帰還と初めての友達1
その日の夕方、父様が帰還した。無事に兄様の皇太子就任の挨拶と、貿易の件を話すことができたと、父様の代わりに、が伝えてくれた。
そして現在私は、父様からのご褒美としてもらった、大好きな探偵の本を自室で読んでいた。前世から、シャーロック・ホームズやら、怪盗アルセーヌ・ルパンなんかを読みまくり、その他いろいろな小説を読んでいたせいか。中学生になるころには、本の虫へとなった。
えっ。こいつが犯人なんてっ!というかこの探偵が抱える謎が少しづつ見えてきた。ものの1時間で300ページほどある本を終わらし、伸びをしていると、ドアのほうからノックがして、返事をするとが、顔を覗かせていった。
「姫様。あと2時間で、竜神帝国の皇帝陛下と主様の会食となっておりますので、ご準備を。」
「もう。そんな時間か。シフィラのお任せでいいわ。」
そういうと、とてつもなく嬉しそうに声を弾ませながら答えた。
「かしこまりました。」
このときにお任せでいい。なんて言わなきゃよかったと思うことになるとは到底考えなかった私だった。
それから1時間半。着せ替え人形のごとく、これもいい、あれもいいと、メイドたちの手によって着飾られ、晩食の時間となった。
「食事の会場へは皇太子殿下がエスコートしてくださると。」
「兄様が?」
「はい。よかったですわね。」
「そうね。」
暇だ。なんせ10分は服にしわが付かないように椅子に姿勢よくすわったままだ。
なんか暇つぶしにいいものは...........あっ!暇なときに女子が話すことと言えば、恋バナ!
「ねぇ、シフィラ今年で何歳になったんだっけ?」
「15歳にございますが?」
「...........いい人とかいないの?」
「ひっ姫様!?そそそそっそんな、いい殿方なんて。.........私、初恋、私の父ですよ?」
「ん~。レンは?」
「レン様ですか?」
「うん。イケメンだしさぁ。お調子者だけどさ。仕事もできるし。なんてったって、お父様の側近だし。」
「でも、レン様にはもうすでに恋人がいると聞いたことが........。」
「えっ?!そうなの?」
「はい。人づてですが。」
「知らなかった。あのお調子者が.......。じゃあさ、ロンドは?側近3人の中じゃ、一番まともでしょ。」
「これまた、噂ですが、その~、趣味が特殊らしいので、わたしは遠慮いたしますわ。」
つまり、10歳の私には言えないような、変な性癖持ちってことですね。
「ふぅ~ん。じゃさ、あんまり、おススメはしないけど、クランは?」
「クラン様ですか。う~ん、女性にたいしても親切ですし、悪いうわさもないですね。でも、私は姫様が
結婚してから、結婚いたしますので、もともとお三方とも選択肢外ですわね。」
ガタっドンとドアのほうで音がした。
何事と聞くと、ドアのほうから、レンが笑いをこらえるようにしながらいった。
「皇太子殿下がお見えになりました。」
そして、自慢の兄が自分のほうまで歩いてきた。
「可愛い。似合ってる。案内役ご苦労様。」
といつものようにほめてくれた。
「兄様。ありがとうございます!私準備はできましたので参りましょう。」
「ああ。」
部屋から出ると、なぜか植木に頭を突っ込んでいるクランがいて、兄様にどうしたのですか?と視線で問うと、「告白する前に振られたんだよ。」
「えっ、てことは、シフィラのこと.........。」
「好きってことだな。」
「えーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!嘘。やたら、わたしの部屋に来てたのって。シフィラ目的だったのか。」
一番まともが、私の宿敵とは、思いもしなかった。