第六十八話 誤算
「な、なんなのだ……これは!?」
夜空に浮かびながら、呆然とたたずむ青年がいる。
ギース子爵だ。
彼の誇る最強の軍隊、下位の吸血鬼の王百体がたった数人の人間たちによって、いとも簡単に倒されていく。
あり得ない光景だった。
計画では、ダーヴィス将軍たちを血祭りにあげた後、そのまま冥々の大地の他地域へ下位の吸血鬼の王を使い、攻め入るつもりだったのだ。
しかし、ギース子爵の野望はあっけなく消え去ってしまった。眼下に広がる荒野には、もう数体の下位の吸血の王しか残っていない。
「ま、まさか、人間の分際で、ここまで強いとは……」
ギース子爵には目の前の光景が信じられなかった。
そもそも魔物の王が一体出現しただけで、小国なら滅びるといわれている。そんな魔物の王を下位の吸血鬼としてさらに進化させたのが下位の吸血鬼の王だ。当然ながら、その戦闘力は魔物の王より数倍も高い。
それが百体もいる、最強の軍隊だ。
ギース子爵にしてみれば、ダーヴィス将軍など簡単に殺せると思っていたのだが。
ギース子爵は空を睨んだ。
「これも全て天界が悪いのだ!」
「自分の弱さを他人のせいにするなんて、みっともないよ」
「なっ!?」
自分の背後に浮かんでいる少年にギース子爵は驚く。
「貴様、いつの間に……」
次の瞬間、ギース子爵の首側面にシャスターの手刀が当たる。
そのまま気を失ったギース子爵は地上に落ちていった。
皆さま、いつも「五芒星の後継者」を読んで頂き、ありがとうございます!
この回で、トータル400話に達成することができました。
1年ちょっと経ちましたが、ここまで続けることができたのも、皆さまのおかげです。
本当にありがとうございます!
さらに500、600話……と続けていきますので、これからも「五芒星の後継者」をよろしくお願いします!




