使節団の到着1
私がレンを引き連れて王城の玄関前まで行くとほぼ同時ぐらいに、使節団の馬車も到着した。ザッ中華といえるような馬車から降りてきた皇帝、皇太子、外交官。それぞれ胡服を身に着けていた。歴女としてテンション爆上がりだ。
ただ気になるのが........大人数の美女を引き連れていたことだ。おそらく後宮の妃たちだろう。っていうか事前に言ってほしかった。溜息をつき、後ろにいるレンに目配せし手配してもらった。そして改めて目の前の皇帝を見上げる。でかい。物理的なものもあるかもしれないけれど、なんというか、”圧”?を感じる。これが名君の覇気というものか?黒髪に赤い瞳と見た目も麗しいい。いわゆるイケオジだ。.........とにかく挨拶しないと始まらないな。よしっと覚悟を決め、通訳もいるということもあり、魔の王国の母語をはなすために口を開いた。
「お初にお目にかかる。貴き皇帝 炎の君殿。我が国皇帝コウ・オリエンタに変わりご挨拶を。わたしはルカ・オリエンタ。今回の訪問で貴殿の国との友好を望む。」
『ご丁寧に感謝する。われは炎月。貴殿の国との友好を望む。今回は条約の締結と我が国の皇太子の紹介で参った。.......彗。』
そう竜神帝国の母語でいった皇帝は後ろに控えていた黒髪の少年を挨拶するようにせかした。その少年はゆっくりと前に出てきて口を開いた。
『お初にお目にかかります。私は竜神帝国の皇太子。彗・光華と申します。今回の訪問、貴殿の国といい関係が築けることと思います。』
そういって彗は頭を軽く下げた。
.......彼が私を奴隷へとした本人でヒロインが攻略するキャラ。彗だ。だが幼少期のビジュアルが公開されていないので、彗を推しているヲタクとしては泣くほどうれしい。(まじ泣きしたら変人だから泣かないけど。)10歳とは思えない顔の美しさ。彼の持つ青く澄んだ瞳がどこか冷血を思わせるほど鋭い。それから、肩まで伸びるしなやかな黒い髪を中華風に束ねており、そこもいい。ただゲームで出てきた彗とは違い、大人っぽくは見えるがあどけなさが残っていた。
なんて、きれいな耳の形!
竜神族の耳も魔族(魔の王国の住人)のような長いものである。ちなみに、竜神族と魔族の見分け方は、顔つきである。日本人のような見た目が、竜神族。彼らの文化が中国系なので覚えやすいと思う。それから、魔族がヨーロッパ人のような風貌で、エルフと何ら変わりはない。それにはわけがあって、この世界のエルフが魔族と妖精が交わったことでできた種族だから。見た目はさほど変わらない。
観察しすぎたのか、目の前の皇帝が心配そうにこちらを見ていた。
すいません。推しの幼少期を見られたもので....。心の中でそう思いつつ、挨拶した。
「初めまして、彗皇太子殿下。私はルカ・オリエンタ。竜神帝国に栄光があらんことを。..........失礼いたしました。皇太子殿下の所作が美しく固まってしまいました。わたしも見習わなければ。」そして営業スマイル?(社会人になれなかったからよくわからない)を浮かべてみた。
そういうと、皇帝は笑って言った。『かわいらしいお嬢さんだ。』通訳には訳さなくていいと指示を出していたようだが、ある程度竜神帝国の言葉を理解している私としては、気恥ずかしかった。
彗はというと無表情で『ありがとうございます。』といっただけだった。