第三十二話 国境都市クーゼン &(帝国中央〜北部周辺MAP)
クーゼン城のバルコニーにはすでに何人かの者たちが出迎えていた。その者たちの先頭には巨大な戦斧を背中に掛けた長身の男が立っている。
そこへペガサスが舞い降りた。
「ダーヴィス将軍、直接会うのは久しぶりね」
「エルシーネ皇女殿下もお変わりないようで。それにしても相変わらず無茶な到着をされる」
ダーヴィス将軍が頭を下げながらも少しだけ抗議の意思を示した。深夜に暗闇の空から飛行物体が直接クーゼン城を目指して現れたのだ。守備隊は大慌てだっただろう。
「マジックアイテムで到着することを連絡しておいたでしょ?」
「連絡をするのならもう少し早めにお願いしたい。到着の数分前に連絡を貰って、こちらは大混乱でしたよ」
急だったた為、兵士まで連絡が行き届かず、エルシーネたちは守備隊にあわや撃たれる直前だったのだ。
「それじゃ、私が悪いみたいじゃない」
「その通り。悪いのはエルシーネだ」
シャスターがペガサスから降りながら間髪入れずに突っ込んだ。
「シャスター・イオ様、お初にお目にかかります。クーゼンを任されておりますダーヴィスです」
ダーヴィス将軍は改まると、エルシーネの時よりもさらに丁重な態度で片膝をつき頭を下げた。
ダーヴィス将軍の年齢は三十ぐらいだろうか。細身の身体の割に筋骨隆々であるその姿は、同じ筋肉質であってもザン将軍とは対照的な感じだった。
ザン将軍が闘牛ならダーヴィス将軍は虎かな、と勝手なイメージを持ったシャスターだった。
「エルシーネがダーヴィス将軍を困らせてしまい、申し訳ない。監督者不届きだった」
「なっ!?」
「いえいえ、シャスター様には責任はございません。それに毎度のことなので慣れております」
エルシーネの反論を遮ってダーヴィス将軍は苦笑しながら頭を横に振った。
「そう言ってもらえると助かるよ。こちらが神聖騎士団のレーゼン副団長だ」
一歩後ろに控えていた長身の女性を紹介した。
「レーゼンです。宜しくお願いします」
「おぉ! 貴女が噂のファルス神教騎士団の副騎士団長殿ですか。武勇伝はこちらまで届いています」
ダーヴィス将軍は普段から物静かであり、あまり感情を表に出さないタイプだ。その将軍が驚いていることに背後に立っている部下たちは驚く。それほどまでにレーゼンの参戦は意外なことなのだろう。
「お恥ずかしい限りです」
レーゼンは恐縮しながら苦笑する。
「そして、俺の守護者の星華」
星華は無言のまま頭を下げた。レーゼンとは違った意味で、ダーヴィス将軍は内心で驚きながら頭を下げた。
「それでは皆様、こちらへ」
四人の簡単な自己紹介を受けた後、ダーヴィス将軍はバルコニーから城の中へと案内した。
「ペガサスでの長旅、お疲れだったでしょう」
「そうよ。二日もかけて空を飛んできたからクタクタよ」
エルシーネがぼやきながら廊下を歩く。ペガサスを休ませる為、途中で何度か休憩をとったが、それ以外はずっと空を飛んでいたのだ。誰もが疲れていた。
「まさか、昨日の今日でクーゼンに到着するとは思っていませんでした」
ダーヴィス将軍は少しだけ驚いた表情を見せた。
途中で馬を変えながら急いでクーゼンに向かっても到着するのには一週間はかかるだろうと、思っていたのだ。
それがペガサスを使って飛んでくるとは。そこまで緊急を要することなのかと、ダーヴィス将軍としては意外だったのだ。
「まぁ……、色々と事情があってね」
歯切れが悪いエルシーネだったが、そのことについてそれ以上ダーヴィス将軍は尋ねようとはしない。
「それでも、到着する二、三時間前に連絡頂ければ、もっと料理人が腕を奮った料理を用意できたのですが」
ダーヴィス将軍が扉を開けると、そこにはテーブルに置ききれない程の料理が並んでいた。ダーヴィス将軍は謙遜していたが、十分に素晴らしい料理だ。
騎乗中は携帯食しか食べられなかった為、エルシーネたちはダーヴィス将軍に感謝しつつ食べ始めた。
「もうお腹いっぱい。ダーヴィス将軍、ありがとう」
「お口に合ったようで良かったです。さて、今夜はもう遅いのでゆっくり休んで、詳細な話は明日にしましょう」
ダーヴィス将軍の提案に皆同意し、そのまま用意された部屋で休んだ。
♦♢♦♢ エースライン帝国中央〜北部周辺MAP ♦♢♦♢
皆さま、いつも「五芒星の後継者」を読んで頂き、ありがとうございます!
前回に続き、今回はエースライン帝国北部周辺のMAPを載せました。
まだ、ほとんど登場していない地域ばかりですが、これからシャスターたちが向かう冥々の大地も少しですが載っています。
素人の拙いマップですが、少しでもイメージして貰えたら嬉しいです。
それでは、これからも「五芒星の後継者」をよろしくお願いします!




