第百十七話 違い
死体が干涸びていないのは普通であれば当たり前のことだ。
しかし、第二、第三聖騎士団と五万の兵士が干涸びている状況なのにも関わらず、第四聖騎士団だけがただの死体なのだ。
つまり、この場合は整合性がつかない。
星華は第四聖騎士団らしき集団の死体を見渡した。
獣に噛みつかれたり、引き裂かれた死体がほとんどだ。
聖騎士の死体が千体ほどあるようだが、全員が鎧を装備しておらず、武器も持っていない。
更に騎士団の中央には引き裂かれた巨大なテントがあり、その中では幹部らしき者たちが死んでいた。そこには巨大なキューブ型の鉄の塊もある。間違いない、ルーシェの鉱物系魔法だ。
おそらく、ルーシェは獣型ゴーレム等で第四聖騎士団を全滅させた後、多数の人型ゴーレムを生成し、聖騎士の鎧や武器を持たせたのだ。
そのゴーレム軍団を率いて、第二、第三聖騎士団と戦ったのだろう。
その後、さらに進んで第一聖騎士団と対峙した時に、聖天使ラーが現れたのだ。
(ルーシェ様の行動経路は分かった。しかし……)
第四聖騎士団だけが干涸びていない理由が分からない。
星華は全滅した聖騎士団を調査しようとしたが、すぐにあることに気付いた。
(これは!?)
聖騎士たちが倒れている地面に丸い石が撒かれていたからだ。よく見ないと気付かないほどの小さな石だ。
さらに星華が調べてみると、聖騎士団が全滅した場所を中心に周囲十キロメートルほどに撒かれていることが分かった。
自然に地面に転がっている石でないことは確かだ。
銀色の石を摘んで観察してみると、星華は不思議な感覚に襲われた。
(もしかして!)
その時だった。
突然、星華は後方に何かの気配を感じその場から飛び跳ねた。
「貴女は……」
普段あまり表情を変えない星華でも少しだけ驚きの表情になる。
なぜなら、そこには一人の女性が立っていたからだ。




