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第五十話 冥々の大地の支配者  &(登場人物紹介)

「ただ今、戻りました」


 青年が玉座に座っていた薄暗い部屋に、もう一つの気配が現れた。


「ブランか? 遅かったな」


「申し訳ございません。人間が住む残りの二つの村はここからかなり離れておりまして、時間が掛かってしまいました」


「そうか、ご苦労だった」


「はっ! ところでその娘は?」


 ブランと呼ばれた男は、青年の横に立っている女性を見つめた。青年に噛まれた女性は下級吸血鬼レッサー・ヴァンパイアとなり、青年の従順な下僕としておとなしくしている。



「俺が人間の村で見つけてきた女だ。良い女だったので子爵に献上したのさ」


 さらにもう一つ現れた気配が青年の代わりに答える。


「ノルトよ。この娘、なかなか良い血だったぞ」


「ありがとうございます」


 ノルトと呼ばれた男も青年の前に現れてひざまずく。



 ブランとノルトは見た目が似ていた。細身の体型で歳の頃は共に青年よりも一回りほど上だろうか。そして青年と同様に白い肌。ただし髪型は違った。ブランは長髪だがノルトは短髪だ。

 二人とも礼服をまとっている。


 ノルトは優越感の表情でブランを横目で見た。対照的にブランは苦々しい表情をしている。


「ブランよ、貴様も俺のように、美しい娘を献上すれば良いものを」


「うるさい! 俺は遠くにある人間の村を二つ滅ぼしていたのだ。そんな余裕はない」


「戦い方が粗雑なだけだろう?」


「近場にある人間とリザードマンの村を滅ぼした程度で調子に乗るな!」


「二人とも子爵の御前である。言葉を慎めよ」


 二人の言い争いを諌めたのは、三つ目の気配だった。彼らの後ろにもう一つの影が現れたのだ。



「ダルも戻ってきたか。冥々の大地の南東部はどうであった?」


「はい。南東部の支配者であるケンタウロス族は知恵も体力もある種族であり少々時間が掛かってしまいましたが、滅ぼしてきました」


 ダルと呼ばれた男は静かに答える。やはりダルも二人と似てはいるが、ダルは眼鏡をかけていた。


「そうか。これで我らが冥々の大地、南部一帯を支配したということだな」


「おめでとうございます」


 三人は声を揃えて青年を称賛した。




これまでの主要な登場人物



○一章からの登場人物


シャスター

伝説の魔法学院、火炎系魔法の最高峰であるイオ魔法学院の後継者であり、「五芒星の後継者」のひとり。

レーシング王国で魂眠(こんみん)に陥ってしまったフローレを治す方法を探しに、エースライン帝国の帝都エースヒルに来た。

その後、帝国を襲った魔物の(ロード)知死者(モルス)を仕向けた犯人を探し出すために冥々の大地に赴いている。自分たちを挑発するため吸血鬼(ヴァンパイア)が人間とリザードマンの村を全滅させたことに怒りを覚えている。



カリン

神聖魔法の使い手(ホーリーユーザー)

魂眠(こんみん)に陥ったフローレを治す方法を探す為、シャスターと共に旅に出た。

神官レベルが一気に三十五に上がり、大陸唯一のファルス十二神全ての神々との契約者となった為、ファルス神教の祝福者(ファルス・ブレッサー)と呼ばれている。

異端神扱いの冥界神デーメルンとも契約ができてしまったが、そのデーメルンが魂眠を治せる可能性があることを知り、シャスターと別れてクラム大神官長の元で修行をすることになった。



星華

シャスターの守護者(ガーディアン)

稀有な職業「忍者」、その中でも上忍しか名乗ることが許されない「くノ一」の称号を持つ。

シャスターとは固い絆で結ばれている。

自分の素性を守るためなら、エースライン帝国皇帝の前でさえも記憶を消す薬を撒くほど、怯むことなき性格であり、大胆さと冷静さを持つ。

現在、シャスターと共に冥々の大地に赴いている。



フローレ

レーシング王国の領主に殺されるところをシャスターに助けられた少女。シャスターを心から慕っている。

小さい頃から隣町のカリンをよく知っていて、カリンからは「フローレ姉さん」と呼ばれている。

カリンを守るために攻撃魔法を受けてしまい、死は免れたものの、魂と身体が分離したままの状態、魂眠(こんみん)に陥ってしまう。

現在レーシング王国王宮にて、シーリス魔法学院の後継者ヴァルレインがつくった氷の棺の中で眠りについている。



○エースライン帝国


・皇族


シャード皇帝

百数十の国々がある広大なアスト大陸において、七大雄国(セフティマ・グラン)の一角であるエースライン帝国の皇帝であり、エーレヴィン、エルシーネたちの父である。

冥々の大地での調査パーティーの行動に関して、シャスターに全権を与えて、責任は皇帝自らが負うという英断を下した。



エーレヴィン

エースライン帝国宰相。

シャード皇帝の皇子であり、エルシーネ、ユーリットの兄。シャスターとは仲が良い。

戦略の天才であり、僅かな手掛かりから魔物の(ロード)知死者(モルス)を仕向けた犯人が冥々の大地にいることに気付いていた。

常に冷静沈着であり、エルシーネに対しても正論と嫌味で説き伏せてしまう為、それがエルシーネにとっては気に入らないらしい。



エルシーネ

エースライン帝国の第二皇女であり、帝国の有するペガサス騎士団の騎士団長、そしてエースライン帝国が誇る十輝将(じゅうきしょう)のひとり。

シャスターとは以前からの知り合い。兄のエーレヴィンのことが大の苦手で大嫌い。

シャスターと共に冥々の大地に赴いている。



ユーリット

エースライン帝国の第三皇女であり、ファルス神教騎士団の騎士団長。

ファルス神教騎士団は全員が神聖魔法を扱える神官であるのと同時に、騎士としての訓練を受けている聖騎士(パラディン)であるが、十八歳にてファルス神教騎士団長に就いているほどの実力者。

姉のエルシーネとは仲が良い。

現在、任務で他国に赴いていてエースライン帝国にはいない。



・十輝将


エルシーネ

ペガサス騎士団、騎士団長。

皇族に記載



ダーヴィス将軍

常に巨大な戦斧を背中に掛けている偉丈夫であるが、見た目に反して知略型の将軍でもあり、情報戦に長けている。

帝国の北東部を守護しており、国境都市クーゼンの統治者である。

隣接している冥々の大地にも精通していて、南西部の支配者である吸血鬼(ヴァンパイア)とも交易をしていた。

そのため、案内役を兼ねてシャスターたちの冥々の大地調査パーティーに加わっている。



イルザーク将軍

エースライン帝国の北部に広がるホールン山脈一帯を守護している。

イルザーク将軍のもとへ謎の少女が現れたことを知ったエーレヴィンは、少女をシャスターに接触させない為、冥々の大地への出発を早めた。



ザン将軍

エースライン帝国の南東部の国境都市シャイドラの統治者であり、帝国の南東一帯を守護している。

ゴブリン軍を殲滅させた後、シャスターたちと共に帝都に赴いていた。



アルレート将軍

エースライン帝国の東部を守護している。

ゴブリン・ロードを圧倒的な力の差で倒した後、帝都に凱旋。シャスターとの無断試合をリクスト将軍に見つかってしまい、その罰として帝都に現れた亡魔の騎士(フィーンドナイト)一体の討伐を命じられて倒した。



リクスト将軍

弱冠十四歳にして百五十万人を抱える帝都エースヒル防衛の最高責任者になったほどの少年。現在、十五歳。

将軍になる前はアルレート将軍下で副将を務めていた。

帝都に現れた亡魔の騎士(フィーンドナイト)一体を倒した。



エルーミ将軍

容姿や振る舞いは華麗な貴婦人にしか見えないが、槍の使い手として帝国内に彼女の右に出る者はいない。

帝国西部の国境に広がるベルナ湿地帯の一帯を守護している。ロード化した三匹の魔物の一匹、コボルト・ロードを倒した。



ヒューズ将軍

見た目は大人しそうな青年だが、得意とする細長い長刀はその長身と相まって凄まじい威力を繰り出す。

帝国の南部を東西に走るゲンマーク山脈一帯を守護している。ロード化した三匹の魔物の一匹、オーク・ロードを倒した。



・ファルス神教


クラム大神官

年齢不詳の穏やかな美しい女性。

エースライン帝国でのファルス神教の最高位の神官であり、周辺国でも大きな影響力を持っている。神官としての能力・実力ともに帝国トップ。

ファルス神教帝都本部にてカリンを修行をすることになったが、その際に少々悪戯っ子でお茶目な性格がカリンに露見してしまった。



ユーリット

ファルス神教騎士団、騎士団長。

皇族に記載。



レーゼン

ファルス神教騎士団のナンバー2、副騎士団長。

吸血鬼(ヴァンパイア)と戦った経験があり、クラム大神官長以上の吸血鬼(ヴァンパイア)の知識を持っている。

現在、シャスターたちと共に冥々の大地へ赴いている。

神に反するアンデッドを邪悪な存在と認識していて、人間やリザードマンの村を全滅させた吸血鬼(ヴァンパイア)に憤りを覚えている。



マレード

ファルス神教騎士団のナンバー3、第一分団長。

見た目は可愛いらしい貴婦人だが、話してみるとハッキリとした性格で気さくで親しみやすい女性。

ユーリット騎士団長の命令によって、カリンの警護にあたることになった。



ザーラ神官長

カリンが暮らすことになる宿舎の館長。




☆その他


ヴァルレイン

水氷系魔法の総本山、シーリス魔法学院の後継者であり、「五芒星の後継者」のひとり。

魂眠(こんみん)に陥ったフローレを魔法で凍らせて助けた。

アイヤール王国でシャスターと戦った後、苦手なエルシーネが現れた為、その場をシャスターに任せて消えてしまった。現在の所在地は不明。



謎の少女

十代前半の少女。

異形の巨大狼に乗って山々を駆けていたが、帝国北部の国境都市ルズを統治しているイルザーク将軍の元に突然現れた。

その際、帝国会議の内容を聞いたらしく、理由は分からないが冥々の大地に向かっている。



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