第十八話 ラティーマの旅人 18
「た、助けてくれ!」
シスマルグは必死になって懇願した。
しかし、ルーシェは軽くため息をつくだけだ。
「バカね、助けるはずがないでしょ?」
「ま、まって……」
「水晶の刃」
次の瞬間、シスマルグの首が刎ねられた。
彼だけではない、テントにいる全ての者たちの首が飛んだ。
血飛沫を撒き散らしながら胴体だけとなった身体はそのまま床に転がる。
ファルス神聖国第四騎士団。
冥々の大地に侵攻し、いくつも村々を残虐の限りを尽くし滅ぼしていた彼らは、たったひとりの少女によって一夜にして全滅した。
「ふふふーん」
千名もの死体の中で唯一生きている少女はご機嫌だった。ハミングしながら死体の中を歩いている。
機嫌の良い理由はファルス神聖国第四聖騎士団を全滅させたからではない。倒した後にやってみたいことがあったからだ。
「生成」
ルーシェが両手を上げて叫ぶ。
すると、辺り一面に無数の玉が現れた。さらに玉は徐々に形を変えながら人型の人形に変化していく。ルーシェ得意のゴーレムだ。
それらのゴーレムはまるで全身が金属でできているかのように銀色に輝いている。さらに人型ゴーレムたちは地面に倒れている聖騎士たちの防具や武器を剥ぎ取り自分たちに装着し始めた。
ルーシェがやってみたいことはこれであった。
ゴーレムに防具や武器を持たせたのだ。しかも、聖騎士団の防具は全てが高レベルの質の良いものであり、武器に関しても多くの者が魔法の剣を持っていた。それらを無傷で手に入れるため、ルーシェはなるべく防具や武器が傷付かない魔法を放ったのだ。
「よし、完成!」
ルーシェが嬉しそうな声を上げる。
その少女の後ろには鎧を装着して剣を携えた千体もの人型ゴーレムが平然と並んでいる。
「出発!」
地上最恐のゴーレム軍団の誕生であった。




