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第十九話 新たな旅立ち

 修業で神官レベルが四十になったカリンは、クラム大神官長からファルス神聖国へ行く許可を得た。



 それから数日後。


 カリンとマレードは帝都エースヒルの市民区のある一角に来ていた。


 帝都エースヒルは円形状の超巨大都市であり、周囲の長さは約五十キロメートルにも及ぶ。帝都の中心地には皇宮あり、そこから皇区、特区、市民区と広がっている構造だ。当然ながら、帝都民百五十万人のほとんどが暮らす市民区が最も広い面積を占めていた。

 カリンが修行していたファルス神教帝都本部も市民区にあるが、今いる場所は特区を挟んでちょうど反対側なのでカリンは一度も来たことがなかった。



「何なの、この建物は?」


 カリンは頭上を見上げて驚きの声を上げた。

 彼女の周りには大きな建物がいくつも建っていたからだ。


「これは全て商館だ。この辺は大商人たちが多いからな」


「商館?」


「ああ。大商人たちの店だな。大量の商品を貿易するのに、この場所はうってつけだからな」


 そう言ってマレードが指差した場所には巨大な流線型の建物が建っていた。


「あれは?」


「駅だ」


「駅って?」


 カリンはキョトンとしている。


「そうか、カリンは知らないのだったな。よし! ここで説明するよりも行ってみたほうが早いな」


 そう言うと、マレードはカリンの腕を引っ張って駅へ連れて行った。



「わぁー!」


 駅の中に入ったカリンはさらに驚く。

 流線型の建物の中は吹き抜けになっていて、幾つもの階層に別れていた。さらに、それぞれの階では大勢の人々が行き交っている。

 人々の種族も多種多様だ。カリンは帝都に来てからエルフやドワーフなどの種族を見てきたが、この駅には今まで見たことがない種族が多くいた。


「駅って凄い場所なんだ!」


 駅に着いて驚くことばかりのカリンだが、その中でも一際目を引くのが、駅の中を端から端まで延びている巨大な細長い物体だ。


「マレード、あの魔法輸送車(マジック・バス)を繋げたような、長細い物は何?」


「あははは。魔法輸送車(マジック・バス)を繋げたとは、まさにピッタリな表現だな。あれは大陸横断鉄道を走る列車だ」


「大陸横断鉄道? 列車?」


 カリンは初めて聞く名前だ。


「ああ。帝都内を決まったルートで移動するのが魔法輸送車(マジック・バス)だが、その移動距離を桁違いに長くしたのが大陸横断鉄道の列車さ」


 マレードは説明を続ける。

 列車とは魔法輸送車(マジック・バス)のような乗り物が何十も繋がった乗り物だと考えると分かりやすい。魔法輸送車(マジック・バス)と大きく違うところは、敷かれた線路(レール)の上を車輪で動くことにより、先頭車両だけに動力源となる巨大なマジックアイテムが組み込まれている。

 大陸横断鉄道はその名の通りアスト大陸を横断していて、その途中にある主だった国々に列車が停車するための駅が建造されていた。



「馬で移動するよりもずっと速く、安全性も高いんだ」


「だから、色々な国で商売している大商人たちが品物を運ぶため、駅の近くに商館が多いのね」


 カリンはすぐに理解したが、同時に疑問も出てくる。


「それじゃ、商人たちは大陸街道を使わずにみんなこの大陸横断鉄道で輸送すればいいんじゃない?」


「そういうわけにはいかないのさ」


「?」


 不思議そうなカリンにマレードは笑いながら答える。


「無料じゃないからな」


 ああ、そういうことか、とカリンも納得した。

 馬よりもずっと速く動けて安全性が高いとなれば、かなりのお金が掛かるのだろう。だからこそ、大陸横断鉄道は大豪商たちしか使えないのだ。


「というわけで、この大陸横断鉄道に私たちは乗るんだ」


 マレードは無邪気に笑った。



いつも「五芒星の後継者」を読んで頂き、ありがとうございます!


さて、第一話からルーシェの話が続きましたが、今話から本編に戻ってカリンのお話から始まります。

今までカリンは修行していたので、「カリンの修行」のタイトルで各章に分散して載せていましたが、修行が終わったので本編と合流となりました。

カリンの新たな旅を楽しみにして貰えたら嬉しいです。


こらからも「五芒星の後継者」をよろしくお願いします!


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