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第四十三話 カリンの修行1

「ここが今日からカリンさんが暮らす場所です」


 シャスターたちと別れたカリンは、クラム大神官長に連れられて敷地内の外れにある館に着いた。


 目の前に建っている館は、先ほどまでいた十階建ての巨大な館と比べたら小さい。

 さらに、同じような館が周辺に十数棟も建っている。


「この館は一般神官や神官見習いたちの住まいなのです」


 ここに建っている館は全て一般神官と神官見習いが暮らしている宿舎であった。


 神官にも階級がある。神官見習いから始まり、神官になると三級、二級、一級と上がっていく。一級までが一般神官であり、その上が神官長だ。


 クラム大神官長の話では、ここ帝都本部だけでも神官が約千人、神官見習いが三千人いるとのことだった。

 その人数を聞いて、カリンは驚いた。レーシング王国全体でも神官の数は百人程しかいない。それが帝都エースヒルだけでも千人とは、エースライン帝国全体ではどれほどの人数がいるのだろうか。


 カリンはまじまじとクラム大神官長を見た。

 そのエースライン帝国全ての神官の頂点に立っているのが、目の前にいるクラム大神官長なのだ。


「どうかしましたか? カリンさん」


「あっ、いえ、何でもありません」


 カリンは慌てて視線を外した。

 カリンにとって雲の上のそのまた上の人と、こうやって話をしていることがやはり信じられない。しかし、ほっぺを軽くつねると痛い。やはり事実なのだ。



「それでは、この館の館長を紹介しますね」


 クラム大神官長が館の入口に立つと扉が開き、中年の女性が出てきた。女性はクラム大神官長に深々と頭を下げると、カリンを視線を向けた。


「カリンさん、館長のザーラ神官長です」


「ザーラです。ファルス神教の祝福者(ファルス・ブレッサー)、よろしくお願いします」


「カ、カリンです。こ、こちらこそ、よろしくお願い致します」


 カリンは大きく頭を下げた。神官長といえば、普通は一国の最高位の神官だ。

 ここ最近、クラム大神官長をはじめ、それ以上の階級の高い神官ばかりに会っていたため、カリンの感覚は麻痺していたが、やはり神官長と聞くと緊張してしまう。

 そんなカリンを見て、少し微笑んだザーラ神官長が説明を始めた。



ファルス神教の祝福者(ファルス・ブレッサー)には他の一般神官たちと同様、朝は敷地内の清掃、午前中は教典などの勉強をしてもらいます。また、部屋も二人で一部屋を使うことになります」


 ファルス神教の祝福者(ファルス・ブレッサー)だとしても特別扱いしないということだ。カリンも他の一般神官たちと同じように毎日仕事をしなければならない。

 しかし、これはカリンにとっては嬉しいことだった。カリンには自分がファルス神教の祝福者(ファルス・ブレッサー)で特別だという自惚は無い。

 それどころか、レーシング王国で神官見習いだったカリンにとって、神官たちと一緒に仕事ができるだけでもありがたいことだと思っていた。


「はい。よろしくお願いします!」


 元気よく頭を下げたカリンをザーラ神官長はますます微笑んで見つめた。



「ちょうど今、貴女と同じ部屋になる方が来ています。彼女も今日からここで暮らすのですが……呼んできますね。少し待っていてください」


 ザーラ神官長は館の中に戻っていった。

 と同時に、カリンは急にドキドキし始めた。今からルームメイトになる人物と会うからだ。

 どんな人なのだろう。今日からということは、自分と同じで神官になりたてなのかな。

 期待と不安を持ちながら、カリンは館から出てくる人物を待っていたのだが。


「お連れしました」


「えっ!?」


 カリンはザーラ神官長と一緒に現れた人物の格好に驚く。

 神官なのに、神官の服装ではないからだ。いや、それどころか、普通の服装でもない。


「マレードだ。ファルス神教の祝福者(ファルス・ブレッサー)、よろしく頼む」


 マレードと名乗った女性はカリンに握手を求めた。カリンは驚きながらも握手に応える。


「カリンです……よろしくお願いします」


「カリン殿か。ファルス神教の祝福者(ファルス・ブレッサー)は長々しいから、カリンで良いか? 私もマレードで構わない。同じ部屋だし、早く仲良くなりたいので、互いに敬語はやめよう」


 とても気さくで親しみやすい女性だ。カリンは好印象を受けた。年齢はカリンより少し上のように見える。


 しかし、それよりもだ。


「あの……マレードさんはどうして……」


「マレードだ」


「……マレードは、どうして騎士の格好をしているの?」


 カリンは見たままの質問をした。

 この館で暮らしているのは一般神官のはずだ。それなのに、マレードは神官服ではなく騎士の姿なのだ。


「ん? あぁ、これか」


 マレードは自分の格好を見ながら笑った。


「私はファルス神教騎士団の聖騎士(パラディン)だからな」


 もう一度、マレードは笑った。



皆さま、いつも「五芒星の後継者」を読んで頂き、ありがとうございます!


今回から数話、神官の修行を始めたカリンのお話を載せていきます。

シャスターと別れたカリンですが、ファルス神教の帝都本部で新たな生活が始まります。

どんな生活が始まるのか、楽しみに読んで貰えたら嬉しいです。


それでは、これからも「五芒星の後継者」をよろしくお願いします!


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