第三十一話 羽ばたく空 &(帝国中央〜南部周辺MAP)
「おぉー、気持ち良いものだね!」
シャスターが遥か下に広がる大地を見ながら声を上げた。地上では見渡せないほど広大な帝都エースヒルもすでに後方に小さく映るのみだ。
「あまりはしゃぐと落ちるわよ」
並行してペガサスで飛んでいるエルシーネが注意したが、素直に聞くようなシャスターではない。
「星華、もう少しスピードを上げることはできる?」
「はい」
星華が手綱を動かすと、ペガサスの空を駆ける速度が上がる。それを見て、エルシーネは心の中でもため息を吐いた。星華のペガサスの扱い方はもはや上級者レベルだ。
初心者なのに上級者とは……エルシーネの自尊心を傷付けるのには十分過ぎるほどだった。
「レーゼン、私たちも速度を上げるわよ! しっかり掴まってね」
「はい」
エルシーネのペガサスは一気に星華たちを抜き去り駆け抜けて行った。
「おお、いいね。星華、エルシーネと勝負だ!」
星華のペガサスもさらに速度を上げて、エルシーネに追いつこうとする。
ペガサスの飛行速度は速い。ほんの数時間の内にいくつもの町や村、都市を通り越していった。
ただし、ペガサスもずっと飛び続けているわけにはいかない。体力を回復するための時間が必要だ。何度か休息を取りながら、一行は大陸街道の遥か上空を北東に向かって進んでいた。
帝都エースヒルを中心に東西南北に向けて延びる大陸街道はキレイに整備されており、馬の負担も少なく移動することができる。しかし、それでも北東部の国境都市クーゼンまでは十日はかかるであろう。
しかし、シャスターたちは帝都を出発した翌日の深夜にクーゼンに到着した。
「ふぅー、やっと着いた」
エルシーネは大きく背伸びをする。彼女としてもここまで強行軍は久しぶりだった。
「ありがとうね」
愛馬の首を優しく撫でながら、エルシーネはゆっくりと降下していく。
「疲れた……」
シャスターも大きなあくびをした。
最初の頃はペガサスでの勝負を楽しんでいたシャスターだったが、さすがに長い時間空を飛んでいると疲れてくる。後半は一言も喋ることなく、ずっと星華の背中に掴まったままだった。
「ここがクーゼンか」
国境都市クーゼンはエースライン帝国の北東地域防衛の要の都市だ。国境付近にあるため、堅固な防壁で囲まれている要塞都市となっている。
都市の規模は、ザン将軍が守る南東の国境都市シャイドラと同程度だろう。ただ一つだけ違うのは、クーゼンには都市に大きな城が隣接していた。高い崖に張り付くように造られていて、まるで崖と一体化しているような城塞だ。
そのクーゼン城の中階にある広大なバルコニーに、四人を乗せた二頭のペガサスは舞い降りた。
♦♢♦♢ エースライン帝国中央〜南部周辺MAP ♦♢♦♢
皆さま、いつも「五芒星の後継者」を読んで頂き、ありがとうございます!
さて、今回エースライン帝国南部周辺のMAPを載せました。
今までお話に出てきたレーシング王国や死者の森、アイヤール王国などと帝国との地理が分かって貰えたらと思います。
また、帝国内には三人の将軍と三匹の魔物の王との戦い場所も記載しました。
帝国の領土が大きいので、今回は南部のMAPです。次回は帝国北部のMAPを載せる予定です。
毎回、EXCELの素人の拙いマップで申し訳ありませんが、少しでもイメージして貰えたら嬉しいです。
それでは、これからも「五芒星の後継者」をよろしくお願いします!




