第百十一話 再会
「よく俺の居場所が分かったね」
「エーレヴィンから聞いた」
「あいつ、余計なことを」
七大雄国であるエースライン帝国の皇子を呼び捨てにできる者など、アスト大陸に数えるほどしかいない。
そんな人物がここに二人も揃っている。
「そう言うな」
シャスターと同年代である少年は軽く苦笑した。
雪のような白髪に透き通るような白い肌、そして見る者に強い印象を与える蒼氷色の瞳が印象的な少年だ。
金色に輝く髪とルビーのような深紅の瞳を持つシャスターとは対照的な美しさだった。
万人が認めるであろう淡麗な容姿の少年が並んでいるのだ。二人をうっとりと眺めている客も少なくない。
しかし、そんなことは本人たちにとってどうでも良いことだった。
シャスターはつまらなそうに少年に尋ねる。
「それで、何しに来たの? ヴァルレイン」
その少年は水氷魔法の最高峰、伝説の五芒星の魔法学院の一つであるシーリス魔法学院の後継者、ヴァルレイン・シーリスだった。
「氷の棺が破壊された」
ヴァルレインは唐突に伝えた。
氷の棺というのは魂眠状態に陥ったフローレを救うためにヴァルレインが使った魔法「凍氷の棺」だ。その棺のおかげでフローレの身体は朽ちることなく生きている時と同じ状態で保たれているのだ。
しかし、それが破壊されたとなると、フローレの身体は長くは持たない。
「なぜ破壊された?」
険しい表情でシャスターが尋ねる。
シーリスの後継者であるヴァルレインの魔法を破壊することができる者など、そうはいないからだ。
「外から破壊されたのではない。内側から破壊されたようだ」
「内部から?」
ヴァルレインの意外な返答にシャスターとしては意味が分からない。
「それは確かなの?」
「ああ、確かだ。俺自身が確認したからな」
破壊されたことを知ったヴァルレインはすぐにレーシング王国に向かった。そこで破壊された氷の棺を見たのだ。
レーシング王国の王宮内は大変な慌てようだった。それはそうだろう、絶対破壊されない氷の棺が破壊されたのだ。そこに現れたヴァルレインに国王たちは謝罪した。しかし、当然ながら国王たちに非はない。
ヴァルレインは非は自分にあると国王たちを諭し、彼らに懇願されてシャスターを探しに出たのだ。
「それで、フローレは?」
さらに一段とシャスターの声が険しくなった。




