第21話 ミシシッピの豆もやしと異世界のお姫さまのキャンプ
コードネーム:ミシシッピの豆もやし
戦闘力:6万3千32、防御力12万1、持久力4万200、根性322
大魔神の長は、事態を私から説明を受けると、それだけ伝えてきた。
「大桜家のお嬢さまじゃあ、金の力で会いに行けるじゃろ。きっと力になってくれる。」
「金の力で」という言葉のは、振られた相手に再会を果たす時、私が貯金をはたいて、箔をつけるために攻撃力を700まで上げた時に使った言葉だ。
だが、今の長の言葉の文脈だと、そんなレベルの金の使い方じゃないような・・・
「長、その方はどちらに?」
冴衞門はすかさず長に聞いた。
私たちは長の館の謁見の間で、ずっと立ち尽くしていた。高座に置かれたご立派な椅子に座った長に、状況を説明していた。
ここは大魔神の都。大魔神の長といえば、国王並の立ち位置にある。
長はイメージ通りの風貌をしていた。髭も白いし、長い髪も白い、太った大魔神の老人だった。シールドで隠れていて、持ち札の数字が全く見えなかったが、おそらく、戦闘力は10万は超えているはずだ。
ま、とてつもなく強いはず、ということだ。
「ミシシッピ州にいますよ。ゼニキバの蓮長どの。」
長は、聞いた冴衞門にそう言った。
うん?飛行機で行く?アメリカのミシシッピ州に?
金の力とは、飛行機代のことか?
正直、全員がそう思ったと思う。出張なら、マテキからもゼニキバからも出張費用は出るし、大桜家の財力を使う必要はなさそうですが・・・
「馬車に乗って草原を一っ飛びして、キャンプして、ミシシッピの豆もやしに由莉子を会わせます。」
支配者大魔神が、長にそう言った。
はい、飛行機ではないことは分かりました。だが、馬車に乗って草原を一っ飛びしてキャンプとは?
横目で見ると、綺羅介以外は、タクロー含めて全員がはてな?と言う顔をしていた。
綺羅介だけが、目を輝かせている。意味が分かるらしい。
「さあ、時は金なりぞ。」
「今すぐ出立するが良い。非常事態が起こる前に、防いでくれ。犯人が分かれば、わしも応援するぞ。」
長はそう言ってくれた。
「経路の反応からすると、約二週間後に発生するであろう。」
全員が息を飲んだ。二週間後か・・・
「あの!小さな隕石もぶつかるように見えるのですが。」
私は長にそう伝えた。
「そうじゃな。そう見えるな。それも救う方法はあるぞ。お嬢さまたちが、富士山大魔神を起こすやつを調べている間に、そっちの方法も確認しておこう。」
「ありがとうございます!」
「助かります!」
皆、口々に礼を長に言った。
「支配者貧乏大魔神、お前がついていただけのことはあるな。大桜家のお嬢さまは、今まで聞いたことがなかったが、マテキの華取火鳥になられていたとは・・・。こんなに早く何が起こるのか正確に読み取れるとは、凄い能力ぞ。」
長は感心したように支配者貧乏大魔神に言った。
私は正直、心外だった。支配者貧乏大魔神のおかげで、凄い能力を身につけた訳ではないと言いたい。私はフラれて、真剣に根性入れて頑張ったのだ。フラれたのは、支配者貧乏大魔神のせいであって、非常に悔しい思いをした。
結果、支配者貧乏大魔神のおかげとなるか?
その経緯を思うと複雑だ。
丁寧に礼を言って、私たちは長の館を出た。
「ミシシッピの豆もやしと、異世界のお姫さまのキャンプ♪」
冴子とタクローは、ハイタッチして喜んだ。
実に楽しげな雰囲気は結構だが、二週間後に非常事態が発生するのを食い止める使命が我々の肩にかかっているのだが。
「さえちゃん?たくちゃん?」
私は優しげな笑顔を顔に貼り付けて、二人の方を振り向いた。
「ふざけないで!」
最後の言葉は、聞いた人が凍りつくレベルのドスを効かせて言った。
「は、はい。」
冴子とタクローはシュンとした。
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