第七十三話 新たなる始まり &(登場人物紹介、MAP)
「それじゃ行ってくる」
皆が見送りする中、まるで近くへピクニックに行くかのような軽い口調でシャスターは馬を進めた。
そんなシャスターたちをラウスたちは影が見えなくなるまでずっと見送りした。
「ラウス様、大丈夫でしょうか?」
シャスターたちが見えなくなった後、エルマがシャスターの身を少し不安になって尋ねる。
先ほどの話といい、シャスターの行動が軽く感じられて、これから先が心配だったからだ。まだまだ子供だし、仕方がないのかもしれないが。
しかし、ラウスは笑うだけだった。
「エルマよ、あの御方はああ見えて、しっかり先のことを考えている。我々よりもずっとな」
シャスターは見た目が飄々としているが、実際には様々な事柄を考えていた。そのことはラウスよりもエルマの方が何度も目にしていたことだ。
「確かに、その通りでした」
「それに、あの御方を我々が心配してどうする? 伝説と謳われる五つの魔法学院の一つ、イオ魔法学院の後継者であらせられるのだぞ。我々が『五芒星の後継者』のおひとりを憂うなど、それこそ杞憂だ」
「左様です。逆にシャスター様の方が、レーシング王国の未来について不安に思っているかもしれません」
「マルバスの言うとおりだ。これからは我々が一丸となって国民のために王国を再建しなくてはならない。ウルよ」
「はっ!」
突然呼ばれたウルは頭を下げた。
「王領騎士団も力を貸してくれるな?」
「もちろんです。王領騎士団は国王ラウス様のものでございます。ご自由に我々をお使いください。それに個人的なことを申し上げると、私はあの方には大きな貸しを作ってしまいました」
ウルたちは今回の戦いで、騎士道とは何であるかを教えられた。そして自分たちを目覚めさせてくれた。
だからこそ、シャスターが変えてくれたこの国をラウス国王と一緒につくり上げていくことが何よりの恩返しだと、ウルは心に決めていた。
「ウルよ、そう自分だけで背負い込むことはない。貸しを作ってしまったのなら、ここにいる我々も同じだ。だから、今度シャスター様が戻って来た時には驚いてもらえるような素晴らしい国をつくろう!」
「はい!」
ウルは笑った。その屈託のない笑顔を初めて見たラウスは、全ての国民が笑顔でいられる国をつくろうと強く決意した。
「エルマ、マルバス、ウル、ここからが新たなレーシング王国のスタートだ!」
「おぉー!」
四人が抜いた剣が雲一つない青空に向けられて光り輝く。
新生レーシング王国の始まりだった。
♦♢♦♢♦♢♦ レーシング王国 MAP ♦♢♦♢♦♢♦
第一章 主要登場人物
シャスター
主人公。
かなりの剣の使い手であるが、その正体は圧倒的な魔力を持つ魔法使い。伝説の火炎系魔法の最高峰、イオ魔法学院の後継者であり、「五芒星の後継者」の一人。
金色の髪と真紅の瞳を持つ容姿端麗な少年だが、性格に少々難(?)あり。
カリン
レーシング王国西領土にある町の一つ、フェルド町の町長の孫。真っ直ぐな性格で、責任感が強い。神官見習いの経験があり、神聖魔法の使い手でもある。
フローレの魂眠の治す方法を探すため、シャスターと共に旅をすることになる。
星華
シャスターと旅を続けている少女。稀有な職業クラスである忍者、さらにその中でも「くノ一」の称号を持つ実力者であり、最上位マスター。シャスターとは強い絆で結ばれた主従関係。基本、無口。
フローレ
デニムに殺されるところをシャスターに助けられた少女。シャスターを慕い続け、シャスターの為に行動をする。小さい頃から隣町のカリンをよく知っていて、カリンからは「フローレ姉さん」と呼ばれている。オイト国王の攻撃魔法を受け、死は免れたものの魂眠に陥ってしまい、氷の棺の中で眠りについている。
オイト国王
レーシング王国国王。残虐非道。火炎系魔法使いである。
デニム
レーシング王国西領土領主。オイト国王の長男で、オイト同様悪虐非道。火炎系魔法使いであり、弟ラウスを嫌っている。
ラウス
レーシング王国東領土領主。オイト国王の次男。新生レーシング王国の国王となる。
エルマ
西領土の傭兵隊長であるが、本当の正体はラウスの腹心。
マルバス
西領土騎士団の副騎士団長だったが、シャスターによってその任を解かれる。後にラウスの臣下となり、反乱に加担。
ウル
王領騎士団長。
シーリス魔法学院の後継者
魂眠に陥ったフローレを氷の棺の魔法で閉じ込め、死への時を止めてくれた。水氷系魔法最高峰、伝説のシーリス魔法学院の後継者であり、シャスター同様「五芒星の後継者」の一人。
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皆さま、いつも読んで頂き、ありがとうございます!
「レーシング王国編」は、これで終わりとなります。
最後まで読んで頂き、ありがとうございました!
次回からは第二章となります。
追記
レーシング王国周辺の地図を添付しました。
(エクセルの素人地図ですいません・・・)
読んでくださっている皆さま、これからもよろしくお願いします!




