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第四十一話 ラティーマの旅人 19

 ルーシェ率いるゴーレム軍団は冥々の大地北東部から東に向かって行軍していた。


 ファルス神聖国第四聖騎士団から奪った防具と武器を装備した約千体もの人型ゴーレムと数十体の獣型ゴーレム、数十羽の鳥型ゴーレムもいる。そして、その先頭には馬型ゴーレムに乗ったルーシェがいた。

 人型ゴーレムは歩兵のため進む速度はゆっくりだが、疲れを知らない。休むことなく歩き続けることができる。


「遠回りになるけど、まぁいいか。急ぐ旅でもないし」


 目の前に広がる山脈の向こう側がファルス神聖国だ。しかし、山脈を越える道はない。ルーシェだけなら険しい山でも楽々と超えられるが、千体もの人型ゴーレムには難しい。

 そこで、ルーシェは東に進路を変えた。ファルス神聖国に向けて流れる川沿いの道を進むことにしたからだ。大軍が通るのにはこの道しかない。ルーシェに全滅させられたファルス神聖国第四聖騎士団も同じ道を通ってきたはずだ。



「このまま進めば、あと一時間ぐらいかな」


 ルーシェの目の前の空間には周辺の地図が映し出されていた。

 索敵に出している何十ものゴーレムから彼女の位置情報が地図として表示されているのだ。だからこそ、ルーシェはこれから起こることも分かっていた。


「およそ五万の軍勢か」


 地図上にはゴーレム軍団が進む進路の先に大きな長方形がこちらに向かっている映像が映り出されていた。この長方形はファルス神聖国方面から川沿いを通って進んできたようだ。


 間違いない、ファルス神聖国の軍隊だ。


「それにしても早いなー」


 ファルス神聖国第四聖騎士団を全滅させたのはまだ一昨日だ。それなのにもう次の軍隊が到着するとは、ルーシェも驚きを禁じ得ない。


「あるいは、最初から織り込み済みだったかな」


 ファルス神聖国にとって、五芒星の後継者による第四聖騎士団の全滅が想定内だったとしたら、この早さも納得できる。


「だとしても、私のゴーレム軍団は想定外のはず」


 ここまで来ると、互いに神経戦の様相を呈してくる。

 ルーシェは満面の笑みを浮かべた。

 楽しくて仕方がないのだ。


「全軍、最速で進め!」


 ルーシェの号令とともにゴーレム軍団は歩みを速めた。



 それから一時間後、両陣営は対峙した。

 ファルス神聖国側は五万もの大軍が左右に広く展開している。ただし、聖騎士団ではなく、通常の兵士だけで構成されている軍のようだ。

 数だけみればファルス神聖国軍五万に対し、ゴーレム軍はたったの千体だ。ゴーレム軍が圧倒的に不利に見える。


 しかし、戦いが始まればどちらの方が圧倒的に有利なのか、ファルス神聖国軍は十分に分かっているようだ。だからこそ、数的に優位にも関わらず、突撃してこない。それどころか、兵士たちは青ざめながらゴーレム軍団を見つめている。


 それはそうだろう。まさか目の前に現れた敵が異様な姿の化け物の軍隊などと想像できるはずがない。



「ふぅーん。やはり、知らなかったんだ」


 しばらくの間だけでもルーシェを足止めをさせるための軍隊なのだろう。


「攻めて来ないのかな」


 つまらなそうにルーシェはあくびをした。



皆さま、いつも「五芒星の後継者」を読んで頂き、ありがとうございます!


今回から再びルーシェの話になりました。

ルーシェのゴーレム軍団がどうなっていくのか、楽しみにして貰えたら嬉しいです。


それでは、これからも「五芒星の後継者」をよろしくお願いします!

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