それなのに、フラれたのだ。わたしは。
うまく言えないが、私と彼は、どこかが非常に似ている部分があった。
最初のデートは映画館だった。その時は、ただ、切なく甘酸っぱい、何もない真っ白な二人の爽やかな始まりだった。
その時も、私はめいいっぱいおしゃれをした。
新しいおろしたての服。前日に妹と散々選んで買った高かった真っ白な素敵なスカート。私の透き通るような色白肌を引き立てる紺色のニット。
全てが新しくその日のために買い足したものだった。
でも、頑張りが足りなかったのかもしれない。もっと女の子女の子したワンピースとか、振り切った方がよかったのかもしれない。もしくは、色気マシマシに走った方が良かったのかもしれない。
もしかしたら、あの時もっと頑張っていたら。
その後悔は、長い間私にまとわりついて、私を離さなかった。
完全に振られたとわかるまで、私は諦めが悪かった。みっともなく、切ない思いで好きな気持ちから抜け出すことができなかった。
全てを手から離すことができたのは、あの別れの夜だった。私は思い切って全てを離すことができた。襲われそうになった瞬間に、全てを手から離すことができたのだ。
だからこそ、次は結婚相手として間違いない人を選べたのだと思う。そして、振り切っておしゃれをすることができたのだと思う。プラトニックな関係の継続ではなく、すぐに「事を遂げる」ことができたのだと思う。
結婚できたのだと思う。
満開の桜の木の下で、人妻になって親になった私は、あいつと再開した。
「相変わらずお綺麗で。」
十年数年ぶりに会うあいつは、いつものように言ってきた。
私のラウンド2の攻撃力は700。
桜の花びらに手のひらを伸ばすと、私の周りに光が散り、ふわっと魔力が広がった。
あいつの目が細くなり、眩しそうに私を見た。
どう?
あなたが二番目だと決めつけた私のラウンド2の姿は、本当に二番目ですか?
私はふわっとした笑みを浮かべた。攻撃力700は、戦闘能力だけを現すものではない。心にもアプローチできる強さがあるのだ。
「おほほっ!ふふ・・・」
支配者貧乏大魔神が麗しい紫色のドレスを着て、私と彼に近づいて来ていた。
「こちらは?」
支配者貧乏大魔神が、上品に私に聞いた。
「こちらは、古い友人ですの。」
私は答えて、とっておきの笑顔を晴れ晴れと浮かべた。
「ほおお?」
支配者貧乏大魔神は、彼の周りをゆっくり回った。
「こちらは?」
彼は不思議そうに私に聞いてきた。
「父の友人ですよ。ある企業の会長さんなんですよ。」
私はそう彼に伝えた。
あなたが私を結婚相手にできないとした第一理由の父は、桜の木下で静かにお酒を飲んでいた。そばに母もいる。弟もいる。
弟の目が私に言っている。
「姉貴?そいつに、押し付けようっていう作戦か?」
そうだ。
彼が支配者貧乏大魔神の餌食になってくれたら、せいせいはする。
「あなた、難しい人ね。」
支配者貧乏大魔神はニコニコしながら、彼に言っていた。
うーん、だめか?