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第六十八話 暁の影
祝賀会が終わり、王城がやっと静寂に満たされた頃、すでに外は明け方を迎える時間となっていた。
フローレが眠っている部屋の窓からも、弱々しい日の光が差し込み始める。
そこに一つの影が舞い降りた。
「この少女か」
その影はフローレを確認すると、意識のないフローレに向けて片手を上げる。すると、フローレの身体がベッドから離れ、宙に浮かんだ。
「すぐに楽にしてやる」
影はフローレに掌を向ける。
するとその掌から放たれた青白い光が、フローレを襲い始めた。
当然、意識のないフローレは悲鳴を上げない。
しかし、血色の良かった肌からは、見る見るうちに血の気が失せていった。
青白い光が放たれた時間は僅か十数秒だったが、影にとってはそれで充分だった。
そのまま、フローレの生死を確認することもなく、影は忽然と姿を消した。
そして部屋にはまるで何事もなかったかのように、再び静寂が戻った。




