表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

802/811

第百八話 約束

 カリンとマレードは宴の後、喧嘩をした。

 といっても、カリンからマレードへの一方的なものだ。

 理由はユーリットのことだ。ユーリットの裏切り行為がカリンには許せないのだ。

 マレードとしてもカリンの気持ちはよく分かる。マレードもカリンの立場だったら同じ気持ちになっていただろう。

 しかし、マレードにはファルス神教騎士団としての立場があった。彼女としては騎士団長であるユーリットを疑うことはできないのだ。


「とりあえず、ユーリット騎士団長が来るのを待とう」


 寝室に引き篭もったカリンをマレードは扉の前でなだめていた。

 明日以降、ユーリットがカリンをデーメルン神の謎の聖堂に連れて行く約束をしていた。その時に気持ちの全てをぶつければいい。



 しかし、翌日になってもユーリットが現れることはなかった。


「ユーリット皇女殿下はいつ来るのかな?」


 一晩経って、カリンも落ち着いたようだ。

 八つ当たりをしてしまったマレードに朝一番にちゃんと謝った。しかし、ユーリットを許せない気持ちは変わらない。


「しばらく待ってみるしかないな」


「そうだね」


 しかし、それから数日が経ってもユーリットが現れることはなかった。こちらからユーリットに会いに行こうにも、そもそも何処にいるのかさえも分からない。

 仕方なく二人は何もすることもないまま、政庁で過ごすことにした。

 政庁はとても広い。高官たちはファルス神教の祝福者(ファルス・ブレッサー)であるカリンを敬っているようで皆親切だ。政庁内のどこに行っても、そこにいる高官が親切に施設を案内してくれる。

 カリンも最初のうちは楽しかったが、それも数日もすれば飽きてくる。


 シャスターの部屋にも行ってみたが、宴の翌日からシャスターは部屋にいなかった。給仕に聞いたところ、一度も部屋に帰ってきていないようだ。

 突然何も言わずにいなくなったシャスターにカリンは憤慨していたが、どうなるわけでもない。


 ただ、日数だけが過ぎ去っていった。



 そんな折、たまたま二人がいたラウンジの奥の通路を歩いている少女を見つけた。


「ユーリット騎士団長!」


 マレードが大声で駆け寄る。

 その声に気付いたユーリットはマレードとカリンを見つけると微笑んだ。


「こんにちは、マレード」


「こんにちは、ではありません!」


 憤った表情でマレードはユーリットの前に立った。


「ユーリット騎士団長、この数日間、なぜ一度も顔を見せないのですか?」


「ごめんなさい。毎日が忙しくて」


「八聖卿になったから忙しいのですか?」


 質問をしたのは後から来たカリンだった。

 その声にはかなりトゲがある。


「その通りよ、カリンちゃん」


 ユーリットはカリンに向き合った。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ