帰還と初めての友達3
静かな廊下に二人分の小さな足音が響いた。私が先頭で、そのあとを彗がついてくる。人付き合いがあまり得意でない私は、なにかしゃべったほうがいいかと頭を悩ませていた。
「........殿下は、なんの食べものがお好きですか?」
初対面で、なに話せばいいか困ったときの対処の典型的な質問しか出てこなかった。答えてくれるといいけど。
「..........毒が入っていなければ、なんでも。」
「.........え?」
私は振り返った。無表情で子どもらしくない美しい顔が、目に入った。
一瞬、聞き間違いかと思った。ほんの10歳の子供の口から”毒”という言葉が出てくることを私は予想もしていなかったのだ。
「お前も、皇族なんだから、毒ぐらい盛られたことがあるだろう?」
「..........私は、生きていて一度も毒を盛られたことがありません。殿下、それが普通なのですか?あなたの住む国の。」
「皇族なら誰でも。」
「...............そうですか。なら、これを差し上げます。」
そっと、宝石のペンダントを取り出した。
「それは?」
「私が浄化魔法を施してあるペンダントです。これを殿下に差し上げます。」
半分、同情だった。あと半分は、恩人になれると、思ったから。ただ、彗から返ってきた答えはまた、私の予想を超えた。
「それで?」
「それでとは?」
「見返りだ。何が欲しい?」
「..........」
「殿下の友達になってもよろしでしょうか?」
「は?もっとほかにあるだろう?!こいつが気に入らないから殺してくれとか、高級なものが欲しいとか、それとも、お前も俺に死んでくれっていうのか?」
私はこの世界が現実であることをまだわかっていなかった。所詮ゲームの中の世界だって。だから、10歳の子供が人を疑いながら、生きていることに気が付かなかった。
「泣いているのか?」
無表情の彗の顔に動揺がみられた。そしてその瞬間、彗の顔がグニャっとゆがんだ。
「え?..........なんで、泣いてんだろ。」
自分でも、わからなかった。彗への同情からなのか。自分の住んでいた日本に帰られないからなのか。または、”殺されること”が怖いからか。わからなかった。




