第六十一話 夜空の後
「イオ魔法学院の後継者シャスター・イオとして、オイト・レーシング、お前に制裁を与える」
「シャスター様! お許しを、お許しを。もう二度と裏切りません! シャスター様に忠誠を違います! どうかお許しを……」
泣き叫びながら許しを請うオイトだったが、シャスターはそのまま右手を振り下げる。
それと同時だった。
十数個の光の球から放たれた光線がオイトの身体を包み込むと、身体の周囲が激しく輝き始める。
さらにその光はどんどんと明るさを増してゆき、突然爆発したかのように眩しく光り輝いた。
あまりにも激しい光の爆発は、その光景を見ていた全ての者たちの視界を奪ってしまった。
「うわぁ!」
各所で騎士たちの驚きと慌てふためいた声が響く。ラウスたちも例外なく視界を奪われてしまった。
しかし、ただ一人カリンだけは星華が両手で目を押さえてくれたおかげで、その後の光景を見ることができた。
オイトの身体を包んでいた光は爆発した後、徐々に明るさを失っていき、最後には消えてしまった。
そして、その光の後にはオイトも消えてしまっていた。
不思議な現象だった。今日初めて魔法というものを見たカリンは何が何だか分からない。
でも、シャスターの強さだけは理解できた。
そして、カリンがシャスターと星華の強さを比べた時、星華が自嘲気味に笑った意味がやっと分かった。
「あんな魔法……」
反則的な強さだよ、と言おうとして、カリンは言葉を止めた。
反則的な強さになるまでには、きっとその分、血も滲むような努力をしてきたに違いないからだ。
だからこそ、簡単な言葉で片付けてはいけないのだ。
そんなカリンの気持ちを察してか、星華も話し始めた。
「シャスター様はこの十年間、凄まじい修行をしてきました。才能と努力の賜物が今のシャスター様なのです」
少しだけ誇らしげに、そして嬉しそうに聞こえたカリンは優しく微笑んだ。
「星華さんもきっと同じように努力してきたのですね」
星華は何かを言おうとしたが、すぐにやめて夜空を見上げた。
全てが終わったのだ。




