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第二十六話 北からの凶報

「それは本当か?」


 エースライン帝国、皇子であり宰相を務めているエーレヴィンは自身の執務室で驚きの声を上げていた。

 目の前のマジックアイテムには、ひとりの人物が映っている。エースライン帝国の北部を守護している十輝将のひとり、イルザーク将軍だ。


 イルザーク将軍は朝の会議も現地から魔法の投影マジック・プロジェクションを通じて参加していた。

 そのイルザーク将軍から、エーレヴィンは緊急連絡を受けていた。



「はい、事実です」


 実直に答えるイルザーク将軍を見て、エーレヴィンは冷静に戻った。


「いや悪かった。考えてみれば、イルザーク将軍が見誤るはずもない。一瞬でも疑った私を許して欲しい」


 エーレヴィンが頭を下げる。いつも沈着冷静なエーレヴィンがここまで慌てている光景は珍しい。

 自分の報告はそれだけ重大なのだと、イルザーク将軍は改めて実感した。


「どう致しましょうか?」


「どうすることもできないな……」


 エーレヴィンは諦めた表情で顔を曇らせた。冥々の大地での吸血鬼(ヴァンパイア)調査よりもこちらの方が、より大きな問題かもしれないからだ。


 新たなる危機が訪れようとしていた。



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