第七話 ラティーマの旅人 7
「見つけたぞ!」
ひとりの聖騎士が細い路地に隠れている二人の幼い子どもを見つけた。二人は兄弟のようだ。
「安心しろ、兄ちゃんが守ってやる!」
兄は恐怖で震えているが、健気にも弟を守るために聖騎士の前に立ち塞がっている。
それが聖騎士にはたまらない。
「おぉ、美しい兄弟愛だな」
聖騎士は嬉しそうにニヤけると、あっという間に兄弟たちの背後に回り込んだ。
「離して!」
弟が叫ぶ。
聖騎士が弟の腕を掴み、持ち上げているからだ。
「やめろ!」
兄が聖騎士に向かって飛び掛かるが、一蹴りをくらっただけで吹っ飛んでしまった。
「先に弟を殺すことにした。何もできない無気力な自分を恨むがいい」
聖騎士が残忍な笑みを浮かべる。
「兄ちゃんー!」
弟が泣き叫ぶ。
しかし、蹴りをまともにくらった兄はすぐには立ち上がれない。
「安心しろ。弟を殺した後、すぐに貴様も殺してやる。兄弟仲良くあの世行きだ」
聖騎士は嬉しそうに大笑いする。
それを見て兄は自分の無力さを呪いながら空を睨んだ。
こんな奴らがなぜ聖騎士なんだ。
ファルスの神様はなぜ助けてくれないんだ。
これじゃ、まるで……。
「ファルスの神様は悪魔だ!」
思わず声が出てしまった。しかも、自分でも驚くほどの大きな声で兄は叫んでしまった。
「何だと!? 貴様―!」
弟の手を離した聖騎士は怒りの形相で兄の首を絞めつけた。自分たちが信仰している神々を悪魔呼ばわりされたのだ。激怒するのは当然だった。
聖騎士の力は窒息死させるような生易しいものではない。首の骨を折るつもりなのだ。
兄は必死になってもがくが、到底聖騎士には敵わない。
「さっさと死んで地獄に落ちろ!」
聖騎士はさらに力を強めた。
「うぅ……」
兄はうめき声を上げながら苦しんでいたが、その声も徐々に小さくなっていく。その声が聞こえなくなった時が兄の最後なのだろう。
「誰か、兄ちゃんを助けて!」
弟が大声で叫ぶが、当然誰も助けに来るはずがない。
「お願い! 誰か、兄ちゃんを助けて!」
それでも弟は必死になって叫び続ける。
その時だった。
コツン。
聖騎士の後頭部に何かが当たった。
「ん!?」
訝し気に聖騎士は自分の頭を触ったが何もない。
「気のせいか」
聖騎士は再び兄の首を絞めつけた。
しかし、その直後、またもや後頭部に何かが当たる。
「小石か?」
二度目となると単なる気のせいではない。とはいえ、小石が軽く当たるような感覚で痛みはない。
もう一度、頭を触った聖騎士だったが、その時さらに何かが当たった。
「何だ!?」
思わず振り向いた聖騎士はそこにあるものを見た。
「何だ、貴様は?」
そこにはひとりの少女が立っていた。