第20話 マテキの次期トップを狙う華取火鳥
弟のこれまでのイメージはこうだ。
ラーメン屋の2階で、例えば冬場はちゃんちゃんこ着て、メガネかけて、むさ苦しく伸びた髪の毛をちょんまげ結びにして、いつもこたつに入って漫画読んでいるイメージだ。
それが、大魔神の都では名前の通りのキッラキラの若武者で通っている。
うちが大魔神の都一の大富豪だというのも謎すぎた。
が、それはそれだ。今は置いておこう。私は、マテキの次期トップを狙う華取火鳥の大桜由莉子だ。自分のミッションを果たす事を優先しよう。
「行くわよ!」
地面に刺さった剣を引き抜くと、私はそれを片手に振り上げ、他の四人と支配者貧乏大魔神に合図をした。
「大桜家が大金持ちだろうと関係ないわ。私はマテキの華取火鳥の使命を果たすわよ。」
集まった魔神たちがどよめいた。
「マテキの華取火鳥だってよ。大桜家のお嬢様は、すんげーな。」口々にそう囁き合っている。
そうよ、そうよ、そこはどよめいていただいて構いませんわよ。
私は満更でもない気分でニンマリして、スタスタ先陣切って大通りを歩き始めた。
「由莉子、ちがーう。こっちよ。」
支配者貧乏大魔神に袖を引っ張られて引き戻されて、ズッコケそうになった。
「もう、あんた調子にのんじゃないわよ。都は初めてでしょう?ここは大魔神の都よ。」
「そうそう、姉貴。攻撃力1万超えたぐらいじゃ、叶わない相手ばかりだよ。俺についてきな。」
弟の綺羅介にそう諭されて、私はしゅんとした。
振り上げた剣は、冴子がまた私の背中の剣帯に携えてくれた。
こうして私たちは、魔神たちが道を開けてくれる中で大通りを練り歩いた。そして、綺羅介、私、冴衞門、タクロー、冴子、支配者貧乏大魔神の順で、大魔神の長の館に入って行った。




